※本ページ内の情報は2026年8月時点のものです。

20代で建設現場での現場監督の経験をもつ株式会社ユーポスの代表取締役、柏原隆宏氏。同氏はライフイベントを機に、家業が属する自動車業界へと未経験から飛び込んだ。現場での厳しい指導を経て、半年で店長などを経験したのちトップへと就任。リーマン・ショックの試練を社員とともに乗り越えた。現在掲げるのは「CS(顧客満足)・ES(従業員満足)・社会貢献」と「100年ブランドへの挑戦」だ。Web集客が主流の現代に、同社があえて店舗での対面の挨拶や査定力にこだわる理由とは何か。同氏が歩んだ軌跡と、業界の未来を見据えた組織改革の全貌に迫る。

建設現場で学んだ段取りと家業でのゼロからのスタート

ーーまずは、ファーストキャリアについて教えていただけますか。

柏原隆宏:
20代の頃は、建設現場で現場監督を9年間行っていました。携わっていたのは小さな現場でしたが、そこで学んだ関係構築と段取りの重要性が今の仕事の土台になっています。現場には年上の職人が多く、20代の私が頭ごなしに指示を出してもついてきてくれません。そこで、監督として目上の方々に気持ちよく動いていただくための関係構築と段取りを身につけることができたと思います。

ーーその後、自動車業界に進むことになった経緯をお聞かせいただけますか。

柏原隆宏:
ユーポスの親会社にあたる株式会社ロードカーが家業なのですが、当初私は継ぐつもりはありませんでした。しかし、結婚などのライフイベントを控えていたとき、当時の本部長に声をかけられたのです。それがきっかけでロードカーに入社することとなり、この業界に足を踏み入れました。

入社して最初はユーポスの買取現場に配属され、洗車業務から始まりました。社長の息子だからといって特別扱いされることもなく、現場で厳しく指導をしていただいたことで、現在の基盤ができたと思っています。

ーー全く異なる業界でのキャリアをスタートさせ、得た気づきはありましたか。

柏原隆宏:
当初は接客の基礎や言葉遣いについて、非常に厳しい指導を受けていました。ただ、当時の上司からの「とりあえず笑っていたらいい」という教えには救われましたね。笑顔で接していれば、お客様も嫌な気はしません。クレームの際も笑顔で対応することで、最終的になんとかなることもありました。

私たちは車を買い取って利益を出している立場ですが、お客様に喜んでいただくことを第一に取り組むうちに、やりがいを感じるようになりました。時には手土産をいただくこともあり、お客様からの信頼を勝ち取り「あなただから売るよ」と言っていただけることが何よりの醍醐味です。

リーマン・ショックの試練と社長宣言に込めた思い

ーー家業に入社されてからの、具体的な歩みを教えてください。

柏原隆宏:
現場での経験を積んだ後、わずか半年で店長に抜擢され、その後、新拠点である東京ユーポスの代表を任されました。しかし、立ち上げた2009年はリーマン・ショックの影響で厳しい試練に直面します。東京で他社の経営者たちと交流する機会が増え、視野が広がっていた矢先の出来事でした。買い取った車をオークションに出品しようとしたタイミングで相場が暴落し、いきなり大きな赤字からのスタートを余儀なくされたのです。

さらに、当時の東京では知名度が低かったことも大きな壁となりました。それでも、現場の社員たちと一丸となって改善を重ねた結果、この危機を無事に乗り越えることができました。

ーー社長に就任された際、トップとしてどのようなビジョンを掲げましたか。

柏原隆宏:
私は2010年にロードカー、2013年にユーポスの社長に就任しましたが、その際に「CS(顧客満足)・ES(従業員満足)・社会貢献」という社長宣言を出しました。本質的なCSを提供するためには、まず社員が満足し、やりがいをもてなければなりません。

