※本ページ内の情報は2026年6月時点のものです。

情報インフラの構築を通じて、60年以上にわたり日本の放送・通信ネットワークを支え続けてきたシンクレイヤ株式会社。同社の代表取締役社長を務める山口倫正氏は、大学卒業後に顧客企業やコンサルティングファームを経て、家業へ入社した経歴を持つ。技術、営業、広報など多彩な業務を現場で経験し、自社への愛着と誇りを深める同氏。独立系企業としての独自の強みを活かした新市場の開拓と、社是「愛・知・和」が息づく組織づくりにかける思いに迫る。

取引先や異業種での修業時代 客観的な視点とプロの姿勢を学ぶ

ーーまず、社会人としてのキャリアについてお聞かせください。

山口倫正:
幼少期から、後継ぎとして父に期待されているとは感じていました。ただ、当時は「敷かれたレールを歩みたくない」という若さゆえの反発心もあり、迷っていたのです。転機は大学3年、創業者である祖父の葬儀で多くの人が祖父との別れを惜しむ姿を見て、社会における”社長”という存在の大きさを実感し、大学院進学ではなく家業を継ぐことを決意しました。しかし、そのまま入社するのではなく、まずは外の世界を知る必要があると考え、大学卒業後は弊社のお客様である名古屋のケーブルテレビ局に入局しました。

そこでは3年間、法人向け営業と弊社製品を扱う放送・通信設備運用の仕事に携わりました。弊社の製品や会社自体がお客様の目にどう映っているのか。良い面も厳しい面も含めて、お客様の立場で客観的に把握できたことが大きな収穫でしたね。特に、自社製品に対する率直なご意見をいただいた経験が、お客様と深く理解し合うための土台となっています。

ーーその後はどのような道を歩まれたのですか。

山口倫正:
コンサルティングファームへ転職しました。将来経営に携わるにあたり、プロフェッショナルの働き方を体得したいと考えたからです。転職先では、1年間人事部門の採用担当として職務に従事しました。周囲はトップコンサルタントばかりです。彼らが目標に対して何を考え、どう行動するのかを間近で学べたことは、私にとって非常に大きな財産となりました。

現場での経験が培った自社への誇りと独自の強み

ーー貴社に入社してからはどのような遍歴を辿られたのですか。

山口倫正:
まず、岐阜県にある工場の技術部に配属され、海外の企業と連携して通信機器の商品開発に携わりました。またネットワークの設計やプロモーションなど、様々な立場で現場の業務も経験しています。

役職が上がり視野が広がるにつれて、ステークホルダーの皆様の支えによって会社が成り立っていることを実感する機会も増えました。次第に、自分たちが社会の基盤となる情報インフラをつくり上げていることに誇りを抱くようになり、会社のことがどんどんと好きになっていったのです。社員として現場を経験してきたからこそ、今自信を持って経営に向き合えているのだと思います。

ーー改めて、貴社の強みはどこにあるとお考えですか。

山口倫正:
独立系企業ならではの柔軟な提案力と伴走支援です。私たちは日本の各地域のネットワーク構築を手がけていますが、通信の世界は国際標準が基本です。特定のメーカーに縛られない独立系だからこそ、お客様のニーズに合わせて、世界中から最適な通信機器を見つけ出し、提案できる強みがあります。

一方で、日本の放送設備には独自の規格が多く存在します。日本でしか使わない製品や本当に必要な設備に関しては、60年以上にわたるノウハウを活かし、これらを自社工場で一貫して設計・開発・製造できることが大きな特徴だと考えています。「最適な製品の調達」と「自社でのものづくり」。この両輪を回せる総合力が、私たちの強みです。

新市場の開拓と「愛・知・和」が息づく組織づくり

ーー今後の事業展開について、どのような計画を描いていますか。

山口倫正:
これまで主軸としてきた放送・通信事業者への価値提供は今後も大切にしますが、それに加えて、一般企業など新しい市場の開拓も進めていく方針です。

また、建物を建てずに過疎地でも低コストでインフラを導入できる「ポール型の放送・通信設備」や、50Gbpsの通信網を構築できるような最新設備の提供にも注力しています。世間のニーズに応じた柔軟な商品開発を行い、社会課題の解決に貢献していく考えです。

ーー採用や組織づくりにおいて、重視していることを教えてください。

山口倫正:
弊社には、創業者が定めた「愛・知・和」という社是があります。この社是は「和」から始まり、「知」を経て、「愛」に至るという順番が重要だと考えています。まずは、互いを尊重し合う「和」の環境をつくること。そのコミュニケーションの中で、先輩から学び、自ら「知」識を広げていく。そして最終的に、仲間とのつながりや自己効力感から、仕事に対する「愛」が生まれる、というプロセスが重要だからです。そのため、チームとして共に成長し、助け合うことを楽しめる方に来ていただきたいですね。

ーー最後に、今後の展望をお聞かせください。

山口倫正:
目標は大きく2つあります。1つは事業規模の拡大です。弊社のファンになっていただけるようなお客様を増やし、新市場を開拓していくこと。そしてもう1つは、社員がいきいきとやりがいを持って働ける組織をつくることです。これからも、社会で求められるインフラを構築し続け、また同時に、社員たちがその意義に誇りを持てる会社へと進化させていきます。

編集後記

情報インフラという社会に不可欠な基盤を支えながら、決して現状に甘んじることなく新たな市場へと目を向ける山口氏。顧客企業や異業種で培った客観的な視点が、自社の強みを正しく見極める土台となっている。また、最新の通信設備というハード面だけでなく、「愛・知・和」という社是を最重要視する姿勢も印象深い。現場を知り尽くしたトップが率いる同社が、今後どのような組織へと進化していくのか。その未来が非常に楽しみである。

山口倫正/1991年生まれ。2014年、名古屋大学工学部卒業。2018年4月、シンクレイヤ株式会社に入社。2023年4月に経営企画室長、2024年3月に取締役経営企画室長、2025年3月に常務取締役 技術生産本部長兼広報室長を経て、2026年3月に代表取締役社長に就任。