【ナレーター】
自動車、バイク用品の中古パーツ買取・販売店の直営及びFC展開、ITを通じて新品カー用品の流通卸売事業などを手掛ける「株式会社クルーバー」。
同社の祖業のひとつである『アップガレージ』は、カー&バイク用品のリユース専門店だ。全国で219店舗展開しており(2022年11月時点)、店舗数、売上高、取扱点数、市場シェア率において国内トップを誇る。
その他にも自動車関連事業に特化した人材紹介サービス『BoonBoonJob』など、その事業領域を拡大させている。
2021年12月に東京証券取引所のJASDAQ(現スタンダード)市場へ上場を果たし、成長を続ける同社を牽引する経営者・石田。その波乱万丈の軌跡と見据える展望とは。
【ナレーター】
1990年代の創業当時、『アップガレージ』は市場として未成熟だった自動車、バイクの部品買取・販売という業態にいち早く着目し、シェアを伸ばすことに成功した。
そして、「今後成長の鍵になるのは、オンラインとオフラインの融合だ」と石田は語る。
【石田】
拠点を設けることによって、オンラインではなかなかやりきれないサービス、販売の仕方などが保証されるということが、お客様の安心感につながっていくのかなと。
当社の業態ですとお客様から商品を買わせていただくということがあります。
ECサイトを使って買取をさせていただいているので、Webから売却という方も結構増えてきてはいると思うのですが、一部には「実店舗を回りたい、近くの店舗に持ち込みたい」という方もいらっしゃいます。
ある種のブランド強化と、来店されるお客様の受け皿として店舗展開を重要視していきたいと思っています。
そして、通常の商品とは別に、当社ではたとえばタイヤ交換など“部品の取り付け・取り外し作業”も請け負っているんですね。
これも当社が提供する重要なサービスのひとつだと思ってますので、Web一辺倒にせず、実店舗の充実化を図っているのはそういった理由からです。
【ナレーター】
石田の原点は学生時代にまで遡る。父と兄が中古車販売の事業を立ち上げる一方、自身は自動車業界とは違う道に進もうと考えていた。
しかし、ある出来事により事態は急変する。
【石田】
実は事業を立ち上げた直後に、父が亡くなってしまったですね。
私は全然関係ない世界に行こうと思っていたのですが、結果的に事業を手伝い始めて。大学に通いながら兄の右腕として、二人で会社を切り盛りしていきました。
会社経営は面白かったですし、中古車販売をするという事業自体も非常に魅力的に映りましたね。
あと、少し生意気な言い方をすると、当時の中古車業界はとても遅れていたので、近代的な施策をすることで他社と差別化が図れ、企業を大きく成長させられるのではないかという予感があって。
結果的に大学に行きながら経営にのめり込んでいって、そのままビジネスの道に入ってしまったんですね。
【ナレーター】
兄と二人三脚で経営した中古車販売店『オートフリーク』は、神奈川県を中心に順調に店舗を増やす。しかしバブル崩壊後の景気悪化により成長は停滞し、石田は新たな事業の柱を模索することとなる。
このときに着目したのが、中古車の部品だった。
【石田】
下取りや処分をしてくれと頼まれる車の中にまだまだ使えるパーツがたくさんあり、それらを洗浄し、磨いて、1個100~200円ぐらいで店舗に置いたところ、しばしば買っていく方がいらっしゃって。これはビジネスとして成立するのではないかということで。
当時は収入がなかなか上がらなくて、消費者の方が生活防衛的に、とにかく低単価のものを求めていたということ。
それと環境保全に目を向けられた頃だったものですから、いわゆるリサイクルとかリユースというのが、ちょうど90年代終わりぐらいからぐーっと出てきているタイミングでした。
もともと中古車というのはリユースなんですけれども、これを車業界の中で突き詰めて、中古車とは違う形でリユースの業態をつくれれば、ビジネスとして成立するのではないかという仮説を立て、スタートしたのが『アップガレージ』です。
【ナレーター】
「アップガレージ」は時流に乗り、業績は順調に推移。2004年に東証マザーズへと上場を果たす。
その後、ECの機運が高まり、異業種協同でのモール型ECサイトを立ち上げるも、業績を伸ばすことができず撤退。
しかし、将来を見据えた継続的な拡大を図るためには、再度EC販売の、大胆な拡充と、自動車関連の新事業の開発は必須と考え、2012年に上場廃止という決断を下した。
その真意について石田はこう振り返る。
【石田】
私の当時のイメージですと、2~3期に渡って大幅に赤字を計上することが想定され、当時の株主の皆様のご理解が得られるのかという懸念がありました。
やはり開示をしなければいけない関係上、競合企業様に当社のいろいろな動向がつぶさにわかってしまう。上場のステータスのまま新規事業に取り組むと、こういった弊害が出てくることがあるなと。
上場を維持しながら事業を続けていくことで、スピード感が削がれる可能性が高くなるため、心情としては51対49の難しい選択でしたが、決断しました。