WAmazing株式会社 累計45億円超の資金調達に成功する注目のベンチャー。会員数45万人以上の訪日外国人旅行者向けサービスを展開 WAmazing株式会社 代表取締役CEO 加藤 史子  (2023年10月取材)

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インタビュー内容

―『じゃらんnet』立ち上げの裏にあった悩み―

【ナレーター】

リクルート入社後、『じゃらんnet』という宿泊施設のオンライン予約サービスの立ち上げに参画。インターネットの普及とともにサービスの知名度は高まったが、加藤はあるジレンマに悩まされていたという。

【加藤】

今まで旅行は、写真やパンフレットなどで見て、実際行ってみると「イメージと違った」とか、「改装されていたのは玄関だけだった」など、がっかりするようなことが多かったんですね。それがインターネットになったタイミングで、我々は口コミという、消費者の感想、実際行った方の感想というものをネットに掲載し始めました。それによって、期待と現実のギャップを大きく縮めることができました。それは消費者にとっては非常に価値があることでした。一方、広告事業でお金を出していただいているクライアントに対する不満の内容、悪口がネットに載って広報されてしまうということに対しては、現場の営業やお客様からの強い反発がありました。

本来仲間であるはずの社内の同僚から、「ネットでこの内容を載せたせいで、今度は本の広告掲載の年間取引が落ちました」というようなことを言われると、結構営業担当の査定や成績にもダイレクトに響く内容ですので、辛いなという気持ちはありましたね。仕方がないのですが。本の方は広告でお金を取っていて、ネットの方は1予約あたり何パーセントという成約課金、この2つの両立し得ないビジネスモデルでしたので。こちらを今やめてしまうには、まだこちらの事業が育っていない。こちらを育てていかなければならないから、口コミ掲載みたいなものにも舵を切るという、短期利益を重視しながら、中長期のビジネスをつくるという、やや矛盾したことをやらなくてはならないので、その間で一番ハレーションが起こりました。

せっかくインターネットという、消費者や企業、事業者がフェアにつながるメディアができたのに、それをごまかしというか、その特性を使わないのはとてももったいないと思いました。また、インターネットというメディアは、オープンさとかフェアさとか、透明性とか、「なんでもあり」なところにこそすごいパワーがあります。それこそが最終的には消費者の力になるし、消費者に価値を提供できているということは、必ず会社の利益にも戻ってくることだという意識は強くありました。自分がどんなに間接部門に従事していても、「自分の給料の出どころを意識しろ」というようなことはよく言われたので、最終的に誰がお金を払ってくれるんだ、その人が何に価値を感じるのだというところが、一番のベースのところですかね。

―職場復帰後の“攻めの一手”―

【ナレーター】

その後、結婚、出産を経て育児に専念することになった加藤。その中で価値観や考え方が大きく変化したと語る。

【加藤】

初めて育児というものに向き合って、かなり大変だなと思いました。仕事の方がすごく楽だなという気持ちがありました。それでもすごく良かったことは、もちろん子どもの成長に寄り添えるということもありますし、普通の人の暮らしをきちんとできたということです。

20代の私は、朝から晩まで会社で働いて、夜10時とか11時から仲間と飲みに行って、会社の近くのマンションにタクシーで帰って、また朝会社に出てという生活で、これは普通の人の暮らしではなかったんですよね。それが、育児休職の間は、スーパーに行ったり、昼間、子供を連れて町を散歩したりするなど普通の暮らしをしていました。その中で「市役所にはこういう人たちが来ているのだな」とか、「この駅はエレベーターがなくて、ちょっとお出かけするだけでも不便だな、億劫になるな」とか「階段があっても誰も助けてくれないな」と思う機会がありました。こういう普通の暮らしの先をもっとよくする仕事をしたいなという感覚の変化みたいなものが、とてもありましたね。価値観や感覚が広がりましたし、タイムスパンも長くなりました。

新規事業とかインターネットの仕事というのは、スピード命なので、1日でどれだけPDCAを早く回すのか、1週間でどれだけ改善するのかという世界です。けれども、子育てを通じて人生に対する考え方や社会に対する考え方の幅はすごく広がったと思います。
そこには、例えば子育て1つとっても、20年単位のプロジェクトで、その先がどうなるかも分からないし、そもそも自分のものではないという、自分の影響力ではどうにもならないこともたくさんあるというような、よく言えば謙虚、悪く言えば少し諦めも含まれています。

【ナレーター】

その後、職場復帰した加藤は働き方を見直し、在宅勤務が可能な部署へ異動。第一線から離れたかのように見える選択だが、加藤は、在宅勤務は“攻めの一手”だったと振り返る。

