―職場復帰後の“攻めの一手”―
【ナレーター】
その後、結婚、出産を経て育児に専念することになった加藤。その中で価値観や考え方が大きく変化したと語る。
【加藤】
初めて育児というものに向き合って、かなり大変だなと思いました。仕事の方がすごく楽だなという気持ちがありました。それでもすごく良かったことは、もちろん子どもの成長に寄り添えるということもありますし、普通の人の暮らしをきちんとできたということです。
20代の私は、朝から晩まで会社で働いて、夜10時とか11時から仲間と飲みに行って、会社の近くのマンションにタクシーで帰って、また朝会社に出てという生活で、これは普通の人の暮らしではなかったんですよね。それが、育児休職の間は、スーパーに行ったり、昼間、子供を連れて町を散歩したりするなど普通の暮らしをしていました。その中で「市役所にはこういう人たちが来ているのだな」とか、「この駅はエレベーターがなくて、ちょっとお出かけするだけでも不便だな、億劫になるな」とか「階段があっても誰も助けてくれないな」と思う機会がありました。こういう普通の暮らしの先をもっとよくする仕事をしたいなという感覚の変化みたいなものが、とてもありましたね。価値観や感覚が広がりましたし、タイムスパンも長くなりました。
新規事業とかインターネットの仕事というのは、スピード命なので、1日でどれだけPDCAを早く回すのか、1週間でどれだけ改善するのかという世界です。けれども、子育てを通じて人生に対する考え方や社会に対する考え方の幅はすごく広がったと思います。
そこには、例えば子育て1つとっても、20年単位のプロジェクトで、その先がどうなるかも分からないし、そもそも自分のものではないという、自分の影響力ではどうにもならないこともたくさんあるというような、よく言えば謙虚、悪く言えば少し諦めも含まれています。
【ナレーター】
その後、職場復帰した加藤は働き方を見直し、在宅勤務が可能な部署へ異動。第一線から離れたかのように見える選択だが、加藤は、在宅勤務は“攻めの一手”だったと振り返る。
【加藤】
周りの評価としては、「加藤さんは仕事の最前線から降りたのだな」という雰囲気でした。しかし私としては、在宅勤務のようにそれこそ化粧もせず、パジャマのままでも仕事できるという生産性の高い状態なら、同じくらいのパフォーマンスが出せるのではないだろうかと考えていました。なぜなら、フルタイムの独身の男性社員とは戦えないと思ったからです。そういう“攻めの在宅勤務”です。育児とか介護とかで仕方がなくということではなくて、戦略的に在宅みたいなものを活用するということを試行錯誤しながらやり始めました。それで結構仕事の成果も出せましたし、今の仕事につながるようなプロジェクトや事業も、その組織からいくつか立ち上げられたかなというふうに思っています。
【ナレーター】
在宅勤務でも高い成果を上げ続けた加藤だが、市場が拡大傾向にあった訪日外国人旅行者と地域を繋ぐビジネスに可能性を見出し、2016年に起業を決断する。
【加藤】
方向性としては、リクルートの社員としてやるというやり方と、それから自分でやるというやり方がありました。たまたまふと外を見ると、自分が若かった時よりも、ずいぶんベンチャー企業環境みたいなものがよくなってきているなと感じました。これはもしかして、必死に社内営業と社内政治を調整して会社から資金を頂くよりも、社外に出て、オープンに足長おじさんを探したほうがうまくいくのではないかというような気持ちになりまして、結果として、独立ということになりました。
経営者プロフィール
氏名 | 加藤 史子 |
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役職 | 代表取締役CEO |
会社概要
社名 | WAmazing株式会社 |
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本社所在地 | 東京都台東区三筋1-17-12 長沼ビル201 |
設立 | 2016 |
業種分類 | 情報通信業 |
代表者名 |
加藤 史子
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WEBサイト | https://corp.wamazing.com/ |
事業概要 | インバウンドプラットフォーム事業(訪日外国人旅行者の日本旅行中に使う 「スマホ向けアプリサービス」を提供) |