株式会社Ubicomホールディングス メディカルとテクノロジーを軸に、22,000超の医療機関を支える上場企業。 医療・金融・製造分野を中心に、幅広い領域でDXを推進。 株式会社Ubicomホールディングス 代表取締役社長 青木 正之  (2025年3月取材)

インタビュー内容

-チャレンジが人を成長させる-

【ナレーション】

その後、親会社のワールドに転籍。チャレンジ精神と失敗への考え方について、多くの学びを得たという。

【青木】

ベーシックなところだけ気をつけろ、そして決断するときは思い切って行け、失敗したらそれを経験としていけば、次は起こさないだろうということを学びました。

チャレンジして失敗した人は、一番傷ついているわけですよね。僕は社員のことを仲間と呼んでいますが、そういった仲間が傷ついているのに、上司ぶりして、「お前はなにをやっているんだ」という態度で接すると、社員の気持ちがどんどん小さくなりますよね。それは良くない。

一方で「それを糧にして次にチャレンジしろ。俺が責任をとる」という態度を示すと、がぜん気持ちを強くもって頑張ってくれるのです。自分のポジションを守るために他を犠牲にするということは、僕は良くないと思っています。ワールドという会社はそれを教えてくれました。

上司は部下を評価しますけど、部下から上司も評価されるという、そこのバランスが取れている企業は強いと思いましたね。

-独立への不安を払拭した「経験則」-

【ナレーション】

1995年に発生した阪神淡路大震災の影響による、ワールドの飲食事業の縮小に伴い、新規事業子会社の経営を任された青木。ハードウェアの販売に携わる中で、ソフトウェアの需要が高まっていくことを予期し、2005年に独立を果たした。

【青木】

先輩たちにはハードウェアの会社をやっていただき、僕はソフトウェアの会社を手掛けますということで、今から12、3年前にがんばっていこうということで独立しました。

不安はなかったですね。なぜかというと、これまで営業や企画を経験して、お客様に喜んでもらい、サービスやハードウェアを買っていただきました。その経験値の中で必ずお客様を喜ばせる自信があったのです。この価格で買う理由、価値がきっとあるはずです。

サービスも同じで、カスタマーファーストでないと、決して買ってはいただけませんよね。例えば機能が多いというだけのものより、リアルにお客様がほしいサービスや、ほしい機能をローコストで多数ご案内できたら、間違いなく買っていただけるわけです。

そういう経験を積んでいましたので、ソフトウェアでも勝てると思ってきましたね。

-Ubicomの強みと主要ビジネスの全貌-

【ナレーション】

英語は勿論のこと、日本語環境にも対応できるフィリピン人エンジニアを育成・活用し、ニーズを捉えたITソリューションサービスを国内外に展開、グローバルに支持を集めているUbicomホールディングス。この事業の強みに迫った。

【青木】

どうやって優秀な人材を集めているかという話を一つ申し上げると、日本の平均年齢は今47歳ですが、一方でフィリピンの平均年齢は24歳になっています。10年前はどうだったかというと約23歳と、非常にリソースリッチな国であることがわかりますね。

フィリピン全土から毎年約4000名が当社に採用エントリーされます。主に理系院卒、大卒生です。その後、採用選考を経てめでたく新入社員になる方は約170名、たったの4%です。何故なら、短期間(5ヶ月間)で日本語検定4級レベルの習得を課しますので、学力が高くないとついていけません。

また、日本の情報処理技術者試験、フィリピンではPhilNITSと言いますが、こちらも短期間で合格まで導きます。最後に、これは特に学生の皆さんに見てもらいたいくらいですが、10年後の技術や社会を見据えて、私はこのようなビジネスとマネタイズモデルをつくりますと、全員が日本語で発表するのです。

これが当社の強みで、これまで1000名弱のエンジニアを育成してきました。全員日本語ができるので重宝いただいています。日本は少子高齢化になっていますから、エンジニアが37万人くらい不足しているのです。ITのない世界なんてほとんどないですよね。そうした要因から、おかげ様でずっとオーガニックグロースで業績を伸ばしています。