【加藤】

周りの評価としては、「加藤さんは仕事の最前線から降りたのだな」という雰囲気でした。しかし私としては、在宅勤務のようにそれこそ化粧もせず、パジャマのままでも仕事できるという生産性の高い状態なら、同じくらいのパフォーマンスが出せるのではないだろうかと考えていました。なぜなら、フルタイムの独身の男性社員とは戦えないと思ったからです。そういう“攻めの在宅勤務”です。育児とか介護とかで仕方がなくということではなくて、戦略的に在宅みたいなものを活用するということを試行錯誤しながらやり始めました。それで結構仕事の成果も出せましたし、今の仕事につながるようなプロジェクトや事業も、その組織からいくつか立ち上げられたかなというふうに思っています。

【ナレーター】

在宅勤務でも高い成果を上げ続けた加藤だが、市場が拡大傾向にあった訪日外国人旅行者と地域を繋ぐビジネスに可能性を見出し、2016年に起業を決断する。

【加藤】

方向性としては、リクルートの社員としてやるというやり方と、それから自分でやるというやり方がありました。たまたまふと外を見ると、自分が若かった時よりも、ずいぶんベンチャー企業環境みたいなものがよくなってきているなと感じました。これはもしかして、必死に社内営業と社内政治を調整して会社から資金を頂くよりも、社外に出て、オープンに足長おじさんを探したほうがうまくいくのではないかというような気持ちになりまして、結果として、独立ということになりました。

―WAmazingの経営戦略と展望―

【ナレーター】

訪日外国人旅行者をターゲットに通信サービスやアプリケーションサービスなど、より良質な観光を楽しんでいただくための事業を展開するWAmazing。熱を帯びるこの業界で加藤はどのような戦略でその名を広めようとしているのか。

【加藤】

日々、アプリのインストール数が増えていっております。そうなってくると、確実にその人たちは日本旅行に来る人たち。なぜなら、無料のSIMカードは日本の空港でしかもらえないからです。そうすると、日本の旅行に興味がある、もしくは予定がある人たちのスマホの中に入り込むということに成功しますので、そこから「日本にはこんな地域があるんだよ」とか、「こうやっていけばいいんだよ」とか、「こんな遊びが予約できるよ、こんな買い物ができるよ」というような情報発信ができます。

また、情報発信に留まらず、そのアプリの中で予約ができるサービスをつくっていくというような会社です。訪日観光客が増えているので、日本の事業者の皆様は、今彼らに向けたサービスをどんどん出しています。例えば、バス会社さんだったら、日本中のバスが乗れる外国人向けのパスを出そうですとか、飲食店だったら、外国人向けのメニューをきちんとつくって、お得なセット価格を展開しようとか、皆さん、自分が持っている商品を外国人向けにするということは、今かなりされてきています。ですが、それを情報発信する場所がない、マーケティングをどうすればいいのか(わからない)というところでストップしてしまうのです。知りたいと思っている外国の方、その人たちのために用意された商品をつくっている日本の事業者さん、その両者が出会う場所をつくりたいなというふうに思っています。

今、香港、台湾のみですが、年内には中国大陸に対応したサービスを出します。今後は韓国やタイやASEAN各国にも広がっていきます。空港に関しても、年内だけでもおそらくあと5つくらいの空港には広がっていくと思います。そしてユーザーを増やしていくということですね。コンテンツの方は、今、メインで宿泊施設が1万件以上入っておりますが、これから冬なので、スキー場の予約サービスというものもスタートしていきますし、交通ですとか買い物ですとか、旅行に必要なものは全て入れていきたい。この両輪を回すことで、そこで人の商いが起こるというか、市場、マーケットプレイスですので、色々な旅行商材の購入が起こると、事業者さんの儲かった分の何パーセントかを弊社もくださいというようなビジネスモデルになっています。

―求める人物像と視聴者へのメッセージ―

【ナレーター】

WAmazingで働く人材と求める人物像について、加藤はこう語る。

【加藤】

今入って来ているメンバーも、結構プロフェッショナルなスキルを積んだ30代中盤の人材が多く、今の会社でもかなり活躍している方が多いです。ただ、(自分が今いる)この会社だと10年、自分はどういうふうにやっていくのだろうというところに少し迷いが生じて、もう一度大企業ではないところとか、組織に守られていないところで腕試しをしたいという人が多いと思います。また、ベンチャーからの転職も比較的あります。そのベンチャーが成長軌道に乗るまで頑張ってきて、もう結構きちんとした会社になってきたので、もう一度ベンチャーをやりたいという、本当に尊敬するような、「もう一度ですか!?」という人たちもいらっしゃいますね。職種としては本当に全方位です。マーケティングも必要ですし、事業アライアンス、提携のできる人材、事業開発のできる人材、あとエンジニアリング。全方位なのですけども、総じて言えるのは、まだ正直不確定なこのベンチャーの未来を、一緒につくるのが楽しいと思えるような人です。

人間には2種類の方がいて、見えない未来が楽しいと思う人と、見えない未来が不安で仕方ないと思う人がいると思うのですが、自分たちが未来をつくることにワクワクして仕方がない、そのために一緒に頑張っていきたいという人に、ぜひ仲間になってもらいたいなと思っています。

