ミズノ株式会社 創業120年の日本を代表する総合スポーツメーカー。アスリートを支える技術を応用し、ワーク事業も展開するプライム上場企業 ミズノ株式会社 代表取締役社長 水野 明人  (2025年12月取材)

インタビュー内容

【ナレーター】
「スポーツだけで生き残るのは、もう無理だ」。総合スポーツ用品メーカー、ミズノ。そのトップが下した決断は、巨大な「ワークビジネス」への本格参入だった。

同社が開発するワークウエアやワークシューズは、動きやすさを追求する裁断・設計や衝撃吸収など、スポーツ用品で培ってきた技術を採用。科学的なアプローチで、現場のプロフェッショナルたちが、より快適に、安全に働ける環境を提供し、新規参入の壁が高い同領域において、売上高を伸ばし続けている。

かつてアスリートに捧げた100分の1秒の技術と情熱を、なぜ今、ワークビジネスに注ぎ込むのか。水野明人社長の「徹底した合理性」と「逆説の経営学」に迫る。

【ナレーター】
スポーツ特化という事業構造への危機感。2016年、水野が下した決断は、技術の解放だった。見出した活路は、競技場の外で日本を支える「プロフェッショナルの現場」。巨大な、ワークビジネス市場への挑戦が始まった。

【水野】
日本の市場を考えると、少子高齢化がどんどん進んでいくと。スポーツは基本的にはやはり若い人のものということで、市場そのものを考えると縮小(シュリンク)する可能性が非常に高い。

ですから、スポーツ以外のものも、やはりやっていく必要があるのではないかというところで、最初は2016年頃ですかね。それぐらいにワークシューズをやり始めて。

だんだん市場というか、シェアが上がってきて、アパレルもできるのではないかということで、アパレルもそれに付け加えて。かなり売上高規模も大きくなってきたので、事業部制ということで事業の一つとして確立したという経緯です。

【ナレーター】
低価格こそが最優先とされてきた、従来のワーク市場。そこにミズノは、アスリートが求める「体温調節」や「動きやすさ」を、新たな付加価値として現場のプロを支える機能を組み込んだ。担当社員に話を聞いた。

【社員A】
猛暑対策というのが現場で一番お声をいただくことが多いです。

あとは、今まで着ていたものが当たり前と思っていらっしゃるので、当社が入ったことによって「こんなに動きやすくなるんだ」みたいなことを現場の方からいただくこともあります。

例えば着こなしで、サカイ引越センターさんですと、スポーツウエアのようなTシャツにしていただいて、下半身は今までロングパンツが多かったんですが、ハーフパンツに変えたいという要望があり、スポーティーなスタイルに合うデザインが採用に至った事例があります。

一つの会社様に対して、いろいろなソリューションをずっと提供し続けるのが我々の特徴だと思っています。

【ナレーター】
100分の1秒や1センチなど、シビアな世界で戦うための競技用ウェアの知見を、ワークウエアに落とし込む。この「高機能」のビジネスモデルを確立できたことが、急成長へとつながった。

【水野】
スポーツの世界は非常にシビアですよ。それこそ100分の1秒とか1センチでも高くとか、そういう開発プロセスは、非常にギリギリのところを狙っている。

そういうところから、一般のウェアやシューズというのは、どちらかと言えば価格志向的なものが多かったと思うんですよね。

予算がこれだけあり、この予算内でやってくれたら、機能としてはこれだけのことができて、こういう素材を使う。でも「それだと高くなるから無理やで」ということはあったと思うんですよね。

ただ、我々がウエアやシューズなどの機能性を上げることがいかに重要か、そういう提案をし続けた結果、企業のトップの皆さんの共感を得ることができ、採用していただくことができました。そこが上手くいった理由だと思いますね。

【ナレーター】
ミズノの多角化は、ワークウエアだけに留まらない。 トップアスリートの「100分の1秒を削る」ために磨き上げたカーボン技術は今、全産業のインフラを支えるソリューションへと進化を遂げている。

かつての「速さを生む技術」は、現場の「疲労を削る」新たな武器へ。 その最前線で開発に携わる社員に、話を聞いた。

【社員B】
ミズノの強みはカーボン技術でして、この素