※本ページ内の情報は2026年10月時点のものです。

激変するIT業界を「楽観主義」と信念で生き抜いてきた創業者の田中真史氏。一方、外資系企業の個人戦を経験し、リスク管理を重んじるPM(プロジェクトマネージャー)出身の田邊浩一氏。正反対の経歴を持つ2人のトップが描くコントラストが、バルテス・ホールディングス株式会社の躍進の原動力となっている。社員の挑戦を後押しする風土の中で、入社4年でグループ会社であるバルテス株式会社の代表を担うことになった田邊氏と、日本の「品質のスタンダード」を築いてきた田中氏。AI時代に同社が仕掛けるプラットフォーム戦略と、人間が生み出す「チーム力」の真髄に迫る。

「不具合は後から直せばいい」 業界の風潮に抱いた危機感と創業の原点

ーーまずは、貴社を創業された背景について教えていただけますか。

田中真史:
弊社を創業した2004年当時は、業界全体に「不具合が起きても後から直せばいい」という風潮がありました。現在のようにシステム障害が大きく報道されることも少なく、品質への認識が甘い時代だったのです。そうした状況に強い危機感を抱き、「安心・安全なICT社会」の実現を掲げて弊社を立ち上げました。

同じ頃、世の中ではアナログからデジタルへのシフトが急速に進んでいました。組み込みソフトの規模が膨大化する中で、大きな転機となったのが携帯電話の普及です。当時の端末はネットワーク経由でのデータ修正ができず、不具合があれば基板ごと交換するしかありません。市場に不具合品が流出した際のコストが跳ね上がる時代へと突入していったわけです。

そのため、出荷前に徹底的なテストを行わなければ莫大なコストがかかると、業界内でも意識が高まり始めました。まさにテストの重要性が認識され始めたベストなタイミングでの創業となり、初期は毎年100%以上の成長を記録しました。

ーーリーマン・ショックなどの大きな危機はどのように乗り越えましたか。

田中真史:
私は根っからの「楽観主義者」であり、「事業を起こせばなんとかなる」と常に考えています。弊社創業前にも別の会社を経営していましたが、阪神・淡路大震災で工場が倒壊し、仕事が激減した経験があります。2000年のITバブル崩壊でサービス単価が急落した際も同様です。

リーマン・ショック時は日本の製造業が大打撃を受け、弊社も影響を受けました。しかし、取引先との関係性を大切にし、事業の方向性を少しずつシフトさせることで乗り切りました。さまざまな修羅場を経験したからこそ、「なんとかするしかない」という精神が染み付いているのです。

外資系の「個人戦」からバルテスの「チーム力」へ 入社4年で社長に就任

ーー田邊氏がグループに参画した決め手は何だったのでしょうか。

田邊浩一:
私は外部の企業でキャリアを重ねてきたのですが、2021年にグループの中核事業会社であるバルテス株式会社へジョインしました。入社の決め手は、地元である名古屋の拠点をゼロから立ち上げ直すという挑戦に惹かれたからです。これまでのキャリアで「品質」に特化した経験がなく、培ってきた能力を活かして新たな領域でイチから事業を生み出したいと考えました。

入社して最も魅力的だと感じたのは、会社の「横のつながり」の強さです。以前在籍していた企業は優秀な人材が集まっていましたが、個人主義的な傾向が強く、組織として協力し合う文化が希薄でした。その環境に疑問を感じていた私にとって、人と人がつながり、互いを支援し合いながらチームとして動く。そんなバルテスの文化は非常に素晴らしいものでした。

ーー入社からわずか4年でバルテス株式会社の社長に就任された背景をお聞かせください。

田邊浩一:
私はPMとしてリスク管理を徹底してきたため、物事を一旦は悲観的に見るタイプです。ですので、一番リスクがある状況を想定しながら田中会長と話をしました。その際、「『こんなことをやりたい』と希望も言わない奴には任せられない」と言われました。

