※本ページ内の情報は2026年7月時点のものです。

最先端の印刷機をいち早く導入し、パッケージ印刷の先駆者として実績を重ねてきた統一印刷株式会社。代表取締役の雫石宏親氏は、アパレル業界から30歳で異業種へ飛び込んだ。職人気質の現場で自ら手を挙げて、管理職へと上り詰めた経歴を持つ。同氏が社長就任後に取り組んだのは、長年染み付いた古い業界体質の打破と社員が輝ける組織づくりだった。「会社では親しみのある社長」と言わしめる関係性は、いかにして築かれたのか。業界の常識を変え新工場設立を夢見る、同氏の軌跡と未来への展望に迫る。

アパレル業界からの転身と自ら手を挙げた「リーダー」への道

ーーまずは、貴社に入社するまでの経歴を教えていただけますか。

雫石宏親:
20代では建築設計から、アパレル業界へ転身。ショップ店員から店長、そしてスーパーバイザー・営業などを経験しました。しかし当時は厳しい環境にあり、高い目標への重圧や長時間の業務が続く日々だったのです。そんな背景から「1日で区切りがつく仕事がしたい」と強く思うようになった頃に出会ったのが弊社でした。当時は社長になるなど想像もしておらず、現場でのモノづくりからスタートしました。

ーーその後、どのような経緯で貴社の社長に就任されたのですか。

雫石宏親:
20代の人たちが活気を持って働ける現場をつくりたかったことが理由です。私が入社した当時の現場は私が一番年下、かつ周りは50代の職人が中心でした。その中で「仕事は見て学べ」という職人気質が根強くあり、このままではいけないと強く感じました。そこで入社から2年ほど経った頃、思い切って「リーダーになりたい」と立候補したのです。今思えば大それたことですが、現状を変えるには自ら動くしかありませんでした。

その後、ご縁があり創業家の方と結婚をしたことが、代表になる一つの節目となりました。しかし、実力を示さないまま結婚を機にトップに立つようなことがあれば、周囲は面白く思わないでしょうし、納得しません。そこで、現場の検査工程やパートさんの管理、品質管理の新設と手加工部門の立ち上げなど、率先して現場の工程に自ら深く関わりました。そうして現場の信頼を得ながら一連の業務を経験したのちに、数年経ってから社長に就任しました。

「親しみのある社長」 距離を縮めるコミュニケーションと自身の変化

ーー社長に就任してから、ご自身の中で変化したことをお聞かせください。

雫石宏親:
特に変化したのは「人の、その奥を考えるようになった」こと、そして「正しい行動を意識するようになった」ことですね。従業員はもちろん、仕事で携わる方々の話しをよく聞き「言葉にしていない、その奥に何があるんだろう」などを考えるようになりました。

また、現場から事務所に上がった際、挨拶の大切さを知らない当時の環境に違和感を覚えました。そこで私は、ひとり一人に「おはようございます」「お疲れさまでした」と大きな声を発するようにしたのです。ゴミが落ちていたら拾うなど、当たり前のことを正しく行うようにしたところ、少しづつ社員の意識が変わりました。

ーー社員とのコミュニケーションにおいて、大切にしていることは何ですか。

雫石宏親:
些細な変化に気づき、私から声をかけることです。以前は立ち話すらもしていませんでしたが、ここ数年は意識を変え、社員の持ち物のちょっとした変化に気づいて声をかけたり、休憩中のリラックスしているタイミングでフランクに話しかけたりするようにしています。

「気にかけてくれている」ということが伝わると、社員もうれしいんじゃないですかね。実際、4年前に採用した新卒社員たちが食事に行った際、「会社で話しやすい人は誰?」という話題になり、「社長です」と答えてくれた社員がいたそうです。その話を人づてに聞いたときは、本当にうれしかったですね。

また、料理好きということもあり、自宅でカレーやスープをつくって会社に持っていって、みんなで給食のように食べたり、役職にかかわらず「全員さん付け」で呼び合うなど、あえて距離を感じさせないコミュニケーションを心がけています。

先駆者としての誇りと印刷業界の“野暮ったい”イメージを覆す挑戦

ーー貴社の強みや、他社にはない特徴についてお聞かせください。

雫石宏親:
「箱」づくりのパイオニアとしての深い知識と経験が、私たちの最大の強みです。弊社は、紫外線硬化型のオフセット印刷機を業界で最も早く導入した歴史があります。かつては、光沢のある特殊な紙に印刷できる技術を持つのは弊社くらいしかありませんでした。その確かな技術力とパッケージ設計に関する知見を評価していただいており、外部企業とも長年にわたり直接取引を行っています。

ーー最後に、今後の展望や印刷業界に対する思いを教えていただけますか。

雫石宏親:
印刷業界のなにか野暮ったいイメージを根本から変え、洗練された業界にしていきたいと考えています。たとえば、作業着を清潔感のある真っ白なものに変えたり、社内のあちこちで社員の笑顔や会話があふれたりするような会社にしていきたいですね。

私自身、これまでの人生を振り返って強く感じるのは、「仕事をしているって、実はとても贅沢なこと」だということです。健康な体があり、共に働く仲間がいて、お客様に喜んでいただけるものづくりができる。その仕事を通じて人間的に成長し、輝くことができる。だからこそ、社員の誰もが「この会社で仕事をしていてよかった」と心から思える環境をつくることが私の目標です。そうしたやりがいのある環境づくりの一環として、事業面でも、長年お取引のある分野にとどまらず、新たな分野のパッケージ制作にも積極的に挑戦していきます。

また、近い将来には新しい工場を建てたいという夢があります。建築設計の実務経験があったことで、ある程度の設計図は出来ています。ランチやBBQ、お昼寝などができるガーデニングスペースやシャワールームなどを設け、製造現場はこれまでにない誰もがワクワクする工場です。全社員が心から楽しめる魅力的で新しい印刷会社を目指していきます。

編集後記

アパレル業界からの転身という異色の経歴を持つ雫石氏。その言葉の端々からは、社員を家族のように大切に思う深い愛情が感じられた。古い業界の常識を打ち破ろうとする強いエネルギーも伝わってきた。自ら手作りのカレーを振る舞うなど、トップ自らが壁を取り払うことで温かい社風が生まれている。その社風が同社のモノづくりを支えているのだろう。最新技術を持つ先駆者としての誇りを胸に、業界を「洗練させる」同社の飛躍が楽しみだ。

雫石宏親/1969年、神奈川県生まれ。専門学校卒業。1999年に入社、2012年に同社代表取締役に就任。