
「お金が理由で、やりたいことを辞めざるを得なかった」。そんな悔しい原体験から、学生時代に完全成功報酬の仕事へ飛び込み、自らの腕一つで稼ぐ力を身につけた佐藤駿介氏。同氏が代表取締役として率いる株式会社Epaceは、デジタル施策の運用代行にとどまらず、戦略設計から実行、顧客の内製化まで徹底して伴走する集団だ。実店舗を成功させているノウハウと、ブレない誠実さを武器に事業の幅を広げる同氏に、起業の背景や組織の強み、未来への展望を聞いた。
芸能活動の挫折から這い上がり「自分で稼ぐ力」を培った下積み時代
ーーまずは、起業の原点となる体験を教えてください。
佐藤駿介:
「自分で稼げる力を身につけなければ」という、過去の強い悔しさが起業の原点です。私は大学進学を機に上京し、芸能活動をしていました。周囲に裕福な家庭で育った友人が多い中、私は週5日のアルバイトで生活費とレッスン費用を稼ぐ日々だったのです。しかし出費が重なり、経済的な理由で活動を諦めざるを得なくなりました。その悔しさが、独立への強い動機となっています。
ーーその後はどのようにして稼ぐ力を身につけたのですか。
佐藤駿介:
固定給をもらう働き方を一切辞めて、路上での靴磨きやSNS集客、完全成功報酬の法人営業など、個人事業主として多業種に挑戦しました。結果を出せなければ1円にもならない環境でしたが、この下積み時代に養った「やり切る力」が、今の経営の大きな自信につながっています。
圧倒的な成果を生み出す「3つの強み」と「ご縁」を軸に広がる新規事業

ーー貴社の事業の特徴や強みはどこにありますか。
佐藤駿介:
大きく分けて3つあります。
1つ目は、単なるSNSや広告の運用代行にとどまらず、事業戦略の設計から組織構築、デジタル人材の育成まで支援できる点です。弊社は創業以来、上場企業から中小企業まで幅広い企業を支援し、現在は創業7期目で売上9億円規模まで成長しています。その中で、お客様からご依頼をいただいた際も、まずは丁寧にヒアリングを行います。その結果、別の施策を優先すべきだと判断すれば、正直にお伝えしてお客様にとって最適なプランをご提案します。
2つ目は、自社で多業種の事業を展開し、圧倒的な「実践知」を蓄積していることです。私たちはマーケティング支援事業と合わせて、自社で飲食事業、ネイルサロン事業、インテリア事業など複数店舗をグループ全体で運営しています。特にネイルサロン事業ではエリア有数の集客実績を実現しており、外部の予約サイトから手法を聞かれるほどの成功ノウハウがあるため、机上の空論ではない説得力を持った提案が可能です。
3つ目は、徹底した「内製化支援」です。ここでぜひお伝えしたいのですが、私たちは運用代行を続けることをゴールにしていません。最終的にはお客様自身がマーケティングを推進できる状態をつくることが使命だと考えています。運用を代行し続けたほうが自社の利益になるかもしれません。しかしお客様の利益を第一に考えれば、社内にノウハウを蓄積して自走できる状態が最善です。小規模な飲食店から大企業まで最長でも1年半程度伴走し、担当者が変わっても引き継げるマニュアルを作成します。このノウハウ移譲こそが、最大のこだわりです。
ーーどのような基準で多くの新規事業を立ち上げてきたのですか。
佐藤駿介:
「ご縁があって力になれるか」と「業界の負を解消したいか」という2つを基準にしてきました。単なる利益目的で事業を選ぶことはありません。たとえば100年以上続く伝統産業が既存事業の縮小に悩んでいた際は、私たちの経営ノウハウを掛け合わせれば状況が好転すると確信し、共に出資して新会社を設立しました。また、店舗展開の過程で不透明な慣習や厳しい環境を持つ業界と関わったことがあります。そういった環境を改善したいと考え、本業で培ったノウハウを生かし、誠実で質の高いサービスを提供しようと自ら参画を決断しました。
事業拡大と組織強化の展望 「デジタルの町医者」として経営課題を総合支援
ーー今後の事業展開や展望についてお聞かせください。
佐藤駿介:
将来的には、企業が特定の代理店へ依存しなくてもマーケティングを推進できる環境を増やし、日本企業のデジタル活用レベル向上に貢献したいと考えています。単に数字を追うわけではなく、当社のミッションやビジョンを軸に、ご縁を大切にしながら新たな事業を創出していく方針です。現在はデジタルマーケティングの受託事業と自社の店舗事業の割合を半々にまで成長させることを計画しており、内装事業やM&A事業などにも力を入れていく予定です。
ーークライアントへの支援領域については、どのようにお考えでしょうか。
佐藤駿介:
私たちは「デジタルの町医者」として、SNSや広告だけでなく、採用、営業、ブランディングなど経営課題全般を相談できる存在でありたいと考えています。一部のSNS運用や広告運用にとどまらず、より上流の経営課題から入り込み、デジタル戦略全般をご支援する体制を強化していきます。当社は施策の実行や成果を出す部分には強い自信を持っていますが、今後はその価値をお客様に正しく提案し、クロージングまで担える優秀な営業人材の中途採用などにも注力していく考えです。
誠実さを貫き 次世代の起業家へバトンをつなぐ
ーー会社を経営される上で、大切にしている信念は何ですか。
佐藤駿介:
何よりも「誠実であること」です。創業以来、お客様とは常に真摯に向き合ってきました。こうした考えを持てたのは、起業初期に素晴らしい先輩経営者の方々から多くのご支援をいただいたおかげです。だからこそ今度は恩送りとして、次世代の学生起業家を支援できる経営者でありたいと強く思っています。社内でも、意欲ある若手に予算を預けて自ら事業を立ち上げる環境を提供しています。
ーー最後に、若手のビジネスパーソンへ向けたメッセージをいただけますでしょうか。
佐藤駿介:
「与えられた環境を正解にする」という覚悟を持っていただきたいです。上には上がいるため、他人と比較して悩む必要はありません。まずは自分のいる場所で圧倒的な成果を出すこと。そして、やらずに後悔するくらいなら、まずは挑戦してみる行動力を大切にしてほしいと思います。
編集後記
挫折をバネに自らの道を切り拓いてきた佐藤氏の言葉には、経験に裏打ちされた確かな重みがあった。あらゆる企業の「デジタル右腕」として、マーケティング戦略上流から実行支援までを担い、クライアントの自走を後押しする同社の姿勢は、業界の常識を覆すものだ。今後は「与え合う」という理念に共感する人材の採用を強化し、さらなる組織拡大を目指している。ITやデジタルの枠にとどまらず、社会の課題に正面から向き合い、事業のフィールドを無限に広げていく同社のこれからの展開に期待したい。

佐藤駿介/1997年生まれ、愛知県名古屋市出身。法政大学法学部在籍中の大学2年次に株式会社Epaceを創業。創業以来、芸能人や上場企業から中小企業まで幅広い業界のデジタルマーケティング支援を手掛け、戦略設計から実行、内製化支援まで一気通貫で伴走。現在はマーケティング支援事業に加え、飲食事業、ネイルサロン事業、インテリア事業など複数の自社事業を展開。グループ全体で「良いペースで働ける人を増やす」をミッションに掲げ、マーケティング支援だけでなく、自社事業創出や若手人材の挑戦機会創出にも取り組んでいる。