※本ページ内の情報は2026年7月時点のものです。

1887年の創業から139年の歴史を持ち、 日本の酪農と観光を支えてきた株式会社秋葉牧場ホールディングス。近年は「全国穴掘り大会」などのユニークなイベントで話題を呼ぶだけでなく、ドローンやAIを活用した最新技術の導入、さらにはインドでの酪農支援プロジェクトなど、多角的な挑戦を続けている。異業種での経験を経て家業へ身を投じた代表取締役社長の秋葉秀威氏に、組織づくりの信念や時代に合わせて変化を恐れない未来への展望について、話をうかがった。

失敗から逆算したキャリア形成と組織の根幹となる「3つのルール」

ーーまずは、ご経歴についてお聞かせください。

秋葉秀威:
印刷会社での新規営業、テーマパークでの経理、その後、英国バーミンガム大学ビジネススクールで経営学修士(MBA)を取得しました。さらに、スイスやシンガポールでの海外ホテルでの実務経験と、さまざまな環境に身を置いてきました。そうしたキャリアを歩んだのは、学生時代に進路を考えた際、経営に失敗した社長たちの記事を読み込んだのがきっかけです。失敗の理由として「経理の知識がなかった」「営業経験がなかった」といったキーワードが挙げられており、経営には営業力、経理の知識、そして英語が必要だと逆算しました。印刷会社では飛び込みの新規営業でトップの成績を収め、テーマパークでは利益構造や係数管理を徹底的に学びました。

ーー組織づくりやマネジメントにおいて大切にされていることは何ですか。

秋葉秀威:
私自身の性格にも通じますが、社長に就任した際、従業員に伝えたのは「嘘をつかない」「言い訳をしない」「誠実である」という3つのルールです。嘘をつくと、そのプレッシャーから逃れるためにまた嘘をつかなければならなくなります。会社としてそんな思いはさせたくないですし、事実をごまかさず誠実であれば、コミュニケーションは必ずうまくいくのです。また、私自身も相手の年代や立場によって態度を変えず、飾らない距離感で接することを軸にしています。

現場のアイデアが爆発 プロが輝く「穴掘り大会」と大ヒット商品

ーー貴社のユニークな企画がSNS等で話題を集めていますがどのような背景がありますか。

秋葉秀威:
「全国穴掘り大会」は、今では300チーム、約2000人が集まる一大イベントに成長しました。制限時間内にどれだけ深く穴を掘れるかを競うのですが、ガス会社や造園業など、普段は裏方として活躍するプロフェッショナルたちが本気で挑む姿が熱狂を生み、見事なコンテンツ化に成功しています。他社がやらないニッチな領域に光が当たり、参加した企業のお父さんたちが家族の前で輝ける、非常に良いイベントになっています。

ーー商品開発はどのように進められているのでしょうか。

秋葉秀威:
商品開発も、現場からの発信を大切にしています。たとえば、刺激的なネーミングで大ヒットし、大きな反響を呼んだパンも、現場のスタッフが自ら企画・考案したものです。

会社として私たちが提供するのは、人と人をつなぐプラットフォームであり、お客様の目的を上手くアレンジして提供する場づくりだと考えています。現場からのアイデアを柔軟に形にし、お客様に心から楽しんでもらうことを第一にしています。

時代に合わせて進化する139年のDNA最新技術とインド展開

ーー今後の展望や注力されているテーマについてお聞かせください。

秋葉秀威:
現在はDXの推進とテクノロジーの活用、そして海外展開に強く注力しています。牧場経営に新しい技術を取り入れることには非常に積極的で、たとえば、繁忙時の観光牧場駐車場における空車スペースの数や位置の確認は、これまで人の目視で行っていましたが、時間と労力ともに非効率でした。そこで、本年からドローンによる空撮を試験導入したところ、効率の向上が認められました。今後は多用途における本格導入も検討しています。さらに、AI分析を活用したバックオフィスから営業までの一貫したDXシステムも導入している最中です。

ーー海外展開とは具体的にどのようなプロジェクトですか。

秋葉秀威:
現在は、グローバルサウスであるインドにおいて推進中の農民支援と、乳製品の製造・販売プロジェクトに注力しています。インドは乳製品の消費大国ですが、ヒンドゥー教の影響で牛が神聖視されている一方で、農村部にはカーストによる格差や貧困という深刻な課題が存在しています。

そこで、私たちが培ってきた酪農のノウハウを活用し、現地の生産性を高め、工場を建設して乳製品を流通させる仕組みを構築しています。経済産業省の補助金なども活用しながら、事業としてしっかりと形になってきたところです。139年の歴史と変革のDNAがあるからこそ、時代に合わせて変化を恐れず、常に新しいものを取り入れて進化し続けることができます。それこそが、長く愛され続けるための私たちの生存戦略です。

編集後記

「時代が変わっても、向き合っている生き物は変わらない」という秋葉氏の言葉が非常に印象的だった。139年の歴史を持つ「老舗」という看板に甘んじることなく、ドローンやAIといった最新テクノロジーの導入、そしてインドでの壮大なプロジェクトなど、次々と新たな一手を打つその姿勢は驚くほどアグレッシブだ。現場の声を大切にし、誠実さを貫く同社が、今後どのようなワクワクする「場づくり」で私たちを楽しませてくれるのか。その果敢な挑戦から目が離せない。

秋葉秀威/1981年生まれ、千葉県出身。成蹊大学経済学部卒業後、大日本印刷株式会社に入社し、営業職を経験。株式会社オリエンタルランドにて経理職を経験後、英国Birmingham Business SchoolでMBAを取得。海外ホテルでの実務を経て、2013年株式会社秋葉牧場に入社。2020年12月、株式会社秋葉牧場ホールディングス代表取締役社長に就任。