株式会社LIFULL 国内最大級の不動産サイトを運営。AIなどのテクノロジーを活用しながら、住まいと暮らしの課題解決に挑む東証プライム企業 株式会社LIFULL 代表取締役社長執行役員 伊東 祐司  (2025年9月取材)

インタビュー内容

価値観(経営理念)

【井上】

我々はネットベンチャーともいわれますが、理念経営を推し進めている会社だと思います。企業というのは経営理念がものすごく重要ですし、作った後に、いかに社員全員に浸透させるか、という事も大変重要なことで、採用に関しても、その理念にどれだけ共感して価値観が合うかということを、採用活動の中では徹底的に見えるようにしていますし、そうやって集めた、同じ志を持った同士を増やしていって、理念を実現しましょうというのが、会社の有るべき姿、正しい姿だと思っています。

【井上】

その中でネクストが掲げている理念と社是というのは、社是は利他主義というのを掲げてまして、利己的ではなく利他、世の為人の為になる事をやり続けていきましょう。それはお客様やクライアント様だけではなく、その先にいる一般のユーザーに対しても利他でやっていこう、働いている従業員に対しても利他であろうお取引先や株主に対しても、地域全体に対しても、企業の責任として利他貢献をしていこうというような事を掲げています。たとえば会社に来た時だけ利他ということではなく、ご家族に対しても利他的に、愛情たっぷりにいい家庭を築くような人格者であってほしいし、電車やバスに乗った時に、不自由な方がいらっしゃったら、にこやかに席を譲ってあげられるような人であってほしいし、そういう人格や価値観を持った人たちに集まってほしいと思っています。じゃあその価値観を持った人たちが、何をするのか、ナンバーワンの不動産ポータルになった後、その先どうするのか、という事に対しては経営理念の実現だと思うんですけど。

【井上】

常に革新することでより多くの人々が、心からの「安心」と「喜び」を得られる社会の仕組みを創る。これが我々の経営理念。その中で不動産領域というのは、大きく大事な一歩目でしたけれども、我々の企業グループというのは、不動産領域だけをやり続けようという事ではなくて、最終的に沢山の人々が幸福になるような社会を実現しましょうと言っているので、その中で衣食住の住、一番高い買い物、そしてまだまだ不透明、不安、不便、不満という、不が大量にあるその不をひとつひとつ取り除いていく、それをまずHOME'Sは目指しています。

【井上】

それだけではなく、それを海外へもっていきグローバル化をしていって、1億人以上の人に住まいの領域で、もっとハッピーになってもらうということもやっていきますし、住まい以外のところも、地域をもっと活性化させていこう、再生できるようにしていこうと思って始めたり、医療の情報サービス、アトピーやアレルギーの患者さん向けのものに関しても、苦しんで、クオリティーオブライフが低下してしまっている方々に、早く笑顔を取り戻してもらって、早く生活の質を上げてもらえるように、そんな情報サービスを始めていたり、そういった地域、医療、その他の領域というのも広げていこうと考えています。考えている事は、世の中を俯瞰してみた時に、多くの人たちが困っていて、でも誰も解決できていない領域を事業化することで、その事そのものが事業を大きくしていくこと、それ事態が社会貢献活動になるような領域というので、チャレンジをしている会社です。

事業(ユーザーの選択の自由)

【井上】

創業のきっかけの時に、情報が行き渡っていないこと、ユーザーへ情報が行き渡ってないことによって、選択の自由を得られていない。この情報の非対称性を解消するには、すべての情報をデータベース化して、いつでもだれでも無料で見れる状態を作らないといけないと思ったんです。そしてそのデータへのアクセス権が誰にでも自由にあるとなると、自分の都合のいいように情報を、出したり隠したりしようとする不動産会社さんがたとえいたとしても、ユーザーはHOME'Sさえ見れば、それが嘘だったという事が後からわかるんですね。そして、自分で能動的にこれがいいと選ぶ、選択の自由の手に出来るわけです。

