※本ページ内の情報は2026年10月時点のものです。

「良い事業をつくり上げ世の中の多くの人に使われて残ることに価値がある」。そう語る杉山大幹氏が率いる株式会社aileadは、500社以上への導入実績を持ち、フロント業務を自動化するAIエージェント「ailead(エーアイリード)」を展開する。コロナ禍による事業の完全停止という危機をいかに乗り越え、現在の飛躍へと至ったのか。急激な進化を遂げるAI領域で若手が躍動する「備長炭型」の組織文化とはどのようなものか。高い費用対効果を生むプロダクトの裏側と同氏が思い描く「組織の生産性10倍」の未来に迫る。

先輩経営者たちの後押しで踏み出した20代前半での起業

ーーまずは、起業に至るまでの経緯を教えてください。

杉山大幹:
学生時代に働いていた、スタートアップを支援するベンチャーキャピタルのEast Venturesでの経験が原点です。黎明期のメルカリやBASEの経営陣と接する中で「私も事業をつくり、世の中に良い影響を与えたい」と思うようになり、起業を志しました。

しかし、当時はサービスのつくり方も伸ばし方もわかりませんでした。そこで、まずはEast Venturesの出資先企業の仕事を手伝うようになり、その流れでメルカリが新規事業を立ち上げるタイミングで初期メンバーとして参画。何でもやるという姿勢であらゆる業務を経験しました。現場で実務に触れる中で、自分が関わったサービスがスケールし、世の中に広がっていく価値を強く実感しましたね。

ーー20代前半で起業を決断された理由は何ですか。

杉山大幹:
周囲の先輩経営者陣から背中を押されたことが決定打です。「何をやっても応援する」と即座に資金を出してくださる方々がいました。明確な事業内容が決まりきっていない状態でしたが、そうした強力な支援があったからこそ若くして起業へ踏み出すことができました。

コロナ禍での事業消失 すべてを手放して辿り着いた「ailead」

ーー起業後に直面した最大の試練についてうかがえますか。

杉山大幹:
コロナ禍による事業の完全停止です。創業時は海外向けECや物流のAI化を展開していましたが、新型コロナウイルスの感染拡大により市場が完全に停止しました。そのため、過去の事業はすべて手放さざるを得なかったのです。その後、現在の「ailead」へ事業をピボットしましたが、目的変更に伴って離れていくメンバーもいて、まさに組織の転換期でもありました。

ーーその厳しい状況をどのように乗り越えましたか。

杉山大幹:
私の負けず嫌いな性格に加え、先輩経営者の方々の支えが大きかったですね。「代表がやりたいことをやるのが大事」と背中を押され、諦めずに乗り越えることができました。当時、リモートワーク下でマネジメントや育成が難しくなる課題に直面していました。これを解決しつつAIの性能を引き出すためのデータ蓄積に価値を見出し、現在のプロダクトへとつなげたのです。

普段通り働くことが自動化につながる 高い費用対効果を生むインフラ

ーー主力事業である「ailead」の特徴と強みを教えてください。

杉山大幹:
「ailead」は大企業や中堅企業向けに、営業や採用といったフロント業務を人間の代わりに実行するAIエージェントです。商談・会議・面接などのあらゆる対話データを自動で蓄積・構造化し、Salesforceなどの顧客・営業管理システム(CRM/SFA)や、採用選考を一元管理する各種ATSとシームレスに連携します。企業ごとの評価基準や営業フレームワークに沿って、AIが商談や面接の評価からCRM/SFAや、ATSへのデータ自動反映、フィードバック生成、ネクストアクション提案までをワンストップで実現します。

ーー実際に導入された企業ではどのような効果が出ていますか。

杉山大幹:
大きな費用対効果を生み出しています。たとえば大手IT企業様の採用では、数百人規模のグループワークやグループディスカッションの選考を、面接官1人とAIで実施できる仕組みを構築しました。選考の様子を全録画してAIが評価を担うため、従来のように大人数の面接官をアサインする必要がありません。

こうした仕組みは採用選考にとどまりません。営業スキルのアセスメントや候補者の評価など、蓄積された対話データの上で、企業ごとにカスタマイズされたAIエージェントが動いています。営業現場でも、メンバーの苦手傾向をトラッキングして可視化し、組織の育成に直結させています。

備長炭型の組織づくりで企業の生産性を10倍に導く

ーー組織づくりや採用において重視している行動基準は何でしょうか。

杉山大幹:
一瞬だけ燃え上がる働き方ではなく、淡々と一定の熱量で基本動作をコツコツ続ける「備長炭型」のリズムを重視しています。サービス開発から売り方、サポートに至る全工程で細部にこだわり、高い基準のフィードバックを徹底しています。

また採用では、過去の経験に固執せず、フィードバックを受け入れる「素直さ」と「自律性」を持つ若手を求めています。変化の激しいAI領域では、そうした人材が早く成長するからです。実際に、未経験に近い若手が数ヶ月で大企業向けの営業として活躍できる環境が整っています。

ーー今後の展望や顧客への価値提供についてどのようにお考えですか。

杉山大幹:
AIの進化により、これからは個人のみならず「組織全体の生産性を10倍にする時代」が来ると考えており、「ailead」をそのためのインフラとして定着させていく方針です。日本のGDP成長が伸び悩む中、グローバルで戦う大企業をさらに強い組織へと変革することが、私たちの大きな目標となります。

このビジョンを実現するため、プロダクトと販路の両面で展開を加速させています。まずプロダクト面では、従来の営業領域にとどまらず、人事採用やマーケティング領域へと私たちが解決できる課題の幅を広げています。

さらに、より多くの企業へスピーディーに価値を届けるため、販路の拡大にも注力しているところです。これまでの直販中心の体制から、大手ディストリビューター様や大手システムインテグレーター様との資本業務提携を進め、強力なパートナー企業と連携する体制へと移行しています。今後も多角的なアプローチによって、顧客企業の価値最大化を追求していく考えです。

編集後記

最先端のAI技術を駆使する一方で、「人の役に立つプロダクトをつくる」という実直な思いが杉山氏の根底には流れている。激しい変化の波が押し寄せる業界にあっても、基本動作を重んじ、着実に歩みを進める同社の姿勢は非常に印象的だった。彼らが構築するインフラが、日本企業の未来をどれほど力強く支えていくのか、今後の展開に期待が膨らむ。

杉山大幹/1995年、神奈川県横浜市生まれ。中央大学法学部卒業。East Venturesアソシエイト、株式会社メルカリを経て、株式会社aileadを創業。代表取締役社長(現任)。