※本ページ内の情報は2026年6月時点のものです。

AIの急速な普及により、基盤となる計算資源(GPU)の需要がかつてないほど高まっている。海外のメガクラウドに依存せず、ゼロベースで独自のプラットフォームを提供するのがモルゲンロット株式会社だ。同社は、経営哲学である「グッドマーケット、グッドストラテジー、グッドチーム」のもと、事業を爆発的にスケールさせる拡大期にあり、直近では12.5億円の資金調達を完了した。同社を率いているのは、大企業からスタートアップへ飛び込んだ代表取締役CEOの中村昌道氏。日本で唯一無二のポジションを築くビジネスの裏側について聞いた。

大企業の研究開発からスタートアップへ AIの波を捉えた大胆なピボット

ーーまずは、貴社に入った経緯からお聞かせいただけますか。

中村昌道:
事業を自らの手で拡大していく実感を得たいと考えたことが、一番の理由です。前職の株式会社日立製作所では約6年間にわたり研究開発部門に所属し、主に大学で専攻していた宇宙工学の知識を活かして、自動車のセンサーや風力発電向けの気象予測、新幹線の設計などを担当していました。

しかし、部署の改編などを経て、一つの技術だけでは製品への貢献度が見えにくくなり、事業全体を拡大させる手触り感を得たいと葛藤を抱くようになったのです。そこで、別の切り口から直接ビジネスに関わりたいと考えていた折、当時から注目を集めていたGPUを活用する弊社の取り組みに惹かれました。1人が幅広い領域を担うスタートアップ環境で挑戦したいという思いも重なり、入社を決意しました。

ーー貴社で経験した印象深い業務はどのようなものでしたか。

中村昌道:
弊社は、もともとアニメーションなどの用途でGPUを提供する事業が主力でした。しかし私が入社して1年ほど経った頃、生成AIの台頭で社会のニーズが一変したのです。そこで、事業転換を決意しなければならないと考えました。とはいえ、既存の基盤がある中で、AI向けの計算力提供へと舵を切る決断は容易ではありません。多くの試行錯誤を重ね、新たな需要に応える体制を構築できたときは非常に感慨深いものがありました。

「グッドマーケット」を見極める日本で唯一無二のポジションとは

ーー経営者として、どのような基準で事業の意思決定を行っていますか。

中村昌道:
「グッドマーケット、グッドストラテジー、グッドチーム」という要素を重視しています。私自身エンジニア出身のため技術に目が行きがちですが、どれほど優れた戦略があっても、市場に成長性がなければ事業は拡大しません。市場全体の伸びしろを見極め、私たちが提供できる付加価値の解像度を高く保つことを判断基準としています。

ーー貴社のビジネスは具体的にどのような強みを持っているのでしょうか。

中村昌道:
高度なGPUサーバーを使いやすい形に構築する技術力と、必要な分だけ提供できる構成力です。ITインフラは海外のメガクラウド利用が一般的です。しかしAI活用が進むにつれ、環境を自社で完全に管理したいというニーズが生まれています。その点、弊社は海外サービスに依存せずにゼロベースで独自の環境を構築し、本来であれば海外サービスなどを利用するところを国内で実現させているのです。日本でのサービス提供も唯一無二のポジションだと自負しています。

12.5億円の資金調達を達成 事業を爆発的にスケールさせる拡大期へ

ーー直近、資金調達した理由は何でしたか。

中村昌道:
急増する需要に対して提供体制を強化し、事業を爆発的にスケールさせていくためです。現在、多数の企業からご相談をいただいていますが、既存のリソースでは対応が難しい状況でした。今回の資金調達により、ハードウェアの拡充や外部連携を強化し、会社を次のフェーズへ押し上げる体制づくりに投資します。

ーー組織を拡大していく上でどのような人材を求めていますか。

中村昌道:
根幹となるエンジニアをはじめ、顧客の課題解決を牽引できる人材ですね。最近は事業変革を見据えた提案段階から入り込むケースも増えています。そのような中、物理的なサーバーを直接構築・制御できるエンジニアは希少な存在です。弊社には、他社では味わえないビジネスがあり、働く人にとっても唯一無二の環境が提供できると考えています。

「計算力」を新しいインフラに 誰もが利用できるプラットフォームを目指して

ーー最後に、今後の事業展開について教えてください。

中村昌道:
「計算力を新しいインフラにする」というミッションの実現です。高額で導入ハードルが高かったGPUを、必要な人が必要な分だけ利用できる社会をつくります。GPUやAI環境を構築したいと考えた際の選択肢です。「モルゲンロットに行けば最適な環境が整う」と真っ先に選ばれる基盤提供者になることが私たちの目標です。

編集後記

大企業からスタートアップへ参画し、社会の変化を捉えて事業を大胆にピボットした中村氏。「グッドマーケット」を見極める冷静な事業目線が印象的であった。海外サービスが主流の業界において、日本で唯一無二のポジションを築き上げた手腕は確かだ。強力な計算基盤が社会インフラとなる未来へ向け、同社の挑戦は続く。働く人にとっても唯一無二の環境で、彼らが一丸となってどのような成長を描くのか、今後の躍進に期待したい。

中村昌道/東京大学大学院で航空宇宙工学を専攻し、流体シミュレーションを研究(博士後期課程修了)。その後、株式会社日立製作所で流体シミュレーションを活用した多種多様な製品開発に従事。計算基盤の適切な管理や最適なリソース配分の重要性、およびGPUによるシミュレーション高速化やAI技術の活用に可能性を感じ、2022年にモルゲンロット株式会社へ入社。CTO・COOを経て、2025年8月より現職。