※本ページ内の情報は2026年9月時点のものです。

世界基準の教育プログラムであり、世界中の大学への入学資格が得られる「国際バカロレア(IB)」。株式会社Linksenpaiの代表取締役である吉田志織氏は、この過酷なカリキュラムに挑む中高生を支援するため、完全オンラインの個別指導塾「IBアカデミー」を大学在学中に創業した。自身もIB生として情報の少なさに苦労した経験から、「かつての自分が欲しかったサービス」を形にすべく起業。講師全員がIB修了生という体制のもと、学習面だけでなく生徒の人生に伴走する手厚いサポートを提供し、創業わずか2年で急成長を遂げている。現在は安定した集客基盤を確立し、海外留学支援などさらなる多角化戦略へと歩みを進める同社。日本のグローバル教育を牽引する20代の起業家に、事業にかける信念と次なる一手についてうかがった。

孤独なIB生時代の原体験とリスクをとる決断

ーーまずは、起業を決意された背景とその原体験についてお聞かせください。

吉田志織:
起業の原点は、私自身が国際バカロレアの資格取得に挑んでいたことにあります。当時は情報が非常に少なく、わからないことはぶっつけ本番で乗り切るしかありませんでした。その過酷な経験から、「実際に体験した先輩から直接話を聞きたい」と痛切に感じていたのです。そこで、このニーズは確実にあると確信し、「当時の私がほしかったサポート」を形にするため、大学3年のときに起業を決意しました。

ーー事業を拡大していく上でターニングポイントとなった出来事は何でしたか。

吉田志織:
2年ほど前に出会った、同じく学生起業をしている先輩起業家との出会いです。創業初期は私一人で生徒への指導から動画編集、営業までこなす多忙な日々を送っていました。当時は実績も十分に出ず、就職活動と起業の間で思い悩んでいた時期でもあります。そのような状況下で、その先輩から休学して事業に専念することを勧められました。親からは起業にも休学にも猛反対されていましたが、先輩の言葉が後押しとなり、休学して事業にフルコミットする決断ができたのです。私一人ではなかなか取れなかったリスクを取る力を与えてもらったと感じています。さらに、視座の高い起業家仲間が集まるコミュニティに入れたことで、現状に満足せず上を目指す意識が芽生え、結果として短期間での事業成長につながりました。

ーー現在、経営において大切にしている信念をお聞かせください。

吉田志織:
「常に変化し続ける人であり、会社でもありたい」という思いです。人生は一度きりだからこそ、その限られた時間をどれだけ色濃く充実させられるかが重要です。私自身、できるだけ多くの体験や挑戦を重ね、自分が生きたことで社会に何らかの良い変化をもたらしたいと考えています。そして、この個人の人生観はそのまま会社の在り方にも重なるものです。

私たちが運営する塾に通う小中高生の時期は、その後の人生観が大きく形成される大切なタイミングです。だからこそ、単に問題の解き方を教える場にとどまらず、生徒一人ひとりの人生観や将来の計画を一緒に考える時間を設け、そして関わる人々の人生に前向きな変化を起こせるような会社を目指しています。

全員がIB経験者 人生に伴走する「メンタリング」と品質管理

ーー貴社のサービスが持つ強みは何でしょうか。

吉田志織:
大きく分けて2つの特徴があります。

1つ目は、私自身を含む無料相談担当から200名を超える講師に至るまで、メンバー全員がIBの経験者という一貫した体制です。IBをより良くしたいという原体験を共有しているため、最も詳細な情報を提供できるという競合優位性につながっています。

2つ目は、手厚いサポート体制です。当塾では問題解説だけでなく、専用チャットを用いた365日体制の進捗管理を行っています。さらに、全塾生に対して毎週30分、あえて問題解説を一切行わない「メンタリング」の時間を設け、先輩である講師と一緒に中長期の進路決定や、大学進学に向けた自己分析を行うなど、人生をともに考えるサポートを提供しています。

ーー手厚いサポートを維持するための品質管理の仕組みについて教えてください。

吉田志織:
定期的な顧客インタビューや、毎月のアンケート等による高頻度なサービス改善を実施しています。例えば、過去のデータから生徒が離脱しやすい時期が「3・6・9ヶ月目」であることがわかりました。そこで、その1ヶ月前を意識したタイミングで全てのご家庭と必ず定期面談を実施しています。お困りごとが生じる前にこちらからアプローチし、事前予防として課題を解決する徹底した品質管理の体制を整えています。

認知度の強化と新規事業で挑む第二創業期

ーー集客の仕組みが確立した今、次なる戦略としてどのような展開を考えていますか。

吉田志織:
現在は検索流入や広告からの集客・営業の仕組みが確立し、入会率も60〜70%と市場のニーズを捉えた状態にあります。そのため、これからは広報やブランディングを通じた認知度と権威性の強化に先手を打っていきます。2027年春には、書籍の出版も予定しており、並行してインターナショナルスクールでの登壇や他社との協業も推進していく予定です。

ーー今後の新規事業の構想と、それを支える組織カルチャーについて教えてください。

吉田志織:
新規事業としては、今期中にSAT(※)に特化した「SATアカデミー」を立ち上げるなど、海外留学を見据えた事業を複数展開していく予定です。

こうした新規事業を連続して生み出せる背景には、弊社の「超フラット」な組織カルチャーがあります。部署ごとの特色はありつつも、基本的には代表の私と隣り合わせで、ゼロから事業をつくり上げていく環境です。事業をスピーディーに拡大するためには大胆な権限委譲が不可欠だと考えており、実際に新規事業の立ち上げやYouTubeマーケティングなどを、意欲あるメンバーに一任しています。大きな裁量権を持って主体的に取り組んでもらうことで、事業スピードが加速するだけでなく、メンバー自身の飛躍的なスキルアップにもつながっています。

(※)SAT:アメリカ合衆国の大学進学希望者を対象とした共通テスト。

ーー最後に、読者の方へのメッセージをお願いいたします。

吉田志織:
もし今、何かに挑戦したいと考えているなら、まずは行動することが大切です。そのために「すでに成功している人や挑戦している人10人に声をかけて話を聞くこと」をおすすめします。いきなり大きな行動を起こすのはハードルが高いかもしれません。しかし、15分や30分でも時間をもらって話を聞くことで、圧倒的に解像度が上がります。ここで重要なのは、1人ではなく「10人」に聞くことです。1人だけの意見だとどうしても偏りがちですが、他人の意見に広く耳を傾けることで見えてくるものがあります。まずは一歩を踏み出す行動力を大切にしてほしいと思います。

編集後記

自らが直面した情報の少なさという壁を打破すべく、当事者だからこそつくれるサービスを追求し続ける吉田氏。徹底したヒアリングとサービス改善、そして大胆な権限委譲を推進する姿勢は、彼女の強固な信念を体現している。広報ブランディングの強化と新規事業の多角化を進める同社が、今後の教育業界にどのような変化をもたらすのか、その飛躍が楽しみだ。

吉田志織/2002年、東京都生まれ。アメリカから帰国後、早稲田大学基幹理工学部に進学。大学3年時に株式会社Linksenpaiを創業し、IBアカデミー・SATアカデミーを運営。800名以上を支援し、海外に挑戦する日本人を増やすことで日本の国力向上を目指す。