【ナレーター】
製膜・発泡・成型をコア技術とする総合プラスチック加工メーカー、アキレス株式会社。
シリーズ累計販売数8300万足を誇る、ジュニアスポーツシューズ「瞬足」をはじめ、エアーテント、レスキューボート、断熱資材、車輌資材、マットレスなど、幅広い事業領域において多様な製品を手掛けている。
近年では防災事業に注力しており、栃木県足利市や北海道美唄市など、のべ12の自治体と災害協定を締結。その存在感を際立たせている。
「『社会との共生』=『顧客起点』」という企業理念のもと、豊かな社会の実現に向けて躍動する、経営者の思いに迫る。
【ナレーター】
自社の強みは、8つの事業がそれぞれで培った技術を融合して、付加価値を創出することだと、日景は言い切る。
【日景】
私どもは大手自動車メーカーに、シートの内装材、消費材を納めていますが、最近では静電気をコントロールする素材をビルトインした製品をご提案しています。静電気のコントロールは運転時の走行安定性にもつながることから、メーカーと一緒になって検証、評価を行い、採用につながりました。
これらの製品は8つの事業を融合して価値を生み出した代表的な例です。8つの事業で培ったコア技術を融合することで、人間がいる空間をより快適にできると思っています。快適な生活空間を創造する企業でありたいし、それができることを強みとして今後も事業を展開していきたいと考えています。
【ナレーター】
日景の原点は、入社4年目にある。大学卒業後にアキレスに入社し、東京、大阪勤務を経て、新たに竣工された九州の工場に異動。そこで日景は、顧客との取引を通じて、ある重要なことに気付かされたという。
【日景】
当時は発泡スチロール事業が絶好調だったので、九州の新しい工場でも発泡スチロールをつくろうということがバタバタと決まりました。
それまでの私たちのビジネスというのは、横が1m、縦が2m程ある大きな発泡スチロールの塊を、二次加工を行う業者さんに販売するというものでした。ただ、九州はマーケットが大きくはなく、発泡の工程を手掛けている会社が2次加工までやっていました。
ということは、「我々も二次加工まで携わらないと、九州の市場には参入できない」ということで、長いお付き合いのあった軟質ウレタンフォームの加工をしている会社様の一角にスペースを作ってもらい、発泡スチロールの加工機械を入れてもらいました。その加工業者様に発泡スチロールの加工方法を説明して、加工品に関する見積りも私が作成し、一から売上を作っていったのです。
販売をする際には、いろいろな業種のお客様と知り合うことができました。その中で土木の知識や、建築の断熱材の知識、梱包材の知識なども得ましたし、鋳造業の方とお話しする機会もありました。その際、モノづくりはサプライチェーンの川下までを広く知ることが大切だということを教わりました。
また、ビジネスのために様々な情報をくれた20人程の仲間たちや、工場でモノを作っている人たちなど、製造業はチームで仕事をするのだということを実体験から会得したのが、九州での8年半であり、私のビジネスの原体験です。
【ナレーター】
その後、断熱資材事業部長、専務取締役などを経て、2022年、代表取締役社長に就任。日景が注力したのは、8事業部の連携強化だ。それは、「様々な分野において、素材で社会を支える企業になる」という前任者の考えを受け継いだものだった。
【日景】
弊社の総合力でいろいろな価値を生み出していくため、事業部間の壁や、直接部門と間接部門の壁、あるいは営業と製造の壁など、それらの壁をなるべく低くすることに注力してきました。
そして、連携強化によって新しい価値を生み出したいと考えており、その象徴が弊社の総合力を活かした防災事業です。実際に複数の事業部が話し合いながら、この防災事業に取り組んでいます。
WEB上でのセミナーをはじめ、私が社内で発信していることを受けとめてくれて、いろいろなコラボレーションが防災事業に関して生まれつつあるのです。そのように8つの事業が有機的に連携をして価値を生み出すことが重要だと思っています。