【井上】

そういう業界にしていこうという事で、創業の時から将来にわたっては、物件情報をなるべき100%のシェア率を高めていこう。実はスタートの時点でそう考えていたんです。なので、どうしたら物件が増えるかという事ばかり考えていて、物件を増やす為には不動産会社さんの加盟店、会員さんを増やしていく事、それを北海道から沖縄まで全国どこにでもある状態にする事。そしてその会社さんを通じて、なるべくそのエリアの情報が、リアルタイムに大量にでてくる仕組みにしようという事で、創業時の価格は1万5千円の月額料金で、物件情報は出し放題というふうにしたんですね。そのようにした結果、ピーク時で190万件くらいまで件数が増えていったんですけれども、正直1万5千円ですと、広告宣伝費や設備投資、営業マン等いろいろな投資がかかる、それをまかないきるには、1万5千円では難しいというふうに段々変わっていきましたので、その後、何回か価格改定をさせていただいたんです。1万5千円で載せられる物件は40件までですよ、40件超えたら、また追加料金を払って載せ下さいと、ある意味掲載課金型モデルになっていったんですね。1件載せるたびに段々コストが上がっていくという形になるので、不動産会社さんは100件200件の物件を持っていても、全部を載せなくなるんです。結果的に不動産屋さんも出したくても全部を出せない、ユーザーは沢山の情報の中から選びたいと思っても、そこに沢山の情報が集まらないという、それぞれの不都合が起きているので、料金を大幅に変えるという事をして、お問合せに応じた従量制の課金に変えたんですね。つまり、載せる時には全部載せてください、無料でどんどん載せてください。ただし、メールもしくは電話でお問合せが入ったら、その時は成果報酬として払ってくださいねという形に変えました。このモデルに変えた主なポータルサイトは、まだHOME'Sだけなんですね。その価格戦略というのは非常に僕らにとって、チャレンジングだったんですけれども、本当に丹念に丁寧に業界の皆さんにもご説明をして、ご理解を得ながらうまく成長していきました。日本の国内には空室で空いている賃貸と売買の家が、およそ500万件ほどありますから、将来的にはその500万件を網羅するようなデータベースを作っていきたい。そうすれば、HOME'Sさえ見れば日本国中すべての物件が見れる。そうすると、お行儀の悪い不動産会社さんがもしいても騙せなくなる。自分で選択の自由を決められるということになると思っていますので、価格戦略によって物件数ナンバーワンを勝ち取ってきたという歴史があります。

キャリア(必要とする人材)

【井上】

見ているのは、その人が何をやりたいと思っているかというところですね。その人の向かう方向性もなく、情熱もないというのは、いくら周りから条件を整えて育成してあげても、結局能動的に動けない人なので、能動的、主体的に動く人というのは、目標設定能力がある。目標を定め、どうやったら出来るか戦略をたてる事ができる、最後は、諦めずに完遂するまで実行し続ける実行力。この3つです。理念に共感をしていて、目標設定をして、戦略立案できて、そして実行して、やり遂げられる人。

プライベート(利他的ということ)

【井上】

自然に利他的な事が出来るタイプだったとは思うんですけど、それがあったので、創業のきっかけになった若いご夫婦に対して、他社の物件までお勧めすることができた。誰に言われたからやったわけではなく、自分でそうするのは自然で、当たり前だと思ったので、やったわけですよね。その時には利他という言葉を、僕は知らなかったんです。でもそのご夫婦に対して、利他的なこう言いをさせていただいた、それから将来こういう人たちを増やしたいと思っていた、徹底的にユーザー目線でやっていきたいと思って、この会社をスタートした。そんな創業の矢先に、京セラの創業者の稲森和夫さんの著書をいくつも読んでました。その中に利他の心という言葉が出て来まして、利他ってなんだろうって読み進んでいくうちに、なるほど、これが僕がやりたい事だと、究極これをやり続けることなんだと、これが人生の中で大事なことであり、働く上でも根源的に大事な事なんだというふうに分かって、それからは利他というのを使わせていただくようになりました。

【ナレーター】
株式会社LIFULLは、国内最大級の不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME'S」を運営する、プライム上場企業だ。

「あらゆるLIFEを、FULLに。」というコーポレートメッセージを掲げ、不動産領域にとどまらず、介護や地方創生など多角的にビジネスを展開しており、近年では、AIを活用したサービスの開発・提供にも注力している。

本日は、LIFULLの代表取締役社長、伊東祐司氏に話を伺う。

2006年に新卒で入社。LIFULL HOME'Sの営業職として関西拠点や新規事業の立ち上げを経て、2023年に代表取締役社長に就任した。現在を「第二創業期」と位置づけ、組織の革進を進めている。

AIに力を入れる同社の代表的なプロダクトが「AIホームズくんBETA」だ。LINEアプリを通じて、対話型AIが住み替えの相談に24時間、応じてくれるのだという。

【伊東】
(LINEで)友だち追加いただければすぐ使えるようになっています。

従来の不動産のポータルサイトだと、どうしても賃貸か売買か、エリアから探すか、駅から探すか、そこから条件を入れて絞り込んでいって物件が出てくるという体験だったかと思います。

しかし、AIホームズくんBETAはまさに不動産店の店頭で会話しているかのような形で、条件を入れていただけると、相談をしながら物件の提案を受けられるという新しい体験が可能です。

これまでお考えでなかったエリアや物件の提案を受けられるということで、非常に好評を得ています。

【ナレーター】
AIという最先端技術を推進しながらも、伊東は「ビジョン」と「人」こそが競争力の源泉だと強調する。

しかし、その強い信念の裏には、「毎日泣きそうになりながら、どうやって謝ろうか考えた」という、社長自身が経験した最大の挫折があった。

本編では、その失敗から何を学び、いかに組織を変革したのか。若手ビジネスパーソンが掴むべき「復活の法則」に迫る。

【ナレーター】
伊東が振り返る、最大の転機となったエピソード。それは2016年に立ち上げた新規事業である対面型相談サービス「LIFULL HOME'S 住まいの窓口」での挫折だった。事業計画は承認されたものの、現実は厳しかったという。

