
「リクルート時代、サービスを売れば売るほど自らの実力ではなく『仕組みの勝利』だと感じた」。アクシス株式会社の代表取締役、末永雄大氏はそう振り返る。同社は圧倒的な集客力を武器に、個人のキャリアに時間軸で伴走するサービスを展開している。なぜBtoBではなく、BtoCに振り切ったのか。失敗を恐れる若者が増える中、AIに代替できない「人を動かす伴走」の真髄に迫った。
「仕組みの勝利」からの脱却と圧倒的な現場知見
ーーまずは、起業に至るまでの経緯を教えていただけますか。
末永雄大:
新卒で入社したリクルートでは、ありがたいことにMVPを多数受賞するなど、それなりの成果を出して自信もついていました。しかし、売上高を伸ばせば伸ばすほど、「これは自分の実力ではなく、リクルートのデータベースの力、つまり『仕組みの勝利』だ」と痛感するようになったのです。当時、人材データベースさえあれば企業とのマッチングは可能でした。そのため、自分自身には確固たる「売り物」がないことに気づきました。
経営者へ営業する中で彼らに勝てる要素を探していた中で、当時はまだ浸透していなかったWebマーケティングを活用した集客力に目をつけたのです。自らの売り物をつくるため、あえて未経験の領域を経験しようと株式会社サイバーエージェントへ転身し、戦略的にWebマーケティングのノウハウを得た後に独立しました。
ーー前職での経験は、今の事業にどう活きていますか。
末永雄大:
リクルートでは、人材紹介の法人向け新規開拓営業として3年間で1000社以上訪問し、徹底的に顧客と向き合いました。名刺交換から顧客の状況や課題をヒアリングし、提案に繋いでいくなど、足で稼ぐアナログなデータの重要性を学びましたね。同時に、目標から逆算してKPIを設定するロジカルな思考も叩き込まれました。この泥臭い営業経験を通じて「1を見て10を知る」顧客解像度が、AIには真似できないインサイト把握の源泉です。これが今の私たちの大きな強みになっています。
また、起業後、個人事業主として活動していた時期には限界を感じてビジョンを見失いかけたこともありました。しかし、その挫折こそを「誰もが自分なりの軸にまっすぐに生きられる社会にしたい」という理念へと昇華させたのです。結果として、一生かけられる事業へと育てることができました。
企業優位から個人の時代へ「寄り添い」ではなく「向き合う」支援

ーー貴社が企業向けではなく個人にフォーカスしたサービスを展開している理由は何ですか。
末永雄大:
2013年頃から、労働市場が「人余り」から「人手不足」へと構造的に変わっていくのを感じていました。これからは企業優位の市場から、個人がキャリアにおける自立を迫られる市場へと変化していくと先読みしました。そのため、個人に徹底コミットする伴走型に全振りして事業を行わなければこれからの人材企業は発展しないと考えたのです。私たちは、14年蓄積した3000本以上の転職ノウハウコラムメディアや約1000本のYouTube動画を活用しています。Webマーケティングとキャリア支援を融合させた自社集客モデルを構築しているのです。スカウト媒体や広告に依存せず、個人のお客様と直接向き合える強固なビジネスモデルを実現しました。
ーーサービスを展開する中で、重要視していることはなんですか。
末永雄大:
今の20代、30代には、「消極的意識高い系」とも言える人が増えていると感じます。消極的な意味で「失敗したくない」「正解を求めたい」という人々です。私たちはそうした方々に、ただ心地よい言葉をかける「寄り添い」はしません。相手の成功にコミットして「向き合う」ことを大切にしています。お客様の課題を解決し、自立を促すコーチングを行うためには、時には耳の痛い真実も伝えるようにしています。
若手に裁量を「事業開発人材」が育つ第2創業期の組織づくり
ーー社内の組織づくりや採用において、どのような魅力を打ち出していますか。
末永雄大:
弊社では20代の若手が多く活躍しており、「事業開発人材」の育成に力を入れています。早期にPL責任を持たせる文化があり、過去には新卒2年目で事業責任者になったメンバーも複数います。直近でも24年卒のメンバーが事業責任者を務めているのです。リクルート流の「あなたはどうなりたいか?」という問いかけを現代版にアップデートしました。これをマネジメントの型として取り入れています。個人の自己実現と会社のミッションを重ね合わせることで、若手に裁量と責任を任せています。
ーー組織として今後の課題や変革のポイントはどこにあるのでしょうか。
末永雄大:
現在は「第2創業期」として、組織基盤の再構築に注力しています。複数の事業を展開し、若いメンバーに裁量を渡す「自律型組織」は理想です。しかし、基準がばらついてしまう難しさも痛感してきました。そのため、方針や戦略の意思決定はワントップで統合しています。幹部会などを通じて基準を統一し、組織のベクトルを合わせることに取り組んでいます。今はまさに、こうした組織の仕組みづくりから参画できる非常に面白いフェーズです。
転職をゴールにしない AI時代に残る「人を動かす伴走」
ーー転職を前提としない支援などを通じて、どのような社会課題を解決したいとお考えですか。
末永雄大:
働く価値観が多様化する中、転職をゴールとした「点」の支援だけでは根本的な解決になりません。私たちは、転職の有無にかかわらず、時間軸という「線」で個人のキャリアに伴走する必要があるのです。エージェント、メディア、キャリアコーチングに加え、管理職育成サービスの「マネディク」など複数の事業を展開しています。これらを掛け合わせることで、個人が直面するさまざまな課題に対して最適な「答え」をともに探しています。そして、個々人の自立と自己実現を応援していきたいと考えているのです。
ーーAIが普及するこれからの時代、人間が果たすべき役割は何だとお考えでしょうか。
末永雄大:
AIなどの技術はツールとして積極的に活用し、生産性を上げていきます。その上で、人間にしかできない価値とは、アナログな関わりの中で「前向きな人の背中を押すこと」です。さらに、「耳の痛いことを伝えて人を動かすこと」も重要です。人がフォーカスすべきは、言葉の裏にある感情や関係性を汲み取った「人を動かす伴走」だと確信しています。これこそが、AI時代における私たちの「価値」になるはずです。
編集後記
人材業界において、企業側ではなく徹底して「個人」に向き合う末永氏の姿勢は、自身の強烈な原体験に基づいている。それは過去の挫折と圧倒的な現場経験に裏打ちされた確固たる信念だ。表面的な優しさではなく、時に厳しい言葉を投げかけてでも本人の成長と自立を促していく。このスタンスは、正解のない時代を生きる若者にとって真の道標となるだろう。AIによる効率化が進む現代において、彼らが提供する「人を動かす伴走」こそがキャリア支援の最後の聖域になるに違いない。

末永雄大/1983年生まれ。北海道小樽市出身。青山学院大学卒業後、株式会社リクルート(旧リクルートエージェント)に入社。東京市場開発部、京都支社で法人営業・リクルーティングアドバイザーとして様々な業界企業の中途採用支援に従事。その後株式会社サイバーエージェントに入社。アカウントプランナーとして最大手クライアントのWebマーケティング支援を行う。2012年8月にアクシス株式会社設立。