「社員がやりたいと言ったことは、まずやらせてみる」というのが田中会長のスタンスです。田中会長は楽観主義者であり、指示されて失敗した際の言い訳を許しません。「自分からやりたいと手を挙げ、やってみて痛感しろ」という言葉に衝撃を受け、固いキャリアを歩んできた私にはない発想であり、深く刺さりました。バルテスの社長就任から1年ほど経ちますが、そのマインドを受け継ぎながら挑戦を続けています。

田中真史:
田邊社長の最大の強みは、メンバーを巻き込み、チームとして目的を達成する組織づくりの力です。彼がバルテス株式会社のトップに立ってから、社員が自発的にチャレンジするようになりました。かつては営業と技術の間に溝がありましたが、彼が別部署も含めて円滑なコミュニケーションを促してくれました。おかげで、組織全体がうまく回るようになったと感じています。

徹底した教育が裏付ける「品質のプラットフォーマー」という独自性

ーー貴社ならではの技術的な誇りや独自の強みはどこにあるとお考えですか。

田中真史:
独自の強みの一つは、「徹底した教育」です。新卒や中途の経験者を問わず、入社後に必ずバルテス独自の標準的なテスト手法を教育しています。経験者の過去のやり方を許容すると、組織の基準がばらばらになるためです。全員が「同じ言語」で語り合える深い専門性を共有しています。

もう一つは、「品質向上のプラットフォーマー」としての立ち位置です。テスト管理ツールやAIを活用したテスト設計ツールなどがあります。現在、ツールは開発しているものの、システムとしての統合には至っておりません。今後はこれらを統合し、プラットフォームとして提供できるよう推し進めている段階です。テスト工程を自動化・効率化する仕組みを提供できる点が私たちの強みです。

田邊浩一:
全員が同じやり方で仕事を進めるため、経験が分散せず、同じベクトルで専門性が積み上がります。職種を問わず、皆が高いレベルで活躍できる環境が整っていることこそが、最大の武器です。

「AI活用が前提となる」未来だからこそ高まる「人間」のマネジメント価値

ーー今後3年から5年の長期ビジョンにおいて、注力されるテーマは何ですか。

田中真史:
これからの時代は完全にAI活用が当たり前になり、ソフトウェア開発やテスト設計もAIが担うようになるでしょう。しかし、AIが生成したアウトプットが正しいかどうかの検証は、人間が行わなければなりません。AI出力の妥当性確認には課題があり、それに対して私たちは、AIが生成した最終成果物だけでなく、中間生成物も含めて確認し、品質保証の観点から妥当性を検証できるプロセスを整備しています。約20年間の実績の中で蓄積してきた品質保証の知見・ナレッジを活用し、プラットフォームを完成させます。この検証の仕組みをビジネス化し、市場を牽引していく考えです。

ーーそのビジョンを実現する上で、現在直面している壁は何でしょうか。

田中真史:
最大のハードルは、社員の「意識改革」です。AIの有用性を説いても、まだ危機感が十分に浸透していないため、会社として繰り返し伝え続ける必要があります。そのため、社内への浸透策に注力しています。昨年はAIやRPAを活用した業務効率化の取り組みを競うコンテストを実施し、社内表彰を行いました。また、教育部門が主導するAI活用講座は、現状では一部の社員のみが対象となっていますが、これからは全社員も受講できるように対象を広げ、組織全体の生産性の向上を図っていく予定です。

田邊浩一:
AI技術の進化に伴い、人の役割も変えていく必要があります。AIはあくまでツールであり、正しい理論を持って答えを確認できる人間の力が必要です。単純にAIに任せるのではなく、AIと人間の役割を切り分けます。プロジェクト全体を管理する「PM力」や「顧客とのコミュニケーション力」が求められます。AIに代替されない人間としての能力を発揮できる人材を育成することが、私たちの新たな課題です。

ーー組織の土台づくりや今後の展望として、新たに取り組んでいることはありますか。

田邊浩一:
これまで見えにくかったKPIなどの数値を「見える化」する取り組みに注力しています。事業計画をブラッシュアップして現場に展開し、「なぜ今これをすべきなのか」という背景を明確に説明できるようにしました。これにより、社員全員が同じビジョンを描いて仕事に取り組める土台が整ってきています。