【ナレーション】

Ubicomホールディングスを支えるもう一つの柱が、レセプト点検システムなどの医療最適化ソリューションを開発・提供するメディカル事業だ。

【青木】

皆さんが医療機関にかかられますと診療報酬点数(保険診療を点数化したもの)が出ます。それが正しいかどうかをチェックする審査支払機関に、医療機関がレセプト(診療報酬明細書)を提出して、間違いがなければ保険負担分の支払いを受けることができます。

しかし返戻と言って、間違いを指摘されて差し戻されるケースが結構あるのです。そこで、当社のRPA(ロボティクス技術による業務自動化)を用いたレセプト点検システムが各種電子カルテパッケージに組み込まれており、現在15,000強の医療法人に入っています。

当社のシステムで返戻対策をすることで、例えば診療報酬として1000円を請求したところ、800円しか支払われませんでしたとなるより、200円プラスで戻ったほうがいいですよね。

このような病院経営に資する事業のオーガニックグロースにより、経常利益の前年比伸び率は平均43%(2018年度実績)と毎年順調に伸びています。

-求める人材像-

【ナレーション】

求める人材像について、自らビジネスを提案でき、成長意欲の高い人を挙げた青木。その真意とは。

【青木】

例えばUbicomグループにはリソースや色々なアセット(資産)がありますが、「それを活用してこういうことをやれば、もっと儲かります」といった提案をしたりそれをコミットできたりする方を求めています。

日本人はなかなか約束をしません。約束といっても、それを破ったからどうこうということではないのです。

目標設定が明確にあり、そして自分の想いをぶつけられる方。そしてそこできちんとマネタイズを起こして、自分も大きくなれる方。僕が求める人材はそういう方ですね。年齢は関係ありません。年齢を重ねた方でも良いのです。

ランニングと一緒です。ウォーキングは地に足を着けますが、ランニングは着いている時間が少ないですよね。人間というのは、忙しくされている方に用事がどんどん舞い込んでいきますよね。特に日本はそうだと思います。

何時から何時までこの仕事をやりますと決めるのも悪くはありません。当たり前のことですし、真面目で良いことです。けれども自分が目指す方向はこっちなのだろうかと、必ず悩んでしまうのです。

何故かというと、時間があるからです。時間がない人、目標設定がある人は必ず有効に段取ってやります。そういう訓練を受けている方だし、きっと想いがそうだからです。

そうでない方はだめかというと、そうでない方こそ、「こんなことやりたい」と思うべきですね。Ubicomはそういう人を求めます。

-笑顔が生み出す力と視聴者へのメッセージ-

【ナレーション】

ワールドで当時導入されていた「奥様賞与」という制度を参考に、Ubicomホールディングスでも「家族賞与」という形で同様の制度を取り入れていると語る青木。この制度に込めた想いとは。

【青木】

社長だけが良い思いをするとか、役員だけが良い思いをするとかいうのはあまり僕は好きではありません。苦しい時もありました。ただそれでもやはり社長たるものはお茶漬を食べて、社員のみなさん、仲間のみなさんにはお肉を食べていただくという気概がないとならないと思います。

出資をいただくこともあると思いますが、そういう中でトップがそう(自分だけが楽をする)というのはいかがなものかと僕は思いますね。

【ナレーション】

自身の原動力に「笑顔」と答えた青木。笑顔で過ごせるかどうかが自己の成長やビジネスを成功に導く上でも、重要なことだという。

【青木】

笑う時というのは、楽しい時や嬉しい時、そういう時ですよね。ですからしんどい時は、いわゆる「難ありありがとう」ですね。「難があったらありがとう」。

ほとんどは越えられますから。それは逃げてはだめで、自分で受けた限りはその何倍のリスクを、覚悟を決めて行うことです。

もうひとつは、一足飛びというか、ジャンプはいけませんね。精一杯背伸びをするのです。そうしたら地に足が着いていますから。ずっと背伸びをしていると、人間は疲れます。疲れるけど、鍛えられるのです。

これが慣れてきますので、みなさんもやられたらいいと思いますよ。身長を高くしようとずっと背伸びしていると本当に勝手に少しずつ高くなっていくと思います。ビジネスも同じだと思います。