―視聴者へのメッセージ―

【加藤】

我々は、今日本に増加していく訪日外国人旅行者向けのサービスを展開しています。世界を旅行する人々というのはどんどん増えていて、今12億人くらいですが、2030年には18億人になると言われています。そしてその増加の内訳をみると、多くが日本周辺のアジアの国々の人たちなのです。つまり、今アジアの国々というのは一番経済成長力が強い地域です。その人たちの成長の活力を、日本が持っている自然や文化、食べ物や遊びなど、そういうものの資源でその成長力を取り込めて、日本も元気になれる、そんな産業ですので、ぜひ、それを一緒に実現してくれる仲間を今探しております。

まだ創業1年3ヶ月なので、決まっていないことも多いですし、何をやれというミッションも明確にあるわけではなかったりします。ただ、そういう状況にワクワクするような、野武士のような自覚のある人、男女問いません、年齢不問でございますので、ぜひWAmazingの門を叩いてもらえればなと思います。

【ナレーター】
インバウンド向けのOTA事業を軸に、さまざまなビジネスを展開しているWAmazing株式会社。

2017年1月にリリースした旅行支援アプリ「WAmazing」は、日本国内の宿泊施設や観光アクティビティ、交通機関などの検索・予約・購入が可能で、会員数は45万人を誇る。

近年では、インバウンドの取り込みを強化したい事業会社との戦略的な資本業務提携を推進しており、日本の魅力を世界に発信すべく、挑戦を続けている。

「日本中を楽しみ尽くす、Amazingな人生に。」というビジョンのもと、躍動する創業者が見据える未来像とは。

【ナレーター】
自社の特徴について、加藤は3つの主力事業を挙げて次のように語る。

【加藤】
オンライントラベルエージェント事業では、外国人旅行者の5大消費である、買い物、宿泊、飲食、交通、娯楽サービスという5つの領域の事業社さんが我々の顧客、クライアントとなります。

クライアントの情報・商品をインターネット上に載せ、外国人旅行者に届けます。外国人旅行者が旅の前にいろんな日本の素晴らしい観光資源を知って、宿泊手配やお土産の購入などができるようにする、インターネット上の旅行会社です。

2020年4月からは訪日外国人旅行者の回復を見据え、地域のDX(デジタルトランスフォーメーション)や、インバウンド集客対応をコンサルティングする地域DX事業を立ち上げています。

行政や観光協会、地域の民間事業者様がいかにインバウンド観光で稼ぐ力をつけるか、伴走しながらコンサルティングをさせていただいています。

また、訪日マーケティングパートナー事業を2022年11月に立ち上げました。こちらは比較的大手の民間企業様で、インバウンドの消費、バイイング・パワーを取り込みたいという際のサポートをさせていただく、広告代理店のような事業を行っております。

【ナレーター】
加藤のファーストキャリアは、人材サービスを提供する大手企業だった。新卒で入社し、新規事業開発に従事。多くのプロジェクトに携わり、順調にキャリアを重ねていったが、日本が抱える、ある社会問題を解決したいと思ったことが独立のきっかけになったと振り返る。

【加藤】
日本人の人口減少は著しい状態になり、外国人旅行者が増えてきているなか、地域のことを考えると、日本人による国内旅行市場の活性化で地方創生を目指すだけではなく、「訪日外国人旅行者の消費を地域の元気に結びつけられないか」という気持ちが大きくなりました。

それが独立のひとつのきっかけだったと思います。

【ナレーター】
そして2016年にWAmazingを共同創業。訪日外国人旅行者向けのサービスを展開し、創業1年で累計資金調達額10億円を超えるなど順調なスタートを切る。

しかし2020年、新型コロナウイルスの影響により、インバウンド需要が激減し、売り上げがほぼゼロになるという危機的状況に陥る。これを乗り越えるべく、加藤が打った手とは。

【加藤】
(2020年)2月14日、台湾の公衆衛生の整備をつかさどる、日本でいうところの厚生労働省のような機関が日本への渡航について注意喚起を出しました。

これにより、マーケットがいずれおそらくゼロになるだろうと予測し、打てる手を全て打っていこうと、頭を切り替えました。

打てる手というのは本当にシンプルな話ですが、企業というのはキャッシュフローが大事です。お金が尽きたら終わりですので、キャッシュアウト、つまりお金が流出していくのを止めることをまず行いました。

また、既存の事業は売り上げが上がらないため、新しい事業を作り、売り上げを稼ぐという手を打ちました。

ただし、新規事業の売り上げだけでは100人以上いた従業員の雇用を維持できないため、エクイティという株式を使った資金調達も行っています。これら3つの対策を通じて何とか生き抜こうと考えました。

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経営者プロフィール

氏名 加藤 史子
役職 代表取締役CEO

会社概要

社名 WAmazing株式会社
本社所在地 東京都台東区三筋1-17-12 長沼ビル201
設立 2016
業種分類 情報通信業
代表者名 加藤 史子
WEBサイト https://corp.wamazing.com/
事業概要 インバウンドプラットフォーム事業(訪日外国人旅行者の日本旅行中に使う 「スマホ向けアプリサービス」を提供)
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