※本ページ内の情報は2026年9月時点のものです。

湘南エリアで「水と空気」を扱うパイオニアとして、創業から100年近い歴史を持つ株式会社川合工業所。同業他社には売上高1000億円以上の大企業が多い中、売上高10億円の同社は、スーパーゼネコンの一次請け案件を受注し続けている。

2年前に4代目の代表取締役に就任した髙橋衛氏は、20年以上にわたり現場の最前線に立ってきた人物だ。過去には、社員が疲弊して辞めてしまうのを防ぐため、あえて採算の合わない案件を断る決断も下してきたという。同社が選ばれ続ける理由と、髙橋氏が描く独自の経営戦略について迫った。

「社員が疲弊して辞めてしまう」 苦境で見せた会社を守るための決断

ーーまずは、これまでのご経歴を教えてください。

髙橋衛:
大学卒業後、まずは東京にある同業企業に就職し、5年間経験を積みました。その後、2000年に川合工業所へ入社し、20年以上にわたって現場の第一線に立って経験を積んできました。当社は工事会社であるため、現場に出ることが基本となります。当時は、社内規程などのルールが昔のままで、まだ「会社組織」として未成熟で古い部分が多くありました。そうした古い体制を少しずつ見直し、現代に合った会社へと改善を重ねてきた経緯があります。

現在私は代表の立場に就いていますが、会社の規模的にも社員全員で現場に対応する必要があるため、今でも自ら現場業務に携わっています。

ーー長年のキャリアの中で、特に大きな転機となった出来事を教えてください。

髙橋衛:
6、7年前に、長年お世話になっているお取引先から、採算の合わない条件で工事をご依頼いただく機会がありました。これまでの関係性を考慮すれば引き受けるのが通常ですが、どうしても条件が合わないと判断し、思い切ってお断りしたのです。

ーー長年付き合いのある取引先からの依頼を断るのは、難しいことではないですか。

髙橋衛:
非常に難しい決断でしたが、社員が疲弊して離職してしまう事態を防ぐため、あえて案件をお断りしました。業界の慣習上、どうしても断りにくい側面があり、今後の取引がなくなるリスクも当然ありました。しかし、無理な条件で仕事を受け続ければ、結果的に現場で働く社員を過酷な環境に追い込むことになります。私は、会社という組織と社員の生活、その両方を守ることを最優先に考えました。

結果として、限られた人員を別の利益が出る現場へ注力させることで、危機を乗り越えることができたのです。「やる」と決断するよりも、「やらない」と決断する方がはるかに大きな勇気が必要です。もしあのとき、目先の関係性だけで安易に引き受けていたら、今の会社は存続していなかったと確信しています。

売上高10億円の企業がスーパーゼネコンの「一次請け」を担える理由

ーー数ある同業他社の中で、貴社が選ばれ続ける理由はどの点にあるとお考えですか。

髙橋衛:
まずは素晴らしいお客様に恵まれていること、そして大企業にはない機動力がある点です。そのベースには、長い歴史の中で先輩方が築き上げてくれた信頼関係があります。要求水準の高いお客様の要望に応え続けることで、私たちの技術や品質も自然と引き上げられてきました。

さらに、ご要望があれば即座に動ける小回りの良さも高く評価されています。スーパーゼネコンの一次請けとして、日本を代表する企業と直接仕事をさせていただいていることは、社員全員の大きな誇りであり、日々の原動力になっています。

ーー高い品質と信頼を保ち続けるために必要なことは何だとお考えですか。

髙橋衛:
「派手なことはせず、毎日コツコツとやり遂げる」ということに尽きますね。当社の社員は本当に真面目です。設備工事は決して目立つ仕事ではありませんが、一つひとつの工程を丁寧に積み重ねてくれています。建物の設備は、最終的に良いものを引き渡すことがすべてです。その日々の誠実な積み重ねこそが高い品質を生み出し、長年の信頼につながっています。

100周年をともに祝い次の100年をともに歩む君へ

ーー貴社における次の100年の戦略は何でしょうか。

髙橋衛:
戦略の核となるのは「人」の育成と確保です。業界全体で人材不足と高齢化が進む中、いかに20代の人材などを獲得し、育てるかが当社の生命線です。昔は「10年で一人前」と言われていましたが、今は5年程度で一人前になれるように外部研修やオンライン学習など、教育への投資を惜しみません。同時に、社内の事務作業においては、手作業だった工程にAIなどを活用して効率化を図っています。これにより、人員を現場のサポートへ手厚く配置できる体制へと変革を進めているところです。

ーー最後に、求職者に向けたメッセージをお願いします。

髙橋衛:
私が一番大切にしているのは、「頑張った努力を、しっかりと結果に結びつけたい。それが正しいと思えるようにしたい」という考えです。仕事には厳しい面もあります。しかし、真剣に向き合えば必ず結果が残るものです。正当に評価される会社でありたいと常に考えています。未経験からでも技術を学び、成長できる環境は整えました。ぜひ一緒に、この業界で必要とされ続けるプロフェッショナルを目指しましょう。

編集後記

湘南エリアに根差し、スーパーゼネコンの一次請けとして信頼を築いてきた株式会社川合工業所。髙橋氏の言葉からは、現場で働く社員への深い愛情と、職人としての矜持が感じられた。会社と社員の生活を守るために下した「断る勇気」。そして、派手さを追わず着実に積み重ねる姿勢こそが、同社が100年企業へと歩む原動力である。AI活用や教育制度の充実といった新しい仕組みを取り入れながらも、最後は「人」にこだわる同社の今後に期待だ。

髙橋衛/1974年8月14日生まれ。神奈川県出身。関東学院大学工学部建設設備学科を卒業後、2000年に株式会社川合工業所に入社。長きにわたり現場代理人として最前線で指揮をとり続け、現場第一主義を貫きながら、組織改革、DX、AI活用など企業の次の100年に向けての準備を推進。2024年に同社代表取締役に就任。現在に至る。