-視聴者へのメッセージ-

【青木】

自身でマネタイズを起こす、Ubicomのプラットフォームを活用して自分でビジネスを起こすような経営の魂をもって参画いただける、もしくはそういった提案ができる方。若い方でも、明確なビジネスプランを持っていれば、我々としてはそういう人材を求めると思います。

少々高いレベルの言い方をしていますけど、本当に速いスピードで今、大改革がこの世の中で起ころうとしています。また、我々もそれをしようと思っています。

したがってそういった前向きな世の中で、世界を股にかけてこういうことをやってみよう、というような明確な考えのある方であれば、前向きによろしくお願いしたいと、このように思います。

- 第3の柱とアジア戦略-

【ナレーション】

既存事業のグローバル事業、メディカル事業に続く次の一手としてUbicomホールディングスが取り組んでいるのが、成長企業との協業・資本提携・M&Aを通じて、相互的な事業発展・市場参入・企業価値の向上を目指すWin-Winインベストメントモデルの推進、そして新規事業の創出だ。

【青木】

新しいテクノロジーで世間や日本の国益に資するような企業様があれば、当社がご出資します。そして、当然エンジニアが不足していますから、当社のエンジニアを活用してコストセービングしていただきつつ、当社も開発支援で収益を得る仕組みになります。

色々なベンチャーの企業様や、逆に大手企業様からも、Ubicomともう少し深く提携しようという話をいただいています。

もちろん当社としては取捨選択してプライオリティを決めてやっていこうと思っています。そこはオーガニックグロースの伸長に加え、さらに新しい事業を上乗せして、どんどん皆さんと、当社グループのみんなで楽しんでやっていただきたいですね。

【ナレーション】

海外展開について、今後はアジアマーケットの拡大もしていく方針だ。

【青木】

やはりアジアパシフィック、その中でも人が多いところにはきっとサービスの広がりも大きいでしょうし、リソースが多い場所であれば、エンジニアの教育・育成の点で当社はノウハウがあるので、先方の財閥等とアライアンスなどをして、Ubicomのフラグを各地に立てていきたいと考えています。

日本を大きくサポートし、そして各国にも日本の魂を入れたビジネスを興せられればいいなと思っていますね。

【ナレーター】
テクノロジー領域とメディカル領域を中心に、革新的なITソリューションサービスを提供する「株式会社Ubicomホールディングス」。

英語と日本語に堪能な約900名のエンジニアを擁し、国内外の、主に医療・金融・自動車・製造などの領域における主要企業の開発パートナーとして、自動化や分析などの先進技術を搭載したソリューション開発を行っている。

また、近年ではAIを活用した新たな医療サービスの開発やM&Aを積極的に推進しており、さらなる事業拡大に向けた挑戦を続けている。

確固たる思いのもと、事業を立ち上げ、成長させた創業者の軌跡と、思い描く成長戦略に迫る。

【ナレーター】
自社の強みについて、青木は約30年にわたり取り組んできた実績にあると言い切る。

【青木】
今900人以上のエンジニアがいますが、これには、かれこれ30年の歴史があります。フィリピンには、もともと日本語の教育課程がありません。その中で、私たちは社内スクールを各拠点に設け、日本語の先生とIT技術の先生が両方のスキルセット、ケイパビリティをしっかりと高めています。これは普通はできないことで、我々の大きな強みだと考えています。

メディカル事業については、リカーリングモデル(いわゆるサブスクリプションモデル)を採用しており、65%の利益率を上げています。

一方で、電子カルテが導入されていないと利用できない商品も我々は持っています。電子カルテというと、多くのクリニックや病院に導入されていると思われるかもしれませんが、実情は半分程度しか入っていません。

これに対し、厚生労働省は2030年に向けて電子カルテの普及を推進しています。背景にはマイナポータルと保険証のリンクがあり、皆様のカルテ情報などがAPI連携されていきます。これが実現すれば、患者さんのアレルギーや既往症といった情報が即座に共有され、迅速な処置が可能になります。我々はまさに、そちらにも目を向けています。医療データベースを30年間持ち続けてきた強みが、ここにあります。

