
ハイエンド人材の紹介事業と、フリーランスコンサルタントのスキルシェア事業を両輪で展開するアクシスコンサルティング株式会社。同社の強みは、常に市場の変化を捉えるマーケットインの発想にある。企業の課題に対し、人を採用するのか、外部の知見を活用したプロジェクトを組成するのか、その根本から問い直し、最適な解決策を提示する。HR企業の枠を超え、企業の成長に伴走する独自のビジネスモデルはどのように生まれたのか。代表取締役社長COOの伊藤文隆氏に、そのキャリアの原点から事業の展望まで話を聞いた。
事業再生の経験から確信した人の重要性
ーーキャリアの原点と、人材紹介業界へ転身された経緯について教えてください。
伊藤文隆:
新卒で入社した楽器メーカーでは、部門の責任者として製品開発からマーケティング、収益改善までを経験させていただきました。50年続く会社で組織を再構築する中で痛感したのは、戦略を形にする「人」の重要性です。どれほど優れたプランを描いても、現場を動かす人の意識が変わらなければ、事業は本質的な改善は望めません。この経験が、事業価値を高める鍵は「人」にあるという、私の確信を揺るぎないものにしました。
そして、次なるステージとして考えたのは、成熟市場ではなく、ダイナミズムのある成長産業での挑戦でした。事業の成否を分けるのは「人」であるという確信から、その核心に携われる人材業界にフォーカスし、ベンチャー企業で人材紹介事業の立ち上げに参画しました。当時は、日本の人材紹介市場が米国に比べてまだ小さく、今後2倍、3倍へと拡大する確信がありました。
立ち上げメンバーは私以外全員が人材業界出身という環境でしたが、未経験ながら無我夢中で取り組む中で、2年目には成果を出せるようになりました。この「自ら事業を立ち上げ、形にする」という泥臭い経験が、私のキャリアを支える大きな糧となっています。
ーーどのような経緯で貴社に入社されたのですか。
伊藤文隆:
前職の会社ではコンサルティング業界に特化した人材紹介事業の立ち上げをしていたので、当社のことは知っておりました。
当時、多くの人材紹介会社が「自分たちが紹介しやすい人材」を優先するプロダクトアウト型のビジネスを行う中、弊社は「マーケット(市場)が何を求めているか」を主軸に置くマーケットインの考え方を徹底していました。その姿勢に強い可能性を感じたことが、入社を決めた大きな理由です。
入社当時は創業6年目、社員数も30名に満たない規模でしたが、組織としての基盤が整っており、プロとして業務に専念できる環境がありました。事業立ち上げという混沌とした現場を経験してきた私にとって、弊社が掲げる理念や合理的な体制は非常に魅力的に映り、「この場所であれば、さらに高い次元でマーケットに貢献できる」と確信したのです。
逆境から生まれた独自の課題解決モデル

ーー貴社の事業の根幹にある考え方について教えていただけますか。
伊藤文隆:
常にマーケットを主語にして考えるマーケットインの発想を徹底しています。私たちは「市場がどう変化し、何を求めているのか」を起点に、提供すべきサービスの形を柔軟に構築してきました。
この考えをより強固にしたのは、2008年のリーマン・ショックや2011年の東日本大震災など、未曾有の危機を乗り越えてきた経験です。当時は採用が止まり、人材業界全体が極めて厳しい状況に置かれました。
しかし、そのような逆境下だったからこそ、一件一件の契約や商談の重みを痛感し、商談一つを設定するために必要な準備や提案の精度を極限まで高めてきました。ただ漫然と業務をこなすのではなく、市場のニーズを誰よりも敏感に捉え、確実に成果へとつなげるための徹底した実戦力を養ったのです。この「市場に対して何ができるか」を問い続け、地道に積み上げてきた経験こそが、弊社の事業の礎となっています。
ーー貴社サービスは顧客にどのような価値をもたらすのでしょうか。
伊藤文隆:
弊社では、人材紹介事業とスキルシェア事業を展開していますが、これらを組み合わせて提供できることが強みです。特に新規事業を立ち上げる際に大きな価値を発揮します。
通常、新規事業を立ち上げる際は、顧客の有無にかかわらず一定数の正社員を採用しなければならず、1年ほどは赤字が続くのが一般的です。しかし弊社のモデルでは、まず事業の核となるマネジメントクラスのキーパーソンを正社員としてご紹介します。そのリーダーが顧客を獲得したタイミングで、必要に応じて私たちがフリーランス人材を紹介し、即座に事業を動かすことが可能です。
つまり、「顧客獲得」と「実務メンバーの確保」を同時に行うため、稼働していない人員のコストを抱える必要がありません。その間にじっくりと次なる正社員の採用を進めていく。この仕組みであれば、経営リスクを最小限に留めつつ準備期間の赤字を最小化し、迅速に事業を軌道に乗せられます。
ーー自社でコンサルタントチームを持つ狙いは何ですか。
伊藤文隆:
弊社はHC(ヒューマンキャピタル)企業でありながら、コンサルティング会社としての機能も強めています。お客様から事業課題についてご相談いただいた際に、私たちは「人を採用すべきか、プロジェクトで解決すべきか」という根本的な問いから入ります。時には、そもそも何が本当の課題なのか、という議論から始めることも少なくありません。
一般的なコンサルティング会社との一番の違いは、プロジェクトの内製化・定着化まで伴走できる点です。たとえば、私たちが実行したDXプロジェクトなどを、お客様が自社で運用できるよう、その責任者となる人材の採用まで支援します。この「つくって終わり」にしない支援体制こそが、弊社の大きな特長です。
労働人口減少時代に求められる人材の共創
ーー変化する労働市場をどのように捉え、どのような事業機会を見出されていますか。
伊藤文隆:
これからの日本は、労働人口が減少し、労働者の平均年齢が急激に上がっていきます。特に企業が事業リーダーとして求める40代前後の人口は、私たちの世代の7割程度まで減少します。
優秀な人材が枯渇していく中で、一社の正社員として抱え込む旧来のモデルだけでは、産業の維持すら難しくなるでしょう。今後は、限られたプロフェッショナル人材を複数の企業でシェアリングしていく流れが加速するのは必然です。人事が「採用」だけでなく、「必要なスキルを持つプロ人材を必要なタイミングのみ活用する」という機能を持つことが当たり前の時代になるでしょう。
一方で、個人の側も、優秀な層ほど特定の組織に縛られないフリーランスという働き方を選び始めています。この「人が足りない企業」と「独立を選ぶプロ人材」をつなぎ、最適な連携を支援する仕組みをつくることは、社会的な意義が大きく、私たちにとって非常に大きなビジネスチャンスであると確信しています。
産業の発展に貢献する一貫した支援体制の確立
ーー今後、会社として特に注力していくテーマは何でしょうか。
伊藤文隆:
まずは組織の拡大です。スキルシェア領域やコンサルティング領域のニーズは非常に高く、それに応えるためにも採用の強化は不可欠です。また、これまではコンサル業界向けのサービスが中心でしたが、今後は事業会社様向けのサービスも広げていきたいと考えており、そのためのマーケティングやブランディングにも力を入れていきます。もちろん、社内のDX推進や生成AIの活用といったテーマにも、経営者としてしっかり向き合っていくつもりです。
ーー貴社ではどのような人材が活躍できるとお考えですか。
伊藤文隆:
2つあります。一つは目の前の課題を最後までやり遂げる責任感が強い人です。私たちの仕事は、企業の経営層といったエグゼクティブと対峙する機会が非常に多く、皆さん、一つのことに対して真摯に向き合い、成果を出し続けてきたからこそ、現在のポジションにいます。自らの役割に対する責任感が希薄であれば、エグゼクティブの方と対等に話すことはできません。
もう一つは、ビジネスが好きな人です。私たちのビジネスは経済の動きと密接に連動しています。世の中の動きを見て、それがビジネスにどう影響し、どんな人材やプロジェクトが必要になるかを考えられる人は、この仕事を楽しめるはずです。
ーー最後に、事業を通じて実現したい今後の展望をお聞かせください。
伊藤文隆:
私たちが目指しているのは、単に人を紹介することではありません。この国の産業がこれからどう変わっていくのかという大きな視点を持ち、その変化に貢献していくことです。やり方を工夫すれば、日本は労働人口が減っても、強い産業を維持、発展させられるはずです。そのためには、優れた知見を持つハイエンド人材が、適切な場所でその能力を最大限に発揮できる仕組みが欠かせません。その最適な配置を実現するプラットフォームとなることで、日本の産業を強くしていく。それが私たちの目指す未来です。
編集後記
常に市場を主語に置く姿勢は、個別の課題解決に留まらず社会全体の持続可能性に向けられている。労働人口の減少という厳しい現実に抗うのではなく、仕組みを工夫することで強い産業を維持する。提案された解決策は、企業と個人の双方に新たな可能性を示す。変化の激しい時代を勝ち抜く鍵は、時流を捉えて自らを適応させる柔軟な意志にある。最適配置を実現する基盤こそが、これからの経済を支える大きな柱となるに違いない。

伊藤文隆/1972年生まれ。パール楽器製造株式会社で事業責任者を経験後、株式会社ワークス・サポート(現:HRソリューションズ株式会社)にてコンサルティング業界に特化した人材紹介事業の設立に参画。2008年アクシスコンサルティング入社。人材紹介事業のマネジメント業務、フリーコンサル(現:スキルシェア)事業の立ち上げの他、アクシスグループの事業戦略立案・実行を牽引。事業部長、執行役員を経て2017年取締役就任、2021年常務取締役就任。2023年⼀般社団法⼈シェアリングエコノミー協会幹事就任。2024年9月代表取締役社長 COO就任。2026年株式会社サン・システムプランニング代表取締役就任。