インタビュー内容
【五十嵐】
1999年12月に会社を退職したのですが、2000年を目前に辞表を出そうと思いました。
【聞き手】
ミレニアム辞表ですね。
【五十嵐】
はい。ベンチャーキャピタル時代に当時インターネットの産業が出始めていて、いわゆるネットバブルが始まる予感があったんですけども、ベンチャー企業であっても、色々な会社、もしくは大手の会社と組むことによって、そういうところに進出していこうという働きがけを自分自身がしていて。たまたま事業会社2社で、新しくネットの戦略の会社を投資をしてつくろうということが決まったんですね。たまたま仕掛けていたのが、私だったということがあって、かつ、その会社の代表になられる方も、もう四の五の言わず早く事業をやってみろと背中を押してくれる機会がありましたので、創業段階から参画させて頂いて、本当に会社を登記する段階から一緒に参画していったということですね。
【聞き手】
いよいよ夢の起業に向かって一歩を踏み出された訳ですね。
【五十嵐】
そうですね。ただし金融機関の人間ですので、実際に実業をやったことがないという中で、そういう一からやれる機会を逆に役員という立場でやらせてもらったというのが、次の飛躍につながっているのではないかなと思っています。
【聞き手】
ただ、時代の流れに乗ってネット事業を起こしていかれた訳なのですが、あまり順風満帆に進んだ訳じゃなかったと。
【五十嵐】
今の時代、かなり資本金を入れてビジネスを立ち上げる企業が多いと思いますが、当時の2000年前後も全く同じ状況で、世界的にも、やはりネットビジネスをやるということで数多くの資金が集まりました。私達自身も総額で20億円ぐらい使ってしまったのですけれども、やはり、まずはサーバーを買ってネットメディアを立ち上げてということで、数億円がポンと飛んでしまうんですね。ですので、赤字が先行していく事業だということもあって、大規模な資本投下も行う。
しかしながら、当時のインターネットバブルの時代と言いますのは、回線問題もあってブロードバンドというよりはナローバンドの時代でしたので、いわゆるネット広告の収入もまだまだ上がってきませんし、ご家庭においてもダイヤルアップの時代ということもありまして、ある意味マニア層がまず先行して使い始めたというのが実態だと思うんですね。
ですので、実需ベースのビジネスというのは小さくて、今残っているネット企業の数多くは、初めは相当な赤字を抱えながら生き残ってきた会社が、今いらっしゃるとは思いますけれども、ご多分に漏れず90%のネット企業が無くなったと思います。私たち自身もその内の1社になってしまったんですけども、逆に20億円使ってネットメディアを立ち上げて、なかなか収益化していくのは非常に難しかったという実感もありますし、逆に言うと私たち自身は、その時の事が非常に勉強になっています。
やはり起業はシンプルに、キャッシュオフは大事だということですね。収益を稼いでいかないと新規投資もできないですし、数年後には会社がもたないという現実も見てきています。かつ、当時、資金がなくなっていく中でリストラということも図らずもやりましたので、やはりそれが人に与える影響というのも、ある意味、失敗ケースを自分達でリアルに見たということは、今クロス・マーケティンググループをやっていく中で非常に役に立ってることですし、逆に身が引き締まる経験をしてきたということでもあります。
【聞き手】
ご経験の中で一番得たもの、失敗の中で一番得たものはなんでしょうか?
【五十嵐】
やはりスピードが大事だということですね。
会社にとって血液ってなんですかというとキャッシュの流れになりますので、売上の獲得スピードと実際お金が入ってくるスピードを意識しないと会社が上手く動いていかないんですね。その時の組織において一番大事なのはスピードを上げていくこと。その中で、どうやってスピーディーにキャッシュを集めてきて、次の投資に回していけるかというのは、結局成長のスピードに関わってきますので、そういったことでスピード、スピード、スピードということです。どこかで楽天の三木谷さんが言っていましたけれど、そんな形になってくるんじゃないかと思いますね。
【聞き手】
でもそれは身をもって得た失敗からの教訓ということですね。
【五十嵐】
やはりベンチャー企業なので、安定した収益基盤がない中でのいわゆる安全領域ですね。きっちりとした安定収益期が見えてくるまでに、いち早く上がらないと失速してしまうんですね。そういう意味では、スピーディーに事業を立ち上げていくことは非常に大事だということが、言葉では分かっていましたけれども、ではどれぐらいのスピード感ということでいいますと本当に休みなく、24時間頑張り続けられるかが非常に大事だと思います。
【聞き手】
やはりお仕事をなさる上で、家族の理解とか支えというのは非常に大事だと思いますか?
【五十嵐】
100%大事ですね。先程も言った通りスピードを上げようと思った時に、家族の応援がないとスピードが上がらないんですね。
【聞き手】
具体的に言うとどういうことでしょうか?
【五十嵐】
人生の選択というわけではないですけれど、家庭で問題が起きました、職場で問題が起きました、どちらを取りますかいう議論だと思うんですね。そういう時、迷わず仕事を取れる環境であるということだと思うんです。
私自身も、現在社長という立場でやっていますけれど、ではどちらを優先するといった時に、会社を真っ先に優先できる意思決定ができることが非常にスピードを上げられますし、誰かが責任を取っていかなければならない部分で、そこは他の社員達に対してもいい影響を与えます。そういう面では、家庭の支えというのは大事だと思います。

経営者プロフィール

氏名 | 五十嵐 幹 |
---|---|
役職 | 代表取締役社長兼CEO |
生年月日 | 1973年5月10日 |
出身地 | 東京都 |
座右の銘 | 一生懸命 |
愛読書 | ピーター・ドラッカー |
尊敬する人物 | 松下幸之助、稲盛和夫 |
会社概要
社名 | 株式会社クロス・マーケティンググループ |
---|---|
本社所在地 | 東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー24F |
設立 | 2013 |
業種分類 | 情報通信業 |
代表者名 |
五十嵐 幹
|
従業員数 | 1,707名(内、臨時従業員数261名)※2024年6月末時点 |
WEBサイト | https://www.cm-group.co.jp/ |
事業概要 | デジタルマーケティング事業、データマーケティング事業及びインサイト事業を行う子会社等の経営管理及びそれに付帯または関連する事業 |