
国内有数の物流グループの中で、スピードと確実性を武器に独自の全国ネットワークを展開するセイノースーパーエクスプレス株式会社。同社を率いる平井克昌氏は、新卒で入社後、現場の営業から品質改善、そして経営企画まで幅広い領域で確かな実績を残してきた人物だ。2025年に社長に就任。強固な安定基盤を持つ同社を「成長」へと導くべく、2030年に向けた売上高1000億円の目標を掲げる。他社には難しい細やかな物流網を強みに、いかにして新たな歴史を築くのか。現場を知り尽くしたトップが描く、組織改革と未来への展望に迫った。
73ヶ月連続の売上高増 そして課題を抱えた支店の再建へ
ーーまずは、現場で実績を積まれるまでの初期のキャリアについて教えてください。
平井克昌:
大学卒業後、地元である岐阜県大垣市に本社を構える西濃運輸株式会社に入社しました。当時は大手証券会社の倒産などがあり、金融業界への就職に不安を感じていた時期でした。そうした中で、実体として「ものが動く」物流業界に面白さを感じたのです。ちょうどロジスティクスという言葉が出始めた頃で、西濃運輸であれば幅広い挑戦ができると考えたことが志望の原点でした。
入社後は現場でのドライバー研修や事務研修を1年経験し、その後は本社の監査部門で業務の標準化やISO取得に向けたルールづくりなどに3年半従事。そして現場へ戻り、営業担当として鶴見支店に配属されました。当時は新店開設による移転により事業規模が以前の3倍ほどに拡大した直後のタイミングでした。いただいたご依頼は断らずに全員で対応してさばいていく方針のもとで仕事に向き合った結果、73ヶ月連続で毎月の売上高が前年比プラスを達成することができました。こうした右肩上がりの環境で実績を積めたことが評価に繋がり、33歳ごろに課長へと昇進を果たしています。
ーー鶴見支店で実績を残された後は、どのようなキャリアを歩まれましたか。
平井克昌:
鶴見支店で課長として管理職を経験した後、川崎支店長、東京エリア統括補佐を経て、横浜支店長を務めました。そこでは品質の立て直しという大きな課題に直面しました。当時の横浜支店は業務量が処理能力を上回っており、トラックの滞留による荷卸しの遅れや、お客様への問い合わせ対応が追いつかない状況でした。そんな状況を打破するため、半年から1年かけて徹底的に業務手順を見直しました。人員を適切に配置し、役割分担を明確にすることで収益とのバランスを図りました。
その結果、対応の遅れが解消され、売上高と利益の双方を大きく伸ばすことに成功しています。最終的には20代のスタッフが中心となって業務を進行する模範的な支店へと生まれ変わりました。
ーー社長就任の打診を受けた際の率直な心境をお聞かせください。
平井克昌:
横浜支店での改革の後は、神奈川エリア統括マネージャーとして複数拠点の運営を統括し、エリア全体の生産性向上と収支改善を推進してまいりました。その後、本社営業企画部長としてOPP戦略をはじめとする他社との連携などを進めてまいりました。そして2025年にセイノースーパーエクスプレスの社長の打診を受けたのですが、非常に重い責任を感じると同時に、純粋な驚きがありました。本社へ異動してからの期間が2年と短かった上、従業員約3000人規模の組織を任されたからです。
社長に就任して実感したのは、過去10年間にわたり手堅く利益を出し続けている「安定した会社」であるという事実でした。一方で、それは「成長が停滞している」という課題の裏返しでもあります。私たちが築いてきたネットワークやサービスの水準には確かな価値があります。だからこそ、安定に甘んじることなく、会社を新たな成長フェーズへと導くことが自身の役割だと確信いたしました。
他社が避ける領域を攻める 顧客に寄り添う独自の強み

ーー貴社の強みを教えてください。
平井克昌:
西濃運輸が全国の特積みネットワークを活用した大量輸送のプロフェッショナルであるのに対し、私たちセイノースーパーエクスプレスは、全国の空港拠点と独自の全国ネットワークを活用し、「スピード」と「確実性」を両立した物流サービスを提供しています。
