※本ページ内の情報は2026年11月時点のものです。

茨城県ひたちなか市を拠点に、自動車の販売から整備、保険まで一貫したサービスを提供するイソザキ株式会社。地域に根ざした経営を続ける同社は近年、ホールディングス化による多角的な事業展開を行っている。外国人向けの新規サービスなど、枠にとらわれない挑戦を続けながら、トップダウンからボトムアップの組織へと変革を遂げた。家業である同社を引き継ぎ、「社員が自慢できる会社」を目指す同社の代表取締役社長、磯﨑拓紀氏にこれまでの歩みと今後の展望を聞いた。

「危機感」から着手した労働環境の改善

ーー大学卒業後、自動車販売会社に入社されたときのご経験を聞かせていただけますか。

磯﨑拓紀:
外部の会社に入社し、大阪で営業職に就きました。当時は労働時間も長めで厳しい環境でしたが、実績を出せば評価されるわかりやすい時代でもありましたね。知り合いも居ない土地にカバン2つで赴いたため、集中力を持って仕事に向き合えました。最初から3年と期間を決めており、1年目は仕事を覚える、2年目は実績をつくる、3年目は後輩を育成すると、自分の中でテーマを設定して取り組みました。

ーー家業である貴社への入社後は、現状をどのように受け止められたのでしょうか。

磯﨑拓紀:
都市部の勢いのある販売店を経験してから戻ったため、店舗の設備や車両の配置などがどうしても古く見えて、非常に衝撃を受けました。「このままでは衰退してしまう」という強い危機感を抱き、根本的な見直しを決意したのです。当時の店舗は定休日もない状態だったため、まずは定休日の設定や禁煙、清掃を徹底することなどに取り組みました。社員を守り、安心して働けるようにするための労働環境の改善が、私が最初に着手した改革です。

一般社員から社長へ 自律を促す組織化とグループシナジー

ーー2017年の社長就任後、組織をどのように変革されたのか教えてください。

磯﨑拓紀:
先代のトップダウン経営から、ボトムアップ経営へと転換を図りました。私自身がすべてを引っ張るのではなく、みんなで力を合わせた方が経営が安定すると考えたのです。そこで部門を切り分け、部門長を配置して権限を委譲する組織化を進めました。ホールディングス化の大きな目的もここにあります。弊社はもともと一族経営のため、これまでは「家族以外はトップになれない」と思われがちでした。しかし、事業ごとに会社を分ければ、一般社員として入社した方でも実力次第でグループ会社の社長を目指せる環境をつくることができます。この根底には、働く人のモチベーションアップにつなげ、社長をたくさん育てたいという思いがあります。

ーー自動車関連の枠を超えた多角的な事業展開の背景には何があるのでしょうか。

磯﨑拓紀:
最も大切なものは、これまで築き上げてきた「お客様とのつながり」です。弊社では、自動車販売や車検で繋がったお客様と長くお付き合いしてきたからこそ、車以外の困りごとにもお応えしたいと思いました。そこで、別会社で生命保険や生活総合サービスの事業を立ち上げ、民泊事業なども始めています。さらに、お客様の人生の節目を応援したいという目的で結婚相談所も設立しました。お客様に焦点を当て、グループシナジーを生み出すことが弊社の強みだといえます。

困りごとから生まれる新事業と自慢できる会社への思い

ーー外国人向けの保険事業やオンライン店舗などを始めた狙いをうかがえますか。

磯﨑拓紀:
ビジネスのチャンスは、常に誰かの「困りごと」から始まります。日本で働くベトナム人の方は車を手に入れても、言葉の壁で補償内容が分かりにくく、適切な補償内容を選べないという課題があったため、そこに気づいてベトナム人スタッフを中心とした専門部隊を立ち上げました。また若年層のお客様に向けては、店舗に行かずとも車の注文ができるオンライン店舗の構築を進めています。これも店頭でのコミュニケーションに負担を感じる方の困りごとを解消する施策の一つです。

ーー最後に、今後の展望や地域への思いについてお聞かせください。

磯﨑拓紀:
シンプルに、働いている社員が自慢できる会社にしたいという思いが一番です。地域のスポーツチームの支援や交通安全セミナーなどを通じて知名度を高め、ご家族に「イソザキで働いている」と胸を張って言えるような企業価値を築くことが、社員への恩返しになると信じています。今後は外部講師を招いた経営幹部の育成に注力するとともに、100名規模になった組織を支える管理部門の体制強化にも取り組み、皆が誇りを持って働ける環境をさらに整えていきます。

編集後記

家業の将来に強い危機感を抱き、抜本的な改革を断行した磯﨑社長。お話をうかがう中で最も印象に残ったのは、その温かくも鋭い視線が常に「社員」と「お客様」の双方へ向けられている点だ。潜在的な困りごとに寄り添う新規事業の数々からは、地方企業の枠を超えた圧倒的な熱量とエネルギーを感じた。地域社会への還元を惜しまず、社員が家族に誇れる企業であり続けるという真摯な決意は、これからも確かな信頼を生み出し、地域にさらなる好循環をもたらしていくに違いない。

磯﨑拓紀/1980年、茨城県ひたちなか市生まれ。国士舘大学卒業後、株式会社スズキ自販近畿で営業職を経験し、2006年に家業である磯﨑自動車工業株式会社(現イソザキ株式会社)へ入社。2017年、代表取締役社長に就任。2022年、ISGHD(株式会社ISGホールディングス)を設立しCEOに就任。自動車関連事業を中心に事業を拡大するとともに、地域経済団体や社会活動にも積極的に参画。「志事(しごと)を通じて人と社会を幸せに」を掲げ、地域に必要とされる100年企業を目指して挑戦を続けている。