※本ページ内の情報は2026年7月時点のものです。

ガラケーからスマートフォンへの移行期に事業を立ち上げ、現在では累計2万5000社以上の中小企業を支援する株式会社ファインズ。動画マーケティングを軸に成長を遂げた同社を率いるのが、営業現場からキャリアを積み上げ、代表取締役社長に就任した三輪幸将氏だ。近年は「経営改革プラン」を推進し、パーパスの策定や生成AIの活用、ビジネスモデルのストック化など、次々と組織変革を断行している。全責任を背負い未来を見据える経営への覚悟と、10年後も「誠実な会社」として選ばれ続けるための戦略について三輪幸将氏に話を聞いた。

営業現場からの「抜擢LBO」を経て固まった全責任を負う覚悟

ーーまずは、貴社設立から社長に就任されるまでの経緯をお聞かせいただけますか。

三輪幸将:
私が株式会社フリーセル(現・ブランディングテクノロジー株式会社)に営業職として入社し約1年が経った頃、世の中はガラケーからスマートフォンへの移行期を迎えていました。そこで、会社としてモバイル向けのコンテンツやウェブサイト制作を行う子会社を設立することになり、その際、所属していた営業二部がそのまま独立する形で、社内ベンチャーとして誕生したのが現在の株式会社ファインズです。

当時はまだ一般職でしたが、私も立ち上げメンバーの一人として参画しました。創業当初はガラケー向けのホームページ制作を手がけており、まだサイト制作自体が普及していない時代だったため、新しいサービスを世に広めていく楽しさと難しさの両方を感じていました。その後、現場から執行役員へとキャリアを重ね、2018年に社長へ就任いたしました。

ーー社長に就任されてから、ご自身の中で最も大きく変わった点は何でしょうか。

三輪幸将:
最も大きく変わったのは、「全責任を負う」という覚悟です。従業員や役員だった時も自身の組織に対する責任はありましたが、社長になると会社や従業員のすべてを背負う立場に変わります。就任直後には、会社の将来を左右する選択としてLBO(レバレッジド・バイアウト)を実施しました。会社の舵取りから従業員の生活までを背負う立場になったことは、私にとって大きな転機でしたね。

その中でも普遍的な信念として持ち続けているのは、「お客様あってのファインズ」という思いです。10年、20年先を見据えて経営を続ける上で、顧客を大切にできない会社は必ず淘汰されます。今後会社がどのように変化しても、お客様に寄り添う誠実な会社であり続けるという軸がぶれることはありません。

伴走型支援が生む顧客満足度98% 継続的な収益と多角化への挑戦

ーー数ある支援会社の中から、貴社が選ばれ続ける理由をお聞かせください。

三輪幸将:
最大の強みは、累計で約2万5000社、動画単体でも約1万2000社に及ぶお客様との取引実績とノウハウです。弊社はただ制作して終わりではなく、潜在的な課題を抱えるお客様に徹底的に寄り添う「伴走型の支援」を行っています。反響だけをゴールにせず、幅広いお悩みにお応えすることで、顧客満足度は98%を超えました。主力のVideoクラウドサービスも、解約率0.7〜0.8%と低い水準を維持しています。

ーー今後の事業展開についてどのようにお考えですか。

三輪幸将:
今後は強固な顧客基盤を活かし、単発の収益から継続的な収益へとビジネスモデルを転換させます。単なる物売りではなく、数年先を見据えてお客様の経営課題を根本から解決するソリューションの提供への移行が、当面の最重要テーマです。

また、地方の中小企業様にとってDX推進と並んで深刻なのが「人手不足」の課題です。これに対し、私たちが採用の母集団形成を支援するだけでなく、グループ会社を通じて直接人材を紹介する事業なども展開し始めました。テクノロジーの導入から採用支援まで、お客様にとって不可欠な存在になるための多角化を進めていく方針です。

社員の自発性を引き出す大規模な経営改革

ーーより良い組織づくりに向けた新たな取り組みについて教えてください。

三輪幸将:
現在、社内で大規模な「経営改革プラン」を推進しています。その背景にあるのは、会社としての明確なゴールが必要だという課題意識です。以前の弊社は、数字や営業成績に重きを置いたトップダウン型の組織でした。しかし、それだけでは「何のために仕事をしているのか」という目的がかすんでしまいます。

そこで改革の第一歩として、「企業と地域社会の未来に、テクノロジーの追い風を。」というパーパスを策定しました。パーパスの実現を目指し、OKR(目標と成果指標)や1on1を導入しています。これにより、現場の部長や課長が「自分たちのチームはどう会社や社会に貢献していくのか」を自発的に考え、目標を掲げるようになりました。上から言われて動く組織から、自ら考えて行動する風通しの良い組織へと変わり始めています。

ーー人的資本への投資や教育面では、どのような工夫をされていますか。

三輪幸将:
従業員が働きやすく、自己実現に向けた意欲を持てる環境づくりを最優先としています。その一環として、学ぶ機会の「平等さ」を大切にしています。社内独自の動画プラットフォームには、トッププレイヤーの営業ロープレや商材の解説動画を格納し、誰でもいつでもアクセスし、学習できる環境を整えました。来期以降は人的資本経営をさらに加速させる方針で、営業成績だけでなく、バリューに基づいた行動を評価する制度へと刷新する予定です。今後も年功序列ではなく、自律的に行動して会社に貢献する人が正当に評価される仕組みを構築していく考えです。

AIによる「生産性の向上」と自社の変革 ノウハウを新たな財産に

ーー今後の展望についてお聞かせください。

三輪幸将:
現在は、生成AIを活用した社内のバックオフィス業務の自動化に力を入れています。特定の担当者に業務が依存する属人化を防ぎ、人が介在しなくても会社が回る高利益体質の仕組みをつくることが狙いです。定型業務は極力AIに任せ、人間はより高度な設計や、AIにはできない対人コミュニケーションに集中すべきだと考えています。

ーー最後に、貴社が目指す未来像についてお話しいただけますか。

三輪幸将:
現在弊社が実践しているパーパス経営や人事制度の刷新、AIによる業務改善といった「組織変革の過程」そのものを、ゆくゆくは商品やサービスとして提供していきたいと考えています。私たち自身が中小企業として壁にぶつかり、それをどう乗り越えて業績を向上させたのか。この生きたノウハウは、同じように悩む数多くの中小企業様にとって大きな価値があるはずです。自社の変革を次なる財産へと変え、日本中の企業の未来にテクノロジーの追い風を吹かせていきます。

編集後記

現場での経験と、LBOという大きな決断を経て組織を率いる三輪幸将氏。「お客様あっての弊社」という揺るぎない信念の裏には、テクノロジーと人間の役割を冷静に見極める合理性があった。トップダウンからの脱却、AIを活用した生産性の向上、そして自らの組織変革の軌跡すらも新たな価値へと転換しようとする姿勢は、同社のさらなる飛躍を期待させる。

三輪幸将/株式会社フリーセルの営業部門でキャリアをスタート後、株式会社ファインズの立ち上げメンバーとして参画。執行役員、常務取締役を経て、2018年に代表取締役社長に就任。2022年にはグロース市場上場を実現するなど、未来を見据えた経営戦略を推進している。