※本ページ内の情報は2026年10月時点のものです。

通信大手企業でキャリアを積んだ後、家業である株式会社常盤電機に入社。以降、社内改革を牽引してきたのが同社の代表取締役社長である林玄悟氏だ。常盤電機は、商社、設備メーカー、システムインテグレーターという3つの顔を持ち、製造業の現場を支え続ける。長年培われてきた技術と信頼に、林氏がもたらした「仕組みづくり」のノウハウが融合し、今まさに次なるステージへと進もうとしている。社員主体の組織づくりや外部パートナーとの協業など、新たな挑戦を続ける同氏に、変革の歩みと未来へのビジョンをうかがった。

大手通信会社での「仕組みづくり」の経験を家業へ

ーーまずは、これまでのご経歴と、貴社へ入社された経緯を教えてください。

林玄悟:
私は大学卒業後、KDDIに新卒で入社し、12年間ほど事業企画部門で経験を積みました。最後は「auでんき」の立ち上げプロジェクトに携わり、業務やシステム周りの要件定義などを担当していました。もともと家業を継ぐつもりは全くなかったのですが、後継者が不在になるという状況を聞き、自ら申し出て、2019年に弊社に入社することとなりました。

ーー前職でのご経験は、家業に入られてからどのように生かされたのでしょうか。

林玄悟:
入社当初は製造業の専門用語もわからず、前職での経験は使えないと感じていました。しかし、新しく業務を始めるための段取りや、システムを導入して仕組みをつくるというプロジェクトの進め方は共通していました。私は製造業の現場での経験がない分、社員がより働きやすくなるための環境づくりや仕組み化の領域に振り切ろうと決意したのです。

社員が輝く環境を目指した組織改革と経営理念の策定

ーー貴社では具体的にどのような社内改革に取り組まれたのですか。

林玄悟:
主に業務環境のデジタル化や新卒採用、働き方のルール改定を推し進めました。当時はスケジュール管理がホワイトボードで行われ、連絡手段もフィーチャーフォン(通話機能中心の従来の携帯電話)という状態だったため、まずはビジネスチャットやスマートフォンを導入。また、社内ポータルサイトやワークフローシステムを構築し、情報の可視化を実現しました。さらに就業規則を刷新して古くからの慣例を見直すなど、公平で働きやすい環境づくりに努めています。

ーー2022年に社長へ就任され、新たな経営理念に込めた思いをお聞かせください。

林玄悟:
「真心と技術を磨き、ものづくりを支える人の安心・快適・ワクワクを創造する」という理念を策定しました。弊社の強みは、長年のお客様との関係の中で培ってきた「真心」と、電気や機械、ロボット、ITなどの幅広い分野に対応できる「技術」です。これらを生かし、製造業のお客様に当たり前の「安心」を提供する。そして機械化による「快適」さを届け、新しい技術で製造業の「ワクワク」する魅力アップに貢献したいという思いを込めました。

独自の強みを生かし 製造業の課題解決パートナーへ

ーー改めて、貴社の事業内容と独自の強みについて教えてください。

林玄悟:
弊社は、電気関係の部品を販売する「商社」としての機能と、塗装ブースや乾燥炉などをつくる「設備メーカー」としての機能を持っています。さらに、ロボットを現場に導入する「システムインテグレーター」の役割もあります。この3つの領域にまたがって事業を展開している企業は非常に珍しく、お客様に一貫して価値を提供できることが最大の強みだといえるでしょう。

ーー現在、社内で力を入れて取り組んでいるプロジェクトはありますか。

林玄悟:
今年の春から「新価値創造プログラム」をスタートさせました。社長主導の会社づくりから、社員主体の組織へと移行するためです。次世代を担う社員を選抜し、彼らが自ら課題を設定して解決に取り組む中で、その姿勢や成功体験を少しずつ社内に広げていきたいと考えています。また今後は、給与を決めるためではなく、社員の人間的、スキル的な成長を後押しするために、「成長考課制度」についても導入する方針です。社員が成長できる会社でありたい、その先に会社の成長があると考えています。

ともに新しい会社をつくり上げる仲間を求めて

ーーこれからの10年を見据えた、貴社のビジョンをお聞かせください。

林玄悟:
「製造業の現場に深く入り込み、技術とプロセスで課題解決に向き合う会社」として、”なくてはならないパートナー”になることを、新たなビジョンとして掲げました。モノを売るだけでなく、お客様の課題を起点とした提案型ビジネスへと進化していきたいのです。そのためには、自社の技術を磨くだけでなく、スタートアップ企業などの外部パートナーと協業し、新たな商材やサービスを提供していくことも重要だと考えています。

ーー最後に、読者へ向けたメッセージをお願いします。

林玄悟:
すでに出来上がった環境で働くことにも良さはありますが、自分たちの手で会社の形を変えていくことには、それとは違う面白さがあります。現在、弊社は変革の真っ只中にあり、一人ひとりの力なくしては実現できない目標に向かっています。これからも新しい挑戦を続け、一緒になって会社をつくり上げていくことにワクワクしてくれる方と、ぜひとも一緒に働きたいですね。

編集後記

「社員が成長できる会社でありたい、その先に会社の成長がある」と語る林社長の言葉には、社員への深い愛情と信頼が滲んでいた。大手企業で培ったロジカルな思考と仕組みづくりのノウハウを武器に、家業の古い慣習を次々とアップデートしていくその実行力は目を見張るものがある。同時に、社員を巻き込み、ともに会社をつくり上げようとする姿勢からは、トップダウンではない新しいリーダー像を感じた。社員とともに「未完成の組織」を育てていく林社長の挑戦。その先には、ものづくりの現場を「ワクワク」させるような、新しい常盤電機の姿が待っているはずだ。

林玄悟/1984年、岐阜県生まれ。大阪大学工学部卒業後、KDDI株式会社に入社し、事業企画の仕事に12年従事。「auでんき」立ち上げに携わる。2019年に株式会社常盤電機へ入社。2022年11月、代表取締役社長に就任。経営理念の策定をはじめ、組織や制度の見直しなど経営基盤の強化を推進。「製造業のお客様にとって“なくてはならないパートナー”になること。」を掲げた中期経営計画のもと、環境整備にも力を注いでいる。