※本ページ内の情報は2026年8月時点のものです。

東海・関東圏を地盤に、産業廃棄物の収集運搬から中間処理、そして新規開設が極めて困難な最終処分場の運営までをワンストップで手がける株式会社ミダックホールディングス。同社は、業界内でも希少な「管理型最終処分場」を自社保有することで独自のビジネスモデルを築き上げ、高い経常利益率を誇る。同業他社との差別化を図り、純粋持株会社体制への移行や積極的なM&Aを通じて事業領域を拡大し続けている。業界では難しいとされた上場を成し遂げた背景には、業界の地位向上を願う創業家の強い思いがあった。税理士の立場から飛び込み、社内体制を整備して上場を牽引し、現在は代表取締役社長として同社を率いる加藤恵子氏に、事業の強みや次なる成長戦略について話を聞いた。

税理士からの転身と創業家の思いを背負う「覚悟の入社」

ーーまずは、貴社へ入社された経緯を教えてください。

加藤恵子:
創業者の「業界の地位を向上させ、上場させたい」という強い大義に共感したからです。当時の産業廃棄物処理業は、優秀な人材の獲得も難しく「上場できない業種」と言われていました。そのような中、弊社がIPOを目指すにあたり、顧問税理士を監査法人系へ切り替えることになりました。そこで当時、監査法人系の税理士法人に所属していた私が、担当者として外部から関与することになったのです。

いざ着手してみると、社内は上場準備が全く整っておらず、マニュアルすらない状態でした。しかし創業家は、単なる資金調達ではなく「従業員や家族が安心して幸せに暮らせる組織をつくりたい」と願っていました。その思いを形にする手助けをしたいと、自ら飛び込む覚悟を決めたのです。

入社後は、上場に不可欠な社内体制の整備や内部統制の構築に一から奔走しました。約10年という長い歳月をかけて組織の基盤を固め、不可能と言われた業界の壁を突破。2017年には名証第二部上場、2018年には東証第二部上場、そして2019年には東証第一部(現・東証プライム)上場へとつなげることができました。

ーー社長就任の打診を受けた際の率直な思いをお聞かせください。

加藤恵子:
2019年、前社長の退任に伴う後任指名を受け、他の取締役からの全会一致の承認を経て社長に就任しました。高度な経営の舵取りを任され、重責に非常に身の引き締まる思いでしたね。なお、同年12月には念願の東証第一部への上場を実現しました。上場セレモニーにおいて、創業家をはじめ共に奮闘してきたメンバーの中心に立たせてもらったときの大きな感動は今でも忘れられません。この経験から、上場は一つの通過点に過ぎないと再認識しました。今後は社長として戦略的に事業を展開し、会社を次のステージへと導く決意です。

現場を守り抜いた「試練と突破口」

ーー社長就任後、具体的にはどのようなことに注力されましたか。

加藤恵子:
どのような状況下でも、社会インフラとしての機能を維持し続ける決断を下しました。社長就任前後から自然災害やコロナ禍に直面しましたが、医療従事者が最前線で戦う中、私たちも医療廃棄物の処理を止めて公衆衛生を崩壊させるわけにはいきません。そこで、自らコロナ対策本部長として指揮を執り、感染者が出ても事業を継続できるよう、社内の機能を分散させるチーム分断(ゾーニング)を徹底したのです。

さらに有事に備え、地元である豊橋市などと災害時の協定を結ぶとともに、同業他社とドライバーや車両を相互に融通し合う「災害時相互支援協定」を締結しました。トップとして迅速に決断し危機管理を徹底したことで、新体制におけるリーダーシップを社内外に示すことができたと考えています。

こうした数々の困難を乗り越える経営の根底には、私が大切にしている「而今(じこん)」という禅の言葉に基づく哲学があります。これは「今この一瞬になすべき一つのことへ集中する」という意味です。上場を目指す10年以上の道のりの中で、不可能に思えるほど山積みの課題に対しても、ただ目の前のやるべきことに全力を注ぎ、着実にクリアしてきたからこそ大きな目標を達成できました。いかなる逆境においても「今」に集中し抜く姿勢が、私のブレない軸となっています。

ーー貴社の独自の強みはどこにあるとお考えですか。

加藤恵子:
最大の強みは、廃棄物の収集運搬から中間処理、そして新規取得が極めて困難な「最終処分場」までを自社で一括保有している点です。管理型最終処分場の保有は、市場における大きな参入障壁となっています。また、処分場を早く埋めて売上高をつくるのではなく、「高単価物を厳選して高く受け入れる」という戦略を徹底しています。これは、全体のバランスと予算を見極めながら効率よく利益を生み出す、税理士出身ならではの最適化戦略です。

加えて、関東圏に比較的近い浜松という立地も、処理費と運搬費のトータルコストで考える顧客にとって運搬費が抑えられる分、処理費において当社に大きな優位性があります。こうした強みと戦略が結実し、高い利益率を誇る実績を出すことができています。

未来への成長戦略「Challenge 80th」と次世代の育成

ーー今後のさらなる成長に向けて、どのような計画を描いていますか。

加藤恵子:
現在は「Challenge 80th」という10年間の成長戦略の半ばにあたり、11期連続の増収増益を達成しています。直近の目標としてオーガニックグロースでの売上高100億円、経常利益50億円の到達を見据え、さらにその先には売上高400億円規模への拡大を描いていく方針です。目標達成に向けた手段として純粋持株会社制へ移行し、千葉など関東圏におけるM&Aの加速を図っています。

また、事業拡大にとどまらず早稲田大学などの外部機関と連携した「脱炭素(CO2吸着)の共同研究」にも力を入れており、焼却灰にCO2を吸着させて最終処分場に貯留するなど、環境問題へのアプローチも同時に推進していく考えです。

ーー今後の事業展開に向けて、どのようなビジョンを描き、どのような人材を求めていますか。

加藤恵子:
弊社の事業は、単なる廃棄物の処理ではなく、社会インフラを支える非常に責任の重い仕事です。そのため、人材においても何よりも「誠実さ」と徹底した「コンプライアンスの遵守」を重視し、社会から信頼される企業価値の向上に努めています。

そして弊社の最大の目標は、当社の経営理念の実現を通じて、持続可能な「循環型社会」を確立することです。現在進めている早稲田大学とのCO2吸着技術の共同研究などの環境問題へのアプローチも、そのビジョンに基づいています。目の前の事業拡大だけにとどまらず、100年先を見据えて社会に貢献し続けること。この強い使命感と志に共鳴してくれる仲間たちを迎え入れながら、関東地方への力強い事業展開とさらなる飛躍を目指してまいります。

編集後記

緻密な戦略性と、非常時にもブレない決断力。加藤社長の言葉からは、社会インフラを担う経営者としての強い使命感が伝わってきた。純粋持株会社制への移行を機に、関東圏でのM&A加速や脱炭素の共同研究など、既成概念にとらわれず、次々と新たな挑戦を続ける同社が、今後どのような未来を切り拓いていくのか大いに期待したい。

加藤恵子/1970年愛知県生まれ、名古屋大学卒業。 佐藤澄男税理士事務所(現・税理士法人名南経営)入所、1993年に税理士登録。税理士法人トーマツに所属。2006年に株式会社ミダックホールディングスへ入社し、2019年より同社代表取締役社長に就任。