
セイノーグループの人材会社へ2004年に入社し、現場の営業から叩き上げで2023年に社長へ就任した、株式会社セイノースタッフサービスの岩村彰憲氏。同社はグループ内への人材供給にとどまらず、売上の8割をグループ外(外販)が占めるという、資本系企業として異例の成長を遂げている。物流特化の強みとワンストップの組織体制を武器とし、2024年解禁の「外国人特定技能ドライバー」へのいち早い対応など、次々と新たな一手を打つ岩村氏に、同社の強みと未来への展望をうかがった。
異例の外販比率8割 法改正の危機を機に加速した現場での戦い
ーーまずは、貴社へ入社された経緯から教えていただけますでしょうか。
岩村彰憲:
大学卒業後に、スカウトメールを受け取ったのが端緒です。当時は人材業界や物流業界への深い理解はありませんでしたが、面接で当時の社長から「もし君が自衛隊員で、戦場へ行けと言われたら行くか」と問われ、「仕事であれば行きます」と即答したことが採用の決め手となったのではないかと思っています。そして2004年、セイノーグループの人材会社である弊社に入社しました。入社後は営業として物流現場を回り、現場で学びながら経験を積んできました。
ーー貴社が売上高の8割をグループ外(外販)で占めるまでに至った経緯と、現在の事業展開についてお聞かせください。
岩村彰憲:
一般的な資本系人材会社は、親会社やグループ会社への人材供給が中心となり、売上の大半を内部に依存する傾向にあります。しかし、弊社はその逆です。転機となったのは、2012年の派遣法改正に伴う「専ら派遣の禁止」でした。特定グループ会社への派遣が制限され、西濃運輸への派遣に頼っていた売上は一時的に激減しました。
ただ、それ以前から「グループ外のお客様へ価値を提供する。」という方針のもと、地道な外販新規開拓を続けてきた素地が弊社にはありました。この危機を契機として、外販へのシフトを一気に加速させました。現在は、人材派遣、倉庫の業務請負(3PL(※1))、人材紹介、そして西濃運輸の採用代行(RPO)という4つの柱で事業を展開しています。
(※1)3PL:サードパーティー・ロジスティクスの略。荷主企業に対し、物流戦略の立案から倉庫運営等の実務までを一括して受託する物流サービスのこと。
物流特化の強みとワンストップ組織体制 現場を知り尽くしたプロフェッショナル集団
ーー貴社がお客様から選ばれる理由、強みはどこにあるのでしょうか。
岩村彰憲:
最大の強みは、西濃運輸という実践的な「教科書」が存在することです。弊社の営業担当は、たとえばフォークリフト一つをとっても、動力がバッテリーかエンジンか、座乗式のカウンターか立乗式のリーチかといった専門知識を深く理解しています。現場を知り尽くしたプロフェッショナル集団だからこそ、顧客の現場のどの工程でどのような人材が必要かを的確に把握し、応募者へも詳細な業務内容を提示できるのです。
また、人材業界では営業とコーディネーターの分業制が主流ですが、弊社はあえてワンストップの組織体制をとっています。顧客からの要望を直接ヒアリングした営業本人が、人材の募集から面接、マッチングまでを一貫して担当。これにより現場と求職者の認識の齟齬を防ぎ、精度の高いマッチングを実現しています。単なる資本系人材派遣会社の枠を越え、企業の物流課題を根本から解決するパートナーとしての立ち位置を確立しつつあります。
10年前からの準備が結実 外国人特定技能ドライバーの本格稼働へ

ーー今後、特に注力されていく事業についてお聞かせいただけますでしょうか。
岩村彰憲:
直近の大きな展望として、2024年に解禁された「外国人特定技能ドライバー」の本格稼働と、2027年に控える「倉庫業」での特定技能ビザ解禁への対応が挙げられます。
実は、外国人ドライバーの必要性については2014年〜2015年頃のグループ内研修の段階から構想を練っていました。将来必ず訪れる深刻なドライバー不足を見据え、グループ内で自動車学校をM&A(※2)し、大型免許をグループ内で取得できる体制をいち早く整備。さらに、今回のビザ解禁に合わせ、日本の教習ノウハウを持つベトナムの教習所を運営する企業と連携しました。入国前の現地研修段階から、日本の交通ルールや高度な運転技術を教育する仕組みを構築しています。
10年前から周到に準備を進めてきた自動車学校のM&Aや海外機関との連携が、まさに今、次の成長への起爆剤となろうとしています。国籍を問わず、自己成長と他者貢献を志す人材を採用し、日本の物流インフラを支え抜く覚悟です。
(※2)M&A:Mergers and Acquisitionsの略。企業の合併・買収のこと。
「PDCBA(※3)」の思考でエッセンシャルワーカーの社会的価値を向上
ーー最後に、貴社が目指す会社像についてどのようにお考えでしょうか。
岩村彰憲:
私は、「物流×人材」という領域で弊社を「物流人材の総合商社」にしたいと考えています。物流の現場で必要とされる人材を、派遣・請負・人材紹介・外国人雇用などあらゆる手段で供給し、日本の物流インフラを支える存在になることが目標です。
そのうえでセイノーグループでは、PDCA(※4)ではなく「PDCBA(B=Because:なぜを繰り返す)」という深い思考プロセスを大切にし、「人と人とのつながりを育む」という経営理念のもと、グループの使命である「価値創造」の精神を持って、お客様の繫栄に貢献しつつ、エッセンシャルワーカーの社会的価値と賃金水準の向上を実現していきたいと考えています。
長年、物流業界で働く方々は、その社会的意義の大きさに対して賃金水準が抑えられがちな傾向にありました。しかし、昨今の「2024年問題」などを契機として、ようやく物流従事者の存在価値に光が当たり始めています。私たちは、現場で汗を流すエッセンシャルワーカーの方々へ適正な利益を還元しなければなりません。より多くの顧客へ確かな価値を提供し、働く人々の人生を豊かにすること。その信念に基づく行動の連続が、結果として自社のさらなる成長へ直結すると確信しています。
(※3)PDCBA:Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Because(原因究明)、Action(改善)の略。セイノーグループ独自の思考プロセスで、「なぜ」を繰り返して本質的な課題を深掘りしてから次のアクションへ進む考え方のこと。
(※4)PDCA:Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の略。業務を継続的に改善するための一般的なマネジメント手法のこと。
編集後記
「ただの資本系ではない」。岩村氏の言葉の端々から、親会社の看板に胡座をかかず、自らの足で稼いできた叩き上げならではの矜持と力強さが滲み出ていた。10年も前から外国人ドライバーの活躍を予見し、自動車学校の買収を提起した先見の明には驚かされる。物流業界の最前線で働く人々の価値を正当に高めようとする同社の挑戦は、日本の社会インフラそのものを強靭にする原動力となるはずだ。

岩村彰憲/1980年奈良県奈良市生まれ。2004年、株式会社セイノー・セキュリティー・サービス(現・株式会社セイノースタッフサービス)入社。2023年、同社取締役社長に就任。セイノーグループの人材会社として、売上の約80%をグループ外企業から獲得するなど、グループに依存しない事業基盤を構築。人材派遣、業務請負、人材紹介、西濃運輸のドライバー採用支援に加え、近年は外国人ドライバー採用にも注力している。