田中真史:
今後の展望として、社内に設けた「エバンジェリスト認定試験制度」は、既に構築はなされており、現在は社内で取得の推進を図っている段階です。これは、自社の品質向上プラットフォームを使いこなし、その価値を世の中に広めていく伝道師を育てるためのものです。ゆくゆくはお客様にも私たちの認定資格を取得していただき、社会全体の品質向上に貢献していくことが究極的な目標です。

互いに高め合い、全員が束になって成長する文化

ーー現在、どのような職種の採用に注力し、どのような人物像を求めていますか。

田邊浩一:
現在は特に、PL(プロジェクトリーダー)・PMや営業職の採用を強化しているところです。PLやPMには、「品質を良くしていきたい」という強い熱意を持つ方を求めています。プロジェクト全体を動かしたいという志向の方も多く見受けられますが、弊社の領域は品質に特化しているため、そこに情熱を持てるかどうかが重要なポイントになってきます。

最初から即戦力を求めることは難しいため、社内での育成にも力を注いできました。自由受講型の社内講座を130超用意し、資格取得も手厚くサポートしています。品質に対する文化に共感いただける方であれば、着実に成長できる土壌が整っています。営業職に関しても、自ら提案書を書き、コンサル型で営業できる体制へと意識改革を進めている最中です。自律的に戦略を立てて動ける方には力を発揮しやすい環境といえます。

ーー貴社に入社することで、求職者はどのような「武器」を得られるとお考えですか。

田邊浩一:
品質について体系的に学ぶ機会は少なく、個人の経験則に依存している企業が多いのが実情です。しかし弊社には、品質を保つメソッドが教育体制として存在し、実践できる場があります。他社にはない「品質のベストプラクティス」を学び、実践できる環境があるのです。そこに身を置くことで、専門性の高いプロフェッショナルになれると確信しています。

ーー最後に、読者へメッセージをお願いします。

田邊浩一:
会社が急成長し、多様な背景を持つ方が入社する中で、私が最も守り抜きたいのは「和を大切にする」文化です。外部から来た方が過去のやり方を持ち込み、衝突することがあっても構いません。良い部分を取り入れてともに成長していく姿勢を重んじています。「互いに蹴落とし合うような組織には絶対にしない」と断言できます。弊社の理念の通り、皆で助け合い、全員が束になって成長する文化を大切にしているのです。この組織文化に共感し、一緒に品質基盤をつくっていける方とお会いできるのを楽しみにしています。

編集後記

「不具合は後から直す」という常識を疑い、デジタルシフトの波を的確に捉えて躍進してきたバルテス。最も印象に残ったのは、楽観主義を貫く田中氏と、論理的に組織の地盤を固める田邊氏という、対照的でありながら補完関係にあるトップ2人の存在感だ。AIの進化により、テストの重要性は下がるどころか、「正しさの証明」として高度な領域へと突入している。徹底した教育体制のもと、個人の属人性に依存せず、組織全体で品質の成功法則を追求する同社の姿勢は強固である。最新の技術を使いこなしながらも、最後は「人と人の和」を何よりも大切にする。人を思う温かい文化と確かな技術力の結びつきが、これからのIT社会の安心を、優しく、そしてしっかりと守っていくのだろう。

田中真史/1962年大阪府生まれ。私立大阪電気通信大学高校卒業後、ソフトウェアエンジニアとして中小ソフトハウスに就職。フリーエンジニアを経て1990年にソフト開発会社を設立、代表取締役に就任。約15年間の経営経験を経て、安心・安全なICT社会の実現を目指し、2004年にバルテス株式会社を設立。現在は同社代表取締役会長、バルテス・ホールディングス株式会社代表取締役会長兼社長を務める。

田邊浩一/1978年愛知県生まれ。新卒で日系大手システム会社に入社後、大手電機グループ、製造業系IT子会社、外資系ITベンダーを経験。2021年1月バルテス株式会社(現バルテス・ホールディングス株式会社)入社。事業部門の責任者や取締役を経て、2025年7月バルテス株式会社代表取締役社長に就任。