
1939年の創業以来、横浜中華街とともに歩んできた株式会社華正樓。同社は北京料理と上海料理の味付けにこだわった高級中国料理の提供と、200名様規模の大型宴会に対応した事業展開で、独自のポジションを確立。伝統の味と格式を守りながら、時代の変化に柔軟に対応する経営で、神奈川県内の中華レストラン3店舗と神奈川県・東京都で菓子・惣菜販売店10店舗を展開するまでに至っている。
今回は創業85周年を迎え、100周年に向けて新たな挑戦を始めようとしている同社の代表取締役社長、江夏秀明氏に話をうかがった。
時代に応じた柔軟な経営戦略を意識
ーー社長のご経歴を教えてください。
江夏秀明:
幼少期は、両親の方針でインターナショナルスクールに通っていました。恐らく、将来を見据えて、私に国際的な感覚を身につけてほしいという気持ちだったのだと思います。インターナショナルスクールを卒業したあとは、アメリカに留学しました。帰国後は経営や経理について知見を深めるために、銀行に就職。そこで4年間働いてから、1991年に弊社に入社しました。
ーー仕事においてどのような価値観や考え方を大切にしていますか?
江夏秀明:
弊社のような飲食業は、「お客さまに喜んで頂く料理やサービスを提供、しっかりと利益を出す」ということを大切にしています。料理やお店の内装、サービスはもちろんのこと、スタッフとのコミュニケーションにも気を配ってきました。
また、会社の経営に関しては、ブランド価値、料理や食材の質、料理人やサービスの思いを大切にし、いかにして次の世代に残していくかを考えています。
2024年に創業85周年を迎えましたが、次の節目となる100周年に向けて、これまでの伝統を継承していきたいです。もちろん、時代の流れとともに横浜中華街そのものが変わっていますし、新型コロナウイルス感染症の影響による変化もありました。そうした時流の変化を見極めつつ、変わらない部分も大切にして、将来を見据えた柔軟な経営をするように意識しています。
高級感と伝統を守りつつ、時代に合った味とサービスを届けるブランディングで事業を展開

ーー貴社の事業内容について教えてください。
江夏秀明:
神奈川県内で中華レストランを運営しているほか、神奈川県と東京都に中華菓⼦・饅頭・惣菜類の販売店を出店しています。1939年の創業以来、弊社の事業は、本店がある横浜中華街とともに発展を遂げてきました。上海料理と北京料理の味付けにこだわった高級中国料理を提供しています。
ーー貴社の強みや特徴はどのようなところですか?
江夏秀明:
レストラン事業においては、中国料理専門店ならではのこだわりの味わいを、選りすぐりの料理人により調理される厳選食材をアラカルトからコース料理でお召し上がりいただけます。また、ホテルの宴会とは異なり、専門店で200名様規模までの宴会ができるところは、横浜中華街には数少ないと思います。そのため、これからも、時代に合わせながらも、宴会のかたちを守り続けていきたいと考えています。
ーーブランディングでこだわっている部分はありますか?
江夏秀明:
極端に華美で豪華な雰囲気を出すつもりはありませんが、上質な雰囲気を大切にしたいので、重視していると同時に新館などは入りやすい雰囲気も大事にしています。たとえば、本店・新館ともに建物の歴史が古く、特に本店の1階はホテルのロビーのようなつくりです。博物館や美術館のように調度品が楽しめるようになっているため、お客さまからは「敷居が高い」と思われがちですが、それも1つのステータスと受けとめています。
また、料理に使う素材にもこだわってきました。特に代表的なメニューである「フカヒレの姿煮」には、気仙沼産のフカヒレを使用し、乾燥させた原ビレを戻して使うなど、調理方法にも工夫を凝らしています。競合他社と比較したときに、同じ値段であっても他に負けない上質な素材を使っているので、お客さまに高い支持を受けていると自負しています。
ご高齢のお客様には安心できる食を、若い世代には共感を育む場づくりを
ーー最後に、貴社の今後の展望を教えてください。
江夏秀明:
若いスタッフを育てることと、熟年スタッフの経験を生かすことが重要になるのではないかと考えています。私の後継者になれる人材を育成するためにも、経営者としての経験を積む機会を与えられるような組織づくりをしていきたいと思います。
弊社は、社訓「感謝・誠実・奉仕」を大切にし、横浜の発展とともに成長してまいりました。伝統を守りながらも革新を追求し、中華街のみならず横浜全体への貢献を目指しています。近年、食べ歩き文化が広がり、景観が変化していますが、弊社はこれからもこの街の独自の文化を守り続けます。中華街の魅力を伝え、⼀流店としてお客様に愛される存在であり続けたいですね。
編集後記
創業85周年を迎えた老舗中国料理店でありながら、その歩みは決して保守的ではない。次の100周年に向け、高級店としての品格を保ちつつ、食品開発や新規事業など、新たな挑戦を模索する姿勢が印象的だった。「伝統」という言葉に安住せず、常に未来を見据えた戦略を描く。その姿勢こそが、85年の歴史を築いてきた原動力なのかもしれない。

江夏秀明/1963年、神奈川県横浜市生まれ。銀行に入行し、4年の期間を経て1991年に株式会社華正樓へ入社。2012年に同社代表取締役社長に就任。⽼舗の三代⽬として、横浜の発展とともに歩む。