【伊東】
全然、計画通りにいきませんでしたね。

スタッフはロープレや勉強もして、社内テストもつくって、「よし、いつでも来てください」という状態なのに、「あれ、今日営業中だよね?」というところから始まって。

待てど暮らせど一人も来ない、次の日も来ない、翌月も来ない。でも人はどんどん採用してしまっている。「どうしようか」という気持ちはやっぱりありました。

毎日泣きそうになりながら、どうやって謝ろうかなというのを考える日々でした。

【ナレーター】
苦悩の末、伊東は原点へ帰ることを決断した。集客の方法を「インターネット上での訴求ばかり」考えていた当時の思考を改めた。

【伊東】
集客の方法をいろいろ試していこうということになって、オフライン、いわゆる雑誌に広告を出してみたりだとか、当社が雑誌社と提携してタイアップ企画で、住まい探しの雑誌を制作させていただいたりだとか、今までにない広告手法をどんどんトライすることによって、その雑誌を見た方が「こういうのを探しました」と、相談に来ていただけるようになったんです。

「ああ、なるほど」と。それまではインターネット上で訴求する方法ばかり考えていましたが、実際に集客するためには、インターネットだけではなく、いろいろなところに接点を持つことが大事なんだということに気づいんたんです。

そこからPDCAが非常にうまく回って、お客様に来ていただけるようになりました。

【ナレーター】
この失敗からの学びの根底には、新卒時代に経験した関西拠点の立ち上げでのある教訓があった。

【伊東】
売っていくとチームがどんどん盛り上がっていく。みんなで当時メーリングリストで「受注した!」と言って喜び合って、帰ってきたらハイタッチして、「よし、飲みに行くぞ」みたいな、そういう雰囲気だったんですよね。

これがずっと続くのが良かったんですけれど、もちろんそういうわけにもいかず、「あれ?なんか全然売れなくなっちゃった」とか、「大丈夫なのか?」となってくると、「お前、もっと売ってこいよ」とか「お前、なんで提案していないんだよ」といった言葉が出てきて、そうなるとチームの雰囲気がとても悪くなっていって。

そういう経験をした時に、どうやったらチームが売れるようになって、私たちも楽しく仕事できるんだろうかと考えた時に、そういった雰囲気の時こそ、自分たちでポジティブな空気感をつくっていこうと考えました。

「今日の最初のアポイントを誰が取るか競争しようぜ」とか、もしくは「今月この新しい商品、誰が最初に受注するか、これも競争しようぜ」とか、みんなで競い合いながら高め合って雰囲気を変えていこうとしたんです。そうすると雰囲気がどんどん良くなっていって、不思議とまた受注が重なり出したんですよね。

「ああ、そうか」と。いい時に雰囲気がいいのは当たり前で、悪いときこそ自分たちで雰囲気をつくって、それが結果に結びついていくと。先に雰囲気をつくることが大事なんだという気づきがあって、まさに「雰囲気が結果をつくる」という言葉は、今も大事にしています。

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経営者プロフィール

氏名 伊東 祐司
役職 代表取締役社長執行役員
生年月日 1982年11月19日
出身地 埼玉県
座右の銘 雰囲気が結果をつくる
愛読書 「人を動かす」/「戦略プロフェッショナル」/「それでもなお、人を愛しなさい」/「働く君に送る25の言葉」
略歴
1982年埼玉県生まれ、日本大学卒。大学卒業後、2006年株式会社ネクスト(現LIFULL)に新卒で入社。HOME'S(現LIFULL HOME'S)の営業職として全国を飛び回ったのち、賃貸・流通領域の営業部長を経て、2015年には最年少の32歳で執行役員に就任。その後、LIFULL HOME'Sの新規事業を創るべく新UX開発部を立ち上げ、Webだけに留まらないオムニチャネル戦略を推進させていく。売買事業も含め事業成長を促進し、2019年にはLIFULL HOME'S事業本部長、2020年には取締役執行役員、そして2023年12月21日をもって、代表取締役社長執行役員に就任。

会社概要

社名 株式会社LIFULL
本社所在地 東京都千代田区麹町1-4-4
設立 1997年
業種分類 情報通信業
代表者名 伊東 祐司
従業員数 1,037 名(2025年9月30日現在)
WEBサイト https://lifull.com/
事業概要 LIFULLは「あらゆるLIFEを、FULLに。」をコーポレートメッセージに掲げ、個人が抱える課題から、その先にある世の中の課題まで、安心と喜びをさまたげる社会課題を、事業を通して解決していくことを目指すソーシャルエンタープライズです。現在はグループとして、不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME'S」、シニアの暮らしに寄り添う「LIFULL 介護」、不動産投資と収益物件の情報サイト「健美家(けんびや)」などの事業展開を行っています。
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