特に、高い品質管理と確実な納期が求められる航空貨物や半導体・電子部品などの輸送を強みとしており、こうしたお客様からのご依頼が売上高の過半数を占めています。
精密機器や緊急性の高い貨物、特殊輸送、さらにはロジスティクスまで幅広く対応し、お客様のサプライチェーンを支える高付加価値な物流サービスを展開しています。
ーー他の物流企業との決定的な違いはどのような点にありますか。
平井克昌:
お客様の商品に合わせた、きめ細やかな個別対応ができる点です。規模の大きな他社の場合、定型化された標準手順を回さなければ機能しないため、手間のかかる依頼はお断りするケースが少なくありません。しかし私たちは、商品の形に合わせた専用の梱包材を提案し、作成から回収までを一貫して請け負います。少数精鋭の組織だからこそ、他社が避けるような特殊な輸送ニーズにも柔軟にお応えできるのです。
ーーその強みを、今後はどのような形で拡大していく予定ですか。
平井克昌:
運送という枠組みを超え、より上流の物流領域へ踏み込んでいきます。具体的な取り組みとして、半導体産業が活況な熊本に約5000坪の大型倉庫を用意し、今年10月から運営を開始します。お客様に対して保管機能を提供するだけでなく、さまざまな付加価値サービスをご提案する予定です。その過程で、自然と輸送のご依頼もお任せいただける戦略を描いています。
組織改革と採用強化で目指す「頼られる存在」
ーー会社を「成長」へと導くために、現在はどのような施策に着手されていますか。
平井克昌:
まず大きな目標として、2030年に売上高1000億円を達成するというビジョンを掲げました。その目標達成に向け、現在最優先で取り組んでいるのが組織改革です。成長戦略プロジェクトを立ち上げ、6つの分科会で事業計画の策定や新サービスの開発、就業規則の見直しなどを進めています。
また、従来の本社と支店による縦割りの構造を見直しました。業務安全、営業、管理の3つの統括部へと一本化を図ることで、より迅速に意思決定ができる体制を構築しています。
ーー採用面での取り組みについてお聞かせいただけますか。
平井克昌:
全社を挙げて中途採用を強化しており、昨年は前年比で2倍の採用を実現いたしました。以前の各営業所では、人員増加による一時的な採算悪化を懸念し、採用に踏み切れないという課題がありました。そこで、採用後半年間は本社で人件費を負担する制度を新たに導入し、現場が採用しやすい環境を整えています。さらに、1000億円という目標から逆算し、今年は各部門で何人採用するかを明確に設定しました。4月からは新たに広報課を立ち上げ、SNSなどを活用した情報発信にも力を入れ始めています。
ーー最後に、今後貴社が目指していく姿をお聞かせください。
平井克昌:
「ここぞというときに、SSXに頼めば確実な仕事をしてくれる」というポジションを築き上げることです。スピードや正確性が求められる高付加価値な物流領域において、真っ先にお客様に選ばれる存在になりたいと考えています。私たちが持つ独自の強みを全国の多くのお客様へ提供し続けることで、結果として売上高1000億円という目標に到達できると確信しています。
編集後記
「安定」は、時として「停滞」を意味する。平井氏の言葉からは、長年の手堅い経営にあぐらをかかず、自ら改革の旗を振る強い覚悟が感じられた。少数精鋭だからこそ実現できる細やかなサービスと、現場のリアルを知るトップならではの抜本的な組織改革。スピードと確実性を武器に、物流の常識を超えていく同社の未来が非常に楽しみだ。

平井克昌/1998年慶應義塾大学卒業後、西濃運輸株式会社に入社。ドライバー研修や本社監査室を経て、支店長・エリア統括を歴任。2023年より営業企画部長として「Team Green Logistics」を推進。2025年よりセイノースーパーエクスプレス社長に就任し、高付加価値輸送と組織改革を推進、2030年売上高1000億円を目指す。