株式会社ハブ 首都圏中心に英国風パブ『HUB』等を展開 株式会社ハブ 代表取締役社長 太田 剛　 (2013年6月取材)

プライベート

【太田】

自分は本当に今の人間形成という意味では、影響を与えてくれたのは陸上競技です。
最初中学から陸上競技ですね、長距離を始めました。当時の顧問の先生から高校でも陸上をやりなさいという事で推薦してくれたのが報徳学園という駅伝の名門校だったんですね。そして３年間本当に厳しい練習だったんですけれども、３年生の時に全国高校駅伝に出場すると。このときに実は３日前にメンバーから外されまして、３年間俺は一体何をやっていたんだろうと。その日の為に３年間努力したのに、結局選手として出場できなかった。これはもう今でも人生の中で、一番の挫折なんですよね。その時、自分を使ってくれなかった先生を非常にある意味恨みました。３日前の最後の選考会で私は負けたんですけども、その時に使ってもらえなかった事が非常に自分の中では先生に対するある意味不信感ですよね。

ですからそれ以降私、大学でも全国高校駅伝に出られなかったので、大学で絶対走ってやろうということで、全日本大学駅伝に出場するために、大学に行ったというのが事実なんですけども。そういった意味では競技場では先生と顔を合わせる事もあるんですけども、出来るだけ顔を合わせないようにという事で遠ざけてきました。

【太田】

２００４年のこの時に卒業してから２６年経っていたんですけれども、監督が引退するというのを新聞の記事で読んだんですね。その時何故か無性に会いたくなったというのが、これは本当に自分の中でもなんでそういう衝動に駆られたのかなと今でもなかなか理解出来ないんですけれども、１回会いたいなという事で会いに行ったんですけれども。その時に一気にお会いして、多分もう２６年間も会っていないので覚えていないだろうなと思っていたのですが、自分のあだ名で本当に暖かく迎えてくれたと言いますかね。何か言われるかなと思いましたけれども、そのまま普通に高校３年生の時と同じような状態で接してくれたと。その時に何で自分を使ってくれなかったんだという話をしたんですね。それはもう一言言われたのはあの時お前は勝負に負けたんだと。勝負というのはそういうものだと。勝ち負けがあると、勝った者を使うと。負けた者は使わないと。ただそれだけだと言われました。ただし、人生に無駄な事は１つもないんだという話をされたんですね。

だから自分はこの３年間、全国高校駅伝に走る為だけに入学した高校で最終的にその事を果たせなかった事は大いなる無駄だと思っていたんですけれども、その時の先生の話を聞いてですね、自分はあの３年間というのは非常に大切な３年間だったなと。そして今こういう仕事をしていく中でですね、どちらかというと勝者の気持ちと言うよりも、敗者の気持ちの方が自分は実は理解出来ているつもりなんですね。それは何かなという事を考えると、やはりあの時の挫折感というのがどういう思いをするのかと、決してビジネスにおいても勝者だけではありませんので、そういう事は私は理解出来ているつもりでいます。

だからそれは先生の仰られたように人生に無駄なものはないんだという事が何十年も経って理解出来たというのが率直な感想です。

【太田】

８３年入社なんですけれども、実は親からもの凄く反対を受けたんですよね。アルコールを商いするという事で当時水商売というところが非常に強かったんですけれども、中内さんの存在が非常に大きかったものですから、中内さんが創った企業という事で親は渋々了承したというか、人生自分が決めるもんだという事で最後は説得は出来たんですけれども。

私の母親は近所の友達にうちの息子はダイエーに入ったと言っていたんですね。HUBに入ったとは言ってくれなかったです。だからお袋の中では精一杯のうちの息子は水商売ではなくてダイエーに入ったんだと。要するに親は最後までHUBという会社を認めていなかったんだなと。自分はそういう一つの目標もありましたし、思いもあったので、決して恥じるべき企業ではないと思っていましたけれども、その経験があるので今HUBに入社してくるメンバーには両親から良い会社に入ったねと言ってもらえるような企業にしたいんですね。そういう自分の母親のような思いはさせたくないなと思います。

われわれの考えとしては水商売を否定するのではなくて、水商売に誇りを持って取り組める、そういう企業でありたいなと思っていますので、真正面からこの事業を進めていきたいなというふうに考えています。