
1998年の創業以来、和歌山、大阪、東京を拠点に、医療システムをはじめとする幅広い業種の受託開発や自社製品の展開を行う株式会社グローバー。代表取締役社長の新田井淳次氏は、入社以来、営業の第一線に立ち続け、自らの足で現在の会社の礎を築いた。2022年に社長に就任した後は、人事評価制度の抜本的な見直しや、認知症予防を目的とした新事業「テココロ」など、次々と新たな挑戦を続ける。「10年かけて次の世代にバトンを渡す基盤をつくる」と語る同氏に、これまでの歩みと未来への展望を聞いた。
和歌山から大阪へ朝から晩まで続けた飛び込み営業の日々
ーーまずは、貴社に入社した経緯を教えてください。
新田井淳次:
前代表から「一緒に会社をやらないか」と誘われたことがきっかけです。20代の頃は建築や接客業などさまざまな業種を経験し、28歳でシステム会社に営業として入社しました。そこで当時のシステム部長だった前代表と出会ったのです。弊社に合流した当初は社員がおらず、全員がフリーランスのような形態で、医療システムの受託開発からスタートしました。
ーー創業期からどのように販路を拡大していったのでしょうか。
新田井淳次:
和歌山から大阪へ毎日電車で通い、朝から晩まで飛び込み営業を続けました。そこから地道に人のつながりが生まれ、よく通っていた外部企業の社長から案件を紹介していただき、徐々にネットワークが広がったのです。やがては、現在上場しているような大手企業とも直接取引ができるようになりました。規模の違いを感じることもありましたが、決して「ノー」とは言わず、一つひとつ丁寧に向き合ってきた結果が今につながっています。
社長就任の決意と真っ先に取り組んだ「人事評価制度」の整備

ーー2022年の社長就任後、真っ先に取り組んだことは何ですか。
新田井淳次:
人事評価制度の抜本的な見直しです。従業員が納得感を持って働き、「どう頑張ればどのくらい稼げて、どのポジションに行けるのか」を見える化しなければ、人は定着しません。社員一人ひとりが将来のビジョンを描き、長く安心して働ける環境を整えることが、何よりも最優先だと考えたのです。
ーーIT事業とは異なる「テココロ」という新事業を始めた理由をお聞かせください。
新田井淳次:
厚生労働省との実証実験で得た「手を使うことが認知症予防につながる」という科学的根拠を世の中に広めたかったからです。もともと別の企業が主導していましたが、事業を終了するという話を聞き、引き継ぐことを決意しました。現在はイベントの開催や自治体との連携を進めながら、認知症という社会課題の解決に挑んでいます。まずは3年でしっかりと結果を出したいと考えています。
ーー現在展開されている、自社製品の取り組みについても教えてください。
新田井淳次:
他社と共同で展開している飲食店向けシステム「STESSO(ステッソ)」があります。これはスマートフォンなどから注文できるモバイルオーダーの仕組みで、全国の多くのお客様にご評価いただき、ご利用いただいております。導入時の初期設定や店舗への教育などは、連携先の外部企業が代行しており、弊社は裏側のシステム開発を担い、役割を分担しているのです。双方が提供元として表に出るとお客様が混乱するため、弊社のホームページには大きく記載していません。とはいえ、月額定額制のサービスとして、主に中小規模の店舗に広く普及しています。
10年後の未来へ 次世代にバトンをつなぐための基盤づくり
ーー今後の事業拡大に向けて、どのような人材を求めていますか。
新田井淳次:
お客様との打ち合わせなどを任せられる、上流工程のプロジェクトを牽引する人材の獲得が現在の課題です。新卒採用は毎年各拠点で数名ずつ行い、中途採用でも技術者を募集しています。案件のご相談は数多くいただいているため、プロジェクトマネージャー層の優秀な人材がいれば、事業をさらに拡大できると考えています。
ーー最後に、今後の展望をお聞かせいただけますか。
新田井淳次:
今後10年で「次の世代へバトンタッチするための基盤づくり」を行うことが現在の私のミッションです。そのために、M&Aによってシステム会社をグループに迎え入れることも積極的に検討しています。既存のお客様との関係をより強固なものに育てながら、AIなど新たな技術の波にもしっかりと乗る。そうやって一つひとつ丁寧に積み上げた基盤を、次の世代のリーダーにしっかりと引き継ぎたいと考えています。
編集後記
「Noと言わない」その言葉通り、どんな要望にも真摯に向き合う地道な営業姿勢が、同社の盤石な信頼を築き上げてきたのだろう。突然の社長就任という転機にあっても、会社の利益より先に社員の待遇改善へと着手する姿に、新田井氏の深い愛情とリーダーとしての覚悟を見た。社会課題の解決や技術の波を見据え、常に先へ走り続ける同社が、次の10年でどのような飛躍を遂げるのか非常に楽しみだ。

新田井淳次/2022年に株式会社グローバーの代表取締役社長に就任。現在に至る。