
アポイントを取らずに工業団地を端から端まで回り、圧倒的な行動量で企業のニーズを把握してきた横山康人氏。取引先社長からの「お前がやったら面白そうだ」という期待と出資を機に株式会社ハーツネクストを立ち上げた。業界の悪しき慣習を否定し、人格を尊重した温もりのある人材派遣を貫く。組織の崩壊危機を乗り越え、現在は自社のノウハウを活かしたDX支援や人事体制構築のアドバイスなど新たな領域へも挑戦している。スピード感ある幹部登用で次世代リーダーを育成する横山氏にこれまでの軌跡と未来への展望をうかがった。
1日100件の飛び込み営業から「面白そう」で始まった独立
ーーまずは、人材派遣業界に入られた当時のご経験から教えてください。
横山康人:
入社した派遣会社では、とにかく圧倒的な行動量を求められました。工業団地の真ん中に車を止め、アポイントなしで端から端まで、1日に100件ほどの飛び込み営業をしていたんです。今思えば非効率の極みのようなやり方ですが、地域の企業と直接触れ合う中で、「どのような人材が必要とされているか」「どんな社風の会社なのか」といった企業の生のニーズを、まさに肌感覚で習得することができました。
ーーそこから独立に至った経緯はどのようなものだったのでしょうか。
横山康人:
取引先だった社長から、出会って2回目くらいで突然「自分で会社をやってみないか」と提案されたのがきっかけです。最初は戸惑いもありましたが、「俺はいつでも金を出す。だから、まずは俺という人間を見てくれ」と言われ、月に数回お茶をするようになりました。
そうして数ヶ月にわたって対話を重ね、お互いの信頼を深めていく中で、「この人は私を利用して儲けたいわけではなく、純粋なビジネスの利害を超えて『お前がやったら面白そうだ』と期待してくれているんだ」と確信し、出資を受ける形で独立を決意しました。この思いが創業の原動力となっています。
組織の瓦解と再生 そして「人を物として扱わない」温もりのある派遣へ

ーー独立されてから、これまでの経営の中で特に壁にぶつかった経験や、苦労されたことはありましたか。
横山康人:
実は、18期目頃に非常に大きな危機を経験しました。主要な営業パーソンや数十名のスタッフが一気に引き抜かれ、組織として大きなダメージを受ける時期があったんです。一生懸命一緒に仕事をしてきた仲間だと思っていたので、私自身のショックも大きく、残された社員も含めて半年ほどは深い落ち込みの中にありました。
しかし、ちょうどその苦境の時期に入社した新メンバーたちが、自ら「改革の旗手」となって組織を牽引してくれました。その結果、以前を上回るパフォーマンスを発揮できる体制を再構築することに成功。「必要なときに必要な人が現れる」という言葉を地で行くような巡り合わせに感謝しつつ、無事に変革期を乗り越えることができました。
ーー貴社の人材サービスにおける強みやこだわりは何ですか。
横山康人:
私がかつて一番嫌だったのが、当時の業界に蔓延していたスタッフを物のように扱う風潮です。制服をポンと投げ渡すような対応や、名前ではなく「派遣さん」と呼ぶような扱いは、絶対にしたくありませんでした。だからこそ、スタッフ一人ひとりにしっかりと寄り添い、人格を尊重した人道的なサポートを徹底しています。
また、弊社のメインフィールドである兵庫県の阪神地区から播磨地区の沿岸部には工場群が広がっており、特に製造業への人材支援に強みを持っています。単なるスキルマッチングにとどまらず、その企業の社内風土にしっかりと合う人材を提案することを何よりも重視しています。
自社のDXノウハウを地域へ 未来のリーダーと共に描く展望
ーー今後の新たな挑戦について教えてください。
横山康人:
現在、自社内でペーパーレス化や業務改善などのDXを強力に推進しています。人材派遣業は書類が非常に多いのですが、データを一元化し無駄な入力作業を省くことで、営業パーソンが本来の活動に専念できる環境を整えました。今後は、人材派遣の枠を超え、私たちが悪戦苦闘しながら培ったこのペーパーレス化や業務改善のノウハウを、地域の顧客企業へも展開していきたいと考えています。企業のデジタル化や人事体制構築のアドバイスを行うパートナーとして、地域の中で支持される企業になっていきたいという強い思いがあります。
ーー最後に、今後どのような人材を求めているかメッセージをお願いします。
横山康人:
私の経営の根幹には、「仕事は楽しくあるべき」という信念があります。前年比10%〜20%増の着実な成長を続けながら、社員自身が「未来はもっとよくなる」という希望を持てる環境を維持していきたいと考えています。そのため、会社を一緒に盛り上げてくれる未来のリーダー候補を求めているのです。
弊社では、「能力がある人なら、入社1年後でも幹部になってほしい」というスピード感のある登用を実施していく方針です。実際に、昨年5月に入社したメンバーがすでに幹部クラスとして活躍しており、実力次第で即座に頭角を現せる風通しのよさも弊社の特徴です。自ら課題を見つけて楽しめる方に、ぜひ来ていただきたいですね。
編集後記
人材派遣業界における悪しき慣習に異を唱え、個人の尊厳を大切にした温もりあるサポートを貫く横山氏の姿勢が非常に印象的だった。「お前がやったら面白そうだ」という出資者の純粋な期待から始まった同社は、組織崩壊という大きな試練を乗り越え、新メンバーを迎えてより強固な体制へと進化を遂げた。「仕事は楽しくあるべき」という信念のもと、社員が「未来はもっとよくなる」と希望を持てる環境づくりに注力する姿勢は、次世代のリーダーたちを強く惹きつけるだろう。ペーパーレス化や業務改善のノウハウを地域の顧客企業へ展開し、デジタル化や人事体制構築のアドバイスを行うパートナーとして歩み続ける同社の未来がどのように広がっていくのか、今後の飛躍が楽しみだ。

横山康人/1966年兵庫県生まれ。兵庫県立姫路工業大学卒業。30代前半に人材派遣会社で2年間営業を担当。その後、取引先の社長にスポンサーをしてもらい、人材派遣会社として起業、7年後自己資本にて独立。現在に至る。