
ごみを遠くの焼却炉まで運んで、燃やして、埋める。そんな従来の廃棄物処理のあり方が今、限界を迎えつつある。株式会社JOYCLEは、ごみをその場で資源化する小型装置「JOYCLE BOX」を中心とした分散型インフラの構築に挑むスタートアップだ。彼らが目指すのは、単なるハードウェアの製造販売ではなく、データを活用したプラットフォームの構築である。なぜ、大企業でのキャリアを捨てて、起業の道を選んだのか。そして、ごみ処理の領域でどのような未来を描いているのか。代表取締役の小柳裕太郎氏に、その原動力と今後の展望をうかがった。
社内評価ではなく市場の評価で勝負したい
ーーまずは、これまでのご経歴を教えてください。
小柳裕太郎:
新卒では総合商社の双日株式会社に入社し、その後は人材系コンサルティングの株式会社サーキュレーション、そして株式会社電通へと転職しました。電通では、広告以外の新規事業立ち上げを担う部署に所属し、水処理装置のオペレーションビジネスや、環境エネルギー系スタートアップへの投資チームの立ち上げなどに携わりました。
その後、環境エネルギー分野での起業を前提に人材を募集していたU3イノベーションズ合同会社に4人目のメンバーとして参画したことが、現在の事業へとつながっています。
ーーそこから、なぜご自身で起業しようと考えたのでしょうか。
小柳裕太郎:
U3イノベーションズで環境エネルギーイノベーションコミュニティの立ち上げを行うなかで、自治体の方々から廃棄物に関する課題を直接お聞きする機会がありました。ドライバーが不足しているのに遠くまでごみを運ばなければならない現状や、業界全体がアナログでデータが可視化されていないといった実態が見えてきたのです。
もともと「インパクトのあることを自分で新しくつくりたい」という思いはありましたが、大企業の組織の中では、どうしても事業を生み出す前の社内評価が偏重されてしまって場合によってはチャレンジがしにくい場面があります。それよりも、自分たちが生み出したものが、市場からどう評価されるかで勝負できる環境のほうが私には向いていると感じました。自由度が高く、フェアな実力主義の中でやりたいことを実現するために、自らスタートアップを立ち上げる道を選んだのです。
ただのメーカーではない「データの可視化」でつくる新たなインフラ

ーー貴社の事業内容と、その強みについて教えてください。
小柳裕太郎:
弊社は、ごみを運ばず・燃やさず、その場で資源化できる分散型インフラを提供しています。具体的な手段の一つが「JOYCLE BOX」という小型のインフラ装置です。これを活用することで、ごみを電気で資源化し、今後再生可能エネルギーが活用できればカーボンフリーでの稼働が可能になります。
しかし、弊社の最大の強みであり目指している姿は、単に装置を売り切る「メーカー」としての起業ではなく、「プラットフォーマー」であるという点です。装置にはセンサーが搭載されており、処理状況などのデータをリアルタイムで可視化できます。これにより、遠隔での制御やメンテナンスのリマインドなどをセットにした、月額制のインフラサービスとして提供しています。
ーーどのような場所での導入を想定されているのですか。
小柳裕太郎:
まずは、ごみの運搬コストが高く、ドライバー不足に深刻に悩まされている病院や、地方、離島などから展開を進めています。北海道や沖縄、奄美大島などがまさにターゲットです。ごみの出元で処理をすれば、運ぶ頻度が大幅に減り、人件費も抑えられます。既存の産廃業者とも競合するのではなく、むしろ協業パートナーとして一緒に新たなインフラをつくっていくモデルを描いています。
グローバル展開とデータネットワークが描く未来
ーー今後の展望についてお話いただけますか。
小柳裕太郎:
将来的には、全国・全世界のJOYCLE BOXがネットワークでつながり、どこでどんな資源が生み出されているかが可視化され、資源循環やカーボンクレジットの価値創出を最大化できるデータネットワークを構築したいと考えています。さらにその先には、「JOYCLE SHARE」という構想があります。ごみが一定量貯まったことをセンシングし、一番近くにある「JOYCLE BOX」をマッチングさせて自動で向かい、その場で処理して次の場所へ移動する。そんなごみ収集車に代わるインフラを数年後には実現させたいです。
また、ごみ処理に関する課題は日本だけのものではありません。最終的には、世界中のさまざまな場所にこの分散型インフラを広げていきたいです。すでにドバイやインド、東南アジアの企業とも話が進んでおり、世界中で当たり前のように使われるインフラへと成長させていくことを目指しています。
ーー現在求めている人材について教えてください。
小柳裕太郎:
私たちが社内のコアバリューとして大切にしているのが、「GNO(義理・人情・恩)」「スピード」「挑戦」の3つです。これまでの事業も、さまざまな運とご縁、そして周りの方々の支えがあってこそ成り立ってきました。スタートアップとして早くPDCAを回すスピード感と、ネガティブにならずに挑戦し続ける姿勢を重視しています。現在は業務委託のメンバーが多いですが、事業拡大に向けて採用を強化しています。
特に、スタートアップでの大規模な資金調達やM&Aを牽引した経験を持つCFO候補、そして新しいことにチャレンジしたいハードウェアのエンジニアやプロジェクトマネージャー(PM)を募集しています。自分のやりたいことと、私たちが目指す「資源と喜びが循環する社会を創造する」というビジョンが合致する、能動的な方とぜひ一緒に働きたいですね。
編集後記
「ただのメーカーではなく、プラットフォーマーを目指す」。小柳氏の言葉には、廃棄物処理という歴史あるアナログな業界を、デジタルとアイデアの力で根本からアップデートしようという強い覚悟が滲んでいた。社内評価に甘んじることなく、市場からの厳しい評価を求めて起業に踏み切った合理性と情熱は、まさに新時代の起業家そのものだ。日本発の「JOYCLE BOX」が世界中の街角で当たり前のように稼働し、ごみ問題という地球規模の課題を解決する日は、そう遠くないかもしれない。

小柳裕太郎/「死後100年後の社会を変えるビジネスを創る」という信念のもと、サーキュラーエコノミーの実現を牽引。双日株式会社にて化学品貿易営業やパプアニューギニア駐在を経験後、電通、U3イノベーションズなど複数企業で新規事業開発やアクセラレーションプログラム運営に携わる。日本からグローバルに通用するビジネスの構築を目指し環境分野での起業を決意し2023年3月、株式会社JOYCLEを設立。ごみを運ばず、燃やさず、資源化する、JOYCLE BOXによる新しい分散型インフラの構築を通じて、「資源と喜び(JOY)が循環(CYCLE)する社会」の実現を目指す。経済産業省カーボンニュートラル分科会若手有識者も務めるなど、環境エネルギー分野の未来を担うリーダーとして幅広く活動。