【ナレーター】
青木の経営者としての原点は、1995年に発生した阪神・淡路大震災だった。大手アパレルメーカーの子会社に就職したが、震災の影響でサービスの提供ができない中、本社への異動とともに、新規事業部門を任される。当時の状況を踏まえて、青木が着目したのがITだった。

【青木】
当時はまだ「IT」という言葉すらない時代でしたから、どこかと組もうという話になりました。そこでフォーバルの大久保社長と出会う機会があり、ワールドとフォーバルの合弁会社(出資比率60対40)が設立されました。フォーバルはもともとOA機器販売や携帯電話の販売などを手がけていらっしゃいました。その情報通信部の方々と話す機会が非常に多くなりました。

そこで出てきたのが「人材」、つまり「IT人材がこれから相当必要になる」という課題です。日本がまさしく少子高齢化に突入するタイミングでしたから、日本人だけでは足りないだろうと。そこで東南アジアを回ったところ、フィリピンの会社が売りに出ているという話があり、初めてM&Aを実行してグループに迎え入れました。

ところが、本体からすると、どういうビジネスを展開するのかよく分からないという話になり、「それなら私が引き継いでやります」と。他の方に経営をお任せし、そしてAWSという会社を創業しました。

【ナレーター】
晴れて、社長としての第一歩を踏み出した青木。当時から現在に至るまで、大事にしていることがあるという。

【青木】
ビジネスが右肩上がりで進む姿を描きながら経営するわけですが、当然ながらボラティリティ(変動)は出てきます。アップステージ(上昇局面)の時は皆が一生懸命やりますが、私が一番のポイントだと思うのは、ローダウン(下降局面)になった時です。

私自身は根っから明るい性格だと思うので、「まだまだチャンスがあるな」と捉えるようにしています。これは今も経営において実践していることです。

やはり業績が落ち込んだ時に、いかにしてキャッチアップし、スケールモデルを作り直すか、ということにワクワクします。「大変だ」と感じる状況でも、そもそもの問題が何だったかを理解できれば、それを直すことで全て利益に変えられます。ですから、それを常日頃から考え、繰り返していくわけです。

幹部も問題があれば当然頭を悩ませますが、「一番大事な原因を追求をして改善すれば、必ず利益につながる」という意識で、それぞれのディビジョン(部門)で実践してくれていると思います。

「今が得か、先が得か」という2つの概念があると思います。「今が得」というのは、仮に、目先の数字を達成することが得につながるという考え方です。しかし、我々は「先々、もっと細かく社会貢献をして事業を大きくするんだ」という、夢のようですが現実化すべき目標を持っています。そのためにどれだけアンテナを張り、どれだけ道筋を作れるかが非常に大事です。

ただ、道は一つしか進めません。ですから、常日頃から2本、3本の道を考えながら進んでいくことが大切です。それが、当社の「Unique Beyond Comparison(他社の追随を許さない独自性)」、すなわちUbicomの一番のコアコンピタンスだと思います。

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経営者プロフィール

氏名 青木 正之
役職 代表取締役社長
生年月日 1958年7月29日
出身地 大阪府
座右の銘 夢道半ば
尊敬する人物 松下幸之助
略歴
1958年生まれ。大阪府出身。85年、株式会社ルモンデグルメ(株式会社ワールド子会社)入社。同社取締役を経て、95年、親会社ワールドに転籍、創業メンバーより直接指導を受ける。98年、子会社の株式会社ワールドクリエイティブラボ転籍により、IT業界に進出。05年、株式会社WCL代表取締役社長就任。同年、株式会社AWS(現 当社)設立、代表取締役会長(現 代表取締役社長)就任。16年6月、東京証券取引所マザーズ市場上場。17年12月、東証第一部へ最短での市場変更を果たす。

会社概要

社名 株式会社Ubicomホールディングス
本社所在地 東京都千代田区一番町21 一番町東急ビル7F
設立 2005
業種分類 情報通信業
代表者名 青木 正之
従業員数 977名(グループ全体、2025年3月末時点)
WEBサイト http://www.ubicom-hd.com/
事業概要 テクノロジーコンサルティング事業、メディカル事業(レセプト点検ソフトなどの提供)
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