実は昔、「車屋さん」という職業に対して少しコンプレックスをもっていた時期がありました。しかし、本業を通じてお客様に喜んでいただき、真面目に収益を上げて税金を払うことや店の前を掃除して地域の方に挨拶をすることなど、これらすべてが立派な社会貢献だと気づきました。そして、働いている社員が満足してやりがいをもてるように、本業の中で役に立てたらと前向きに考えることで、自信を取り戻したのです。「100年ブランドへの挑戦」というビジョンも掲げ、持続可能なブランドを目指しています。

Web全盛期に店舗と査定力で勝負する理由

ーー現在、貴社が事業において強みとしていることは何でしょうか。

柏原隆宏:
Web集客が主流となる中、私たちはあえて店舗への「来店」に力を入れています。全店舗できちんとした挨拶を徹底し、活気ある店づくりを行うことで、車を売る場所としてだけでなく、地域の相談窓口として根付くことを目指しています。

また、「査定力」も大きな強みですね。初級から上級まで査定研修に注力し、事故車の見落としによる損失を防ぐ体制を構築しています。その上で、買取業特有の「勝負買い」を行うことが、お客様の納得と信頼につながるのです。現場のスタッフが査定額に迷った場合でも、本部の専門部隊(プライシングチーム)へ車の写真を送ることで、「この装備なら価値が上がる」といった具体的なアドバイスを受けられるサポート体制も整っています。

ーー現在活躍されている方の特徴と、今後求める人物像について教えてください。

柏原隆宏:
弊社は決まった商品を販売するわけではないため、現場のスタッフが営業代理の役割を担う側面があります。そのため、現在は体育会系の気合いや根性をもった社員が多く活躍しているのが現状です。もちろんそうした熱意は大歓迎ですが、これからは異なる感覚をもった方々の新しい発想も積極的に取り入れていきたいと考えています。現場のリアルな声やお客様が求めるものをすくい上げ、共にこれからの新しい店づくりに挑戦してくれる方にぜひ入社してほしいですね。

本部の強化と次世代とともにつくる未来

ーー今後の事業展開や、組織づくりに関する展望をお聞かせください。

柏原隆宏:
現在はFC加盟店を含めて90店舗ほどを展開していますが、まずは100店舗を目標に据えています。そしてFCを含めて現在約5万台の買取台数を、3年後には倍の10万台規模にまで引き上げていく考えです。そのためには何よりも人材が欠かせません。今期は「強い本部」をつくることをスローガンに掲げました。部署間の縦割りをなくして協力し合う組織づくりを進め、採用の強化に加え、今いる人員での生産性向上にも取り組みます。買い取りだけでなく販売や整備といった領域も広げ、お客様との接点をさらに強固なものにしていきたいですね。

ーー最後に、共に働く未来の仲間へメッセージをお願いします。

柏原隆宏:
経営陣の固定観念だけで店づくりをしては、お客様が本当に求めるものからずれてしまいます。だからこそ、20代の人たちには現場のリアルな声やお客様の要望をどんどん上げていただきたいです。年齢や経験に関わらず、新しい視点を積極的に取り入れていきたいと考えているので、どんな些細な気づきでも遠慮なく発信してください。一緒にお客様に喜ばれる会社をつくっていける方をお待ちしています。

編集後記

かつて抱いていた業界へのコンプレックスを払拭し、本業を通じた社会貢献に真っ直ぐに向き合う柏原社長の言葉には、確かな覚悟と体温が宿っていた。どん底の危機を社員とともに這い上がった経験こそが、「ESなくして本質的なCSは生まれない」という信念の強さを裏付けている。「100年続くブランド」の実現に向け、効率化の波の中でも、人と人とのつながりや現場の活気を何より大切にする姿勢に深く共感した。新しい世代の声を力に変え、業界にどのような革新をもたらしていくのか、同社のこれからの飛躍が楽しみでならない。

柏原隆宏/1972年、大阪府泉佐野市出身。建設会社勤務を経て、2003年5月に株式会社ロードカーへ入社。祖父の代から続く自動車関連企業で現場経験を積み、経営にも参画。2009年9月に株式会社東京ユーポス代表取締役、2010年6月に株式会社ロードカー代表取締役、2013年5月に株式会社ユーポス代表取締役に就任。