
株式会社NTTデータという最先端の大手IT企業から、鹿児島のITベンチャーへの転身。株式会社現場サポートの代表取締役社長、吉田竜二氏は、2010年の入社から15年間にわたり建設現場の切実な実態と向き合いながら、属人的だった自社内業務の仕組み化を牽引してきた。2025年、同社のトップに就任した吉田氏が挑むのは、創業者が築いた「人を大事にする理念」を守るための、組織的な育成構造の抜本的な再構築である。人手不足に喘ぐ地方の建設業界において、SaaSとBPO(業務代行)の両輪で現場に「余裕」を生み出し続ける同社。地方から日本のインフラを支えるという壮大な展望と、事業の飛躍に向けた戦略に迫る。
NTTデータから鹿児島のベンチャーへ 大企業の常識を捨て現場に寄り添う
ーーまずは、貴社に入社されるまでの経緯をお聞かせください。
吉田竜二:
私はもともと、株式会社NTTデータで決済サービスの開発などに携わっていました。体調を崩したことを機に、地元の鹿児島へ帰郷したのです。現場サポートに入社した最大の理由は、当時の社長が語った理念への共感でした。面接で「働く人の幸せを第一に考え、社員の成長とともに事業を成長させていく」という言葉を聞き、当時の私の思いと強く重なったのです。実は私の父は建設業の一人親方でした。家業を継がないと決めて上京したものの、結果的に建設業界へ深く関わることになり、不思議な縁を感じています。
ーー大企業と中小企業とのギャップはどのように乗り越えられたのでしょうか。
吉田竜二:
現場の実態に即した考え方へ舵を切ることで乗り越えました。入社当初は、前職でのやり方をそのまま持ち込もうとしていたのです。しかし、整った仕組みがない中で無力感を覚えることもあり、それでは他社と渡り合えないと半年ほどで気づきました。そこから現場の泥臭いリアルと向き合い、15年かけて少しずつ社内のシステムを整備して、私が思い描いていた形へ近づけてきました。
SaaS×BPOのハイブリッド 圧倒的なサポートで「余裕」を生み出す
ーー貴社のビジネスモデルの強みについてお聞かせください。
吉田竜二:
ツールを売って終わりにせず、勉強会や手厚いフォローといった「人のサービス」まで入り込む伴走姿勢です。極端な人手不足に陥る地方の建設業界は「2024年問題」もあり、DXに取り組む余裕すらありません。だからこそ私たちが丁寧にサポートする姿勢を貫き、導入数は10万件を超え、国や自治体案件でも安心して使えるという信頼を獲得してきました。また、全顧客の声を資産化するCSデータベースを構築し、寄せられた改善要望を即座に開発へつなげる高速なPDCAサイクルも強みです。
ーーITツールだけでなく、BPO事業にも踏み込んだ理由を教えてください。
吉田竜二:
お客様に、変革へ向かうための物理的な「余裕」を生み出すためです。本来のコア業務に注力するには、まず深刻な人手不足を解消しなければなりません。そこで、周辺業務を私たちが代行して巻き取ります。SaaSとBPOの両輪がなければ、地方の建設業が抱える課題は本質的に解決できないと考えています。
「おかげさまと身から出た錆」理念を守り抜くために組織を再構築する

ーー新社長として、これから「守るもの」と「変えるもの」は何だとお考えですか。
吉田竜二:
変えないのは、創業者が築いた「人を大事にする理念」です。逆に変えるべきは、社員に対する属人的な育成から脱却し、組織的な育成制度を再構築することです。組織規模が拡大し業務が細分化する中で、これまでの暗黙知や個人の熱量だけに頼ることはできません。大切な理念を次世代へ残すためにも、強固な仕組みへ昇華させる必要があります。具体的には人事評価や教育の制度を明文化し、今の時代に合わせてアップデートしています。
ーー経営トップとして大切にされている価値観は何ですか。
吉田竜二:
「おかげさまと身から出た錆」です。周囲の支えがあってこそ今の私があるという謙虚さを忘れず、成功を過信しません。一方で失敗は自責と捉え、自分自身を戒めています。最大のミッションは一代目が築き上げた会社をさらに成長させ、永続させるための仕組みを次世代へ引き継ぐことです。
「建設業界のハブ」を目指して業界を牽引する専門人材への期待
ーー建設業界の未来に向けて、どのようなビジョンを描いていますか。
吉田竜二:
私たちは「建設業のお客様が10年後もいい仕事を残せる現場サポート」というビジョンを掲げています。ここには、お客様が蛇口をひねるように、当たり前のように必要なサービスを受けられるインフラのような存在になりたいという思いがあります。目指すのは「建設業界のハブ」のようなプラットフォームへの進化です。自社のサービスだけでなく、お客様が今必要とするサービスをすぐに導入できる環境を、パートナーとも協業しながら構築していきたいと考えています。2030年には現在の約2倍となる売上高40億円規模への成長を見据え、行政のマクロな動向を先取りしながらプロダクトへ落とし込んでいきます。
ーー最後に、今後の事業展開において、どのような人材を求めていますか。
吉田竜二:
他業界での知見を持ち込み、私たちの成長スピードを飛躍的に引き上げてくれる方を探しています。SaaSの開発やBPO事業の構築など、すでに他社で経験を積まれた方が仲間に加わることで、お客様の役に立てるまでの時間を大幅に短縮できます。現在、専門職に合わせた人事評価や教育制度を刷新しており、本気の受け入れ態勢を整えているところです。地方から日本のインフラを支えるという社会的意義の大きな挑戦に、ともに取り組んでくれる方をお待ちしています。
編集後記
地方の建設業界は、日本のインフラを根底から支える重要な存在でありながら、深刻な人手不足という課題に直面している。その厳しい現実から逃げることなく、ITツールと人的な業務代行の両輪で寄り添う株式会社現場サポートの姿勢に、強い使命感を感じた。吉田氏の実直で謙虚な人柄と、先代の理念を守り抜くために組織構造を改革する覚悟は、同社がさらなる飛躍を遂げるための確固たる土台となるはずだ。「建設業界のハブ」という明確な目標に向かい、新たな人材とともに歩みを進める同社の未来に期待が高まる。

吉田竜二/1982年1月鹿児島県生まれ。筑波大学卒業後、2004年株式会社NTTデータに入社し決済関連サービスの開発・企画に従事。帰郷後2010年に株式会社現場サポート入社。常務・専務取締役を経て2025年8月に代表取締役社長に就任。「10年後も建設業のいい仕事を残せる現場サポート」というビジョンを掲げ、建設業向けクラウドサービスやBPOサービスを展開中。