
人材派遣事業を軸に、BPO(※1)やHRテック(※2)など多角的に事業を展開する株式会社サウンズグッド。同社は今、2024年に就任した代表取締役社長の森川竜平氏の指揮下で、「第二創業期」とも呼ぶべき抜本的な組織改革の只中にある。「労働集約型の派遣ビジネスは淘汰される」。そう断言し、AI時代における新たな人材会社のあり方を模索する森川氏。改革の原点にある就職氷河期時代の理不尽な体験、そして教育を通じて社員の価値を高めるビジョンに迫った。
(※1)BPO:Business Process Outsourcingの略。業務委託。自社の業務プロセスを継続的に外部の専門的な企業へ委託すること。
(※2)HRテック:HR Tech。ITを活用して採用・評価などの人事関連業務を効率化・高度化する仕組み。
就職氷河期世代としての憤りと「働くこと」への原体験
ーー森川社長のキャリアの原点についてお聞かせください。
森川竜平:
私はいわゆる「就職氷河期世代」です。周囲の優秀な友人たちが、50社、100社と受けても内定を得られない。生まれた時代が数年違うだけで、これほどまでに苦労を強いられるのか。その理不尽さに憤りを覚えました。「働くこと」に困難を抱える人々を支援したい。そう決意し、働き方の多様性が叫ばれ始めた2000年頃、人材ビジネスの世界へ飛び込みました。
その後、2009年の創業に参画し取締役を務め、2024年5月に代表取締役に就任し、新たなフェーズへと舵を切りました。
日雇い市場の激変と高付加価値モデルへの転換

ーー改めて、貴社の現在の事業内容について教えてください。
森川竜平:
弊社は人材派遣事業を主軸としながら、官公庁や自治体に特化したBPO事業、グローバル人材の活用支援、そして製造・物流分野におけるリ・スキリング(※3)など、多角的なHRソリューションを展開しています。現在は、従来のビジネスモデルをさらに深化させ、新たな価値を創造する「第二創業期」の真っ只中にあります。
(※3)リ・スキリング(Reskilling):技術革新に対応するために、新しい知識やスキルを習得すること。
ーー「第二創業期」を掲げられた背景には、どのような市場環境の変化があるのでしょうか。
森川竜平:
これまでの派遣業界は、極端に言えば「労働集約型」のモデルでした。しかし昨今、日雇い・単発雇用の領域ではスキマバイトアプリが台頭し、マッチングの効率化が劇的に進んでいます。AIの精度も向上する中、単に「人を右から左へ紹介するだけ」のビジネスモデルでは、もはや他社との差別化は不可能であり、未来はありません。単純作業は遠からずテクノロジーに代替されていくでしょう。
ーーそうした危機感に対し、どのような差別化戦略を打ち出されているのですか。
森川竜平:
私たちが目指すのは、教育を介在させた「高付加価値モデル」への転換です。
具体的には、東京や千葉などの拠点に「リ・スキリングセンター」を開設し、キッティングや組み立ての専門スキルを未経験から習得できる体制を整えています。自ら人を育て、専門性を高めてから現場へ送り出す。この育成力こそが、既存のアプリや他社には真似できない私たちの最大の強みです。
私たちは弊社を、単なる派遣会社から「人を育てる場所」へと進化させたいのです。たとえば、就職に苦戦し早期離職してしまう若者を一度弊社で受け入れ、ビジネススキルや専門教育を授けてから自信を持って現場へ送り出す。この構想を、私たちは「キャリアの学校」というビジョンで表現しています。実際に、若手人材のキャリア育成プロジェクトが2025年よりスタートしました。「若手人材を育てて活かす」というモットーで、単なる採用ではなく「育てながら採用につなげる“育成型”の戦略」を掲げています。
具体的には、まず現場で2年間の実務経験とスキルを積み、その後に内勤への登用や転籍、異業界への転職といった多様なキャリアパスを選択できる仕組みです。地元企業とも連携することで、就業人口が減少する地域の人材流出を防ぎ、地域に根付いたキャリア形成を支援しています。このように個々のキャリア形成に介在する「次世代のエージェント」でありたいと考えています。
常に「Sounds Good」を目指し、新たな時代を切り拓く
ーー最後に、今後の展望をお聞かせください。
森川竜平:
現状維持に留まらず、常に「Sounds Good(それいいね)」を目指す組織でありたいですね。今後、変化のスピードはさらに加速します。法改正や市場の変化を恐れず、むしろその波を楽しめる方と一緒に働きたい。固定観念に囚われず、新しい価値観を面白がれる人材こそが、次の時代を切り拓くと確信しています。利益を出し、社員に還元し、地域や社会に愛される。そんな好循環を生み出す強靭な組織を次世代へ引き継ぐことが、私たちの使命です。
編集後記
「働くことは生きること」。就職氷河期の理不尽な壁にぶつかり、苦境に立つ人々を見つめてきた森川氏の言葉には、表面的なビジネス論を超えた哲学的な重みがあった。「教育による市場価値の向上」という明確な指針を掲げ、泥臭くも確実に組織を変革しようとする姿勢は、まさに「第二創業」の気概に満ちている。人を育て、守り、送り出す。サウンズグッドが目指す「キャリアの学校」としての未来は、日本の労働市場に新たな希望の光を灯すに違いない。

森川竜平/1978年千葉県生まれ。大手人材派遣会社で統括部長、役員を経て2009年に株式会社サウンズグッドの創業に参画。2024年に同社代表取締役社長就任。現在は、日本BPO協会の正会員として業界の発展に貢献するとともに、若年層のキャリア支援にも積極的に取り組んでいる。