※本ページ内の情報は2026年10月時点のものです。

設立25年を迎え、セラミックスやガラスといった「難削材」の精密加工において圧倒的な技術力を誇る株式会社トップ精工。他社が敬遠する素材をミクロン単位で加工する技術は、いまや世界の半導体産業に不可欠な存在となっている。2025年に、創業者からバトンを受け継ぎ、30代半ばという若さで同社の代表に就任した中川翔太氏。文系出身ながら現場で泥臭く技術を学び、独自の営業スタイルを確立してきた中川氏が掲げる「第二創業期」のビジョンとは。次世代の成長エンジンとなる新技術や、自律型組織への変革にかける熱い思いに迫る。

文系から未知の領域へ 製造現場で培った「スピード感」が営業の武器に

ーーまずは、貴社に入社された経緯についてお聞かせいただけますか。

中川翔太:
昔から「人とは違うこと、異なることをしたい」という考えがありました。そんな背景から、就職活動でも自分が今まで関わってこなかった未知の領域に飛び込み、自分の可能性を広げて成長したいと考えたのです。また、大学時代を過ごした滋賀県に貢献したいという思いもあり、「未知への挑戦」を掲げて全くの畑違いである弊社への入社を決めました。

ーー入社後はどのような部署に配属されたのですか。

中川翔太:
ゆくゆくは営業に携わりたいという気持ちもありましたが、ものづくりの会社である以上、自社の技術を知らずに営業はできません。最初の1年半は製造現場に立ち、マシニングセンタなどの工作機械を扱いました。製造現場ではオペレータとして図面から実際に部品を作り上げる作業を経験し、営業部門へ配属された際には大いに活かすことができたと思っています。

私たちの商談相手は、半導体製造装置を開発している技術者の方が大多数です。そのため商談の場では、「この素材でこんな形はできるか」といった専門的な質問が飛び交います。その際、製造現場での経験があったからこそ、「ここは加工上難しいので、こういう形状にしてはどうですか」と即座に代替案を提示し、仕様の交渉をスムーズに進めることができました。持ち帰って確認するのではなく、即座にレスポンスを返すスピード感は重要です。そのスピード感がお客様の信頼獲得に大きく繋がったと感じています。

30代半ばでの社長抜擢と「第二創業期」を牽引する覚悟

ーーその後、社長に抜擢された当時の心境はいかがでしたか。

中川翔太:
営業を7年半ほど経験し、30代半ばでの打診だったため、まさに青天の霹靂でした。以前から創業者には「将来的には会社の核になってほしい」と言われていましたが、まさかこのタイミングで任されるとは思っていませんでした。私自身も驚きましたし、取引先の方々にも大変驚かれました。

抜擢の理由に、創業者から「決断の速さと判断軸が似ている」と信頼してもらえたことがあります。経営においてスピード感は非常に重要です。弊社は設立25年を迎え「第二創業期」という大きなフェーズに入ろうとしていました。既存の精密加工事業に加えて新技術の拡大を目指すタイミングだったのです。この先の変革の道のりをリードしていくためには、若い人間がいいと判断されたのだと思います。自分がどこまでできるか葛藤もありましたが、「人生を懸けて変革に挑む」と腹を括りました。

「できないと言わない」プライドと次世代の成長エンジン「熱拡散接合」

ーー改めて、貴社の事業の強みについて教えてください。

中川翔太:
一般的に加工が難しいとされる「難削材」の精密加工に特化している点です。セラミックスやガラス、高融点金属などを扱っています。ミクロン単位の高い再現性があり、どの材質でも対応できるのが最大の強みです。

弊社はお客様から言われた通りに加工するだけの単なる受託業務には留まりません。使用環境をヒアリングし、材料の特性を見た上で最適な材質を提案します。加工の観点から素材や形状の逆提案を行うなど、開発段階から入り込むソリューション力を得意としているのです。他社に断られた案件でも「できない」とは簡単に言わず、どうすれば形にできるかを考え抜きます。これが私たちの技術者としてのプライドです。

ーー貴社の特徴的な技術について聞かせていただけますか。

中川翔太:
新たな成長エンジンとして「熱拡散接合」という技術があります。接着剤などの「中間材」を一切使わず、熱と圧力のエネルギーのみで素材同士を接合する固有技術の応用による新たな価値の創出です。半導体の製造プロセスでは、微細化や高性能化が進むにつれて不純物の問題や、耐熱性等の素材物性が重要と考えます。弊社の熱拡散接合は中間材を介さずに弊社で取り扱いのある脆性材を直接接合できるため、この業界のニーズに完全に合致するのではないかと考えます。長年の研究開発を経てデータが揃い、対外的にPRしていく中で、国内外の大手製造装置メーカー様から高い関心を寄せていただけるようになりました。

トップダウンからの脱却 全員が「自分ごと」として考える自律型組織へ

ーー会社をさらに大きくしていく上で、どのような組織づくりを目指していますか。

中川翔太:
これまでは創業者の強力なリーダーシップで会社が成長してきました。しかし将来的に従業員数300人、500人という規模を見据えた時、今のままでは厳しい局面を迎えることを想定しています。そのため、社員一人ひとりが会社の方向性を理解することが必要です。「自分ごと」で考えて自発的に動ける組織への変革を進めています。たとえば営業部門では、新規顧客へのアプローチ手法を仕組み化しました。これまで個人の力量に依存していましたが、誰でも成果を出せる体制づくりに着手しています。また、次世代リーダーの育成にも注力しており、自ら考え意見を発信できる組織の核となるような人材の採用や教育を積極的に推進しています。

ーー従業員への働きかけは具体的にどのようなものでしょうか。

中川翔太:
金銭以外の「報酬」をとても大切にしています。日常の些細なことでも感謝の言葉をかけるようにしています。社員からの意見に対しても、必ず何らかのフィードバックを返します。こうしたコミュニケーションがモチベーションに直結するからです。

また、若い世代の仲間意識を尊重し、若手主導の野球チームの活動なども応援しています。そうした日々のつながりの中で、自分たちの仕事の意義と誇りを全員で共有できるように努めています。自分たちの仕事が「全人類の幸福」や「世界中の人々の日常生活」に直結していると思える組織にしていきたいですね。

編集後記

未知の領域に臆せず飛び込み、現場で培った知見を武器に道を切り拓いてきた中川社長。「できないと言わない」という言葉の裏には、技術に対する並々ならぬ自信が感じられた。そして、それを支える職人たちへの深いリスペクトが伝わってきた。強力なリーダーシップ体制から、社員一人ひとりが主役となれるような自律型組織との融合を目指している。この難易度の高い組織変革を成し遂げた先で、同社はさらなる存在感を放つだろう。世界の半導体産業における同社の「第二創業期」の歩みから目が離せない。

中川翔太/1991年生まれ。三重県出身。滋賀県立大学卒業。2016年に株式会社トップ精工へ入社し1年半、製造現場で機械オペレータに従事。その後7年半ほど営業職を経験。2025年6月に代表取締役社長に就任。