
電子機器などの受託設計開発を手掛ける株式会社スタッフ。同社は回路やソフトウェアから試作までを一貫して請け負う開発スタイルを強みに、これまで大手メーカーから厚い信頼を獲得してきた。コロナ禍を機にリモート営業や勤務環境を整備し、現在は本社のある大阪をはじめ、東京、名古屋、沖縄に拠点を置く。20代の人材が豊富にそろう沖縄オフィスでは、とりわけ採用と育成に注力しているという。創業の原点から未来の組織づくりまで同社の代表取締役、小山栄一氏に真意を聞いた。
リモコン送信機の開発から学んだ、一貫した設計スキルの重要性
ーーまずは、これまでのご経歴を教えていただけますか。
小山栄一:
高校を卒業後、新卒でシャープの技術部に配属されたことが現在の幅広い設計経験の土台になっています。シャープに入社後は、同期の多くが生産部や品質管理に配属される中、開発を志望していた私だけが技術部に配属され、そこで普及し始めて間もないリモコン送信機の開発などを担当しました。
シャープで得た最大の財産は開発工程をゼロから任せていただいたことです。機器内部のプリント基板のベースとなる回路設計と、ソフトウェア設計の両方を担当させてもらえました。双方を任せてもらえる環境は珍しく、この経験が現在の事業の大きな強みにつながっています。
「私がやります」から始まったワンストップ開発の強み
ーー現在の事業内容について詳しく教えてください。
小山栄一:
現在は電子機器などの受託設計開発を行っています。具体的には、製品の外側となる「機構・筐体設計」、内部のプリント基板のベースとなる「回路設計」、そして「ソフトウェア設計」に至るまで、製品化に必要な開発工程をトータルで手掛けています。お取引先も幅広く、家電メーカー様をはじめ、自動車メーカー、精密機械、医療機器、さらには建設機械関連まで、多岐にわたる業界のお客様からご依頼をいただいております。
ーーその中で、貴社の強みはどこにあるとお考えですか。
小山栄一:
最大の強みは、製品開発を「丸ごとワンストップでお受けできること」です。お客様が開発を依頼する際には、機構・筐体設計はA社、回路設計はB社、そしてソフトウェアはC社と分けて発注することが一般的です。しかし弊社にお声がけいただければ、すべてを一括で開発し商品化まで進めることができます。
創業当初は私一人で回路設計やソフトウェア設計を行っていましたが、お客様が機構設計の発注先探しに困っている姿を見て、「私がやります」と引き受け、協力会社を探して自分が窓口となったことが始まりでした。徐々に社内にさまざまな専門性を持つ技術者を集めていきました。「このように全工程を引き受けたらお客様は喜んでくれるはずだ」という思いが、現在の強みへと広がったのです。
思い切った拠点展開が広げた横展開というビジネスチャンス

ーーその後、貴社にとって転機となった出来事をお聞かせください。
小山栄一:
オフィスを梅田へと移したことが大きな転機になりました。以前は特定の家電メーカー様への依存度が高く、家電不況を機に危機感を抱いての決断でしたが、交通の便が良くなったことで、自動車や精密機械、医療機器など西日本の大手企業様との新規取引が次々と始まったのです。そこからの拡大においては、既存のお客様から別事業部をご紹介いただくケースが非常に多くなりましたね。
一般的に新規の口座開設はハードルが高いものですが、一度お取引が始まると、私たちのワンストップで幅広い対応力や、分野ごとの高い専門性が評価されます。「これだけできるなら、あっちの事業部も紹介しよう」と繋げていただける強みが、さらなる成長の原動力になっています。
ーーコロナ禍を経て営業体制や働き方に変化はありましたか。
小山栄一:
リモート営業や勤務環境の整備が大きく進みました。Webでの商談が定着したことで営業担当者が必ずしも現場へ出向く必要がなくなりました。働き方についても、社内だけでなく自宅でも業務を遂行できる環境を整えています。台風などのときも無理に出社する必要はなく、どこでも仕事ができる柔軟な組織へとシフトしました。
沖縄から未来の技術者を育てる新たな組織づくり
ーー今後の組織づくりや拠点展開について、どのような展望をお持ちですか。
小山栄一:
現在、新たな試みとして沖縄での採用と育成に注力しています。都市部では競合が多く、中小企業が新卒の技術者を採用するのは非常に難しい現状がありますが、沖縄には優秀な若手の人材が豊富にいます。そこで沖縄にオフィスを設け、大阪や東京と同じ給与水準で現地の人材を採用し、技術者として育成するプロジェクトを始めました。
現在は中途採用のメンバーが中心となり、SNSを活用した広報活動や学校回りを行っています。数年後にはこの沖縄拠点で設計開発から製造までを一貫して行える組織を構築したいと考えているのです。また、時間をかけて技術者を育てることが第一歩ですが、同時にUターン人材の獲得も目指しています。技術を志して本土の大手メーカーに入った人でも「地元に戻りたい」と考える沖縄出身の経験者が弊社に加わってくれれば、地元の企業を巻き込み、さらに高度なものづくりが可能になると信じています。
ーー最後に、貴社が求める人物像について教えていただけますか。
小山栄一:
柔軟な思考とお客様目線のサービス精神を持つ方です。私たちの仕事は自社製品を売るのではなく、お客様の要望を形にする開発です。家電製品や医療機器など、幅広い案件が並行して進む環境であるため、一つの製品に固執せず頭を切り替えられる方が合っています。何より重要なのは、現状維持ではなくチャレンジ精神を持っているかという点です。技術力も大切ですが、お客様と円滑にコミュニケーションがとれることが不可欠です。サービス精神を持つ方とともに、これからの新しい開発に取り組んでいきたいと考えています。
編集後記
開発を複数社に分割する手間を省き、すべてを社内で完結させるワンストップ開発。小山社長が語る原点は純粋に「どうすればお客様が喜ぶか」を突き詰めた結果である。思い切ったオフィス移転による新規開拓や別事業部への軽やかな横展開なども強みだ。同社の成長の背景には常に柔軟な決断がある。次なる舞台として沖縄での人材育成と製造組織の構築に挑む姿からは技術と人を大切にする姿勢がうかがえる。時代に合わせて変化し続けるベンチャーマインドが感じられる同社。今後の飛躍が楽しみだ。

小山栄一/1961年、福岡県生まれ。1980年、大阪府立西野田工科高等学校電気科卒業。同年、シャープ株式会社に入社し技術部に配属。1988年、有限会社スタッフ設立(後に株式会社に変更)。オープンイノベーションによる新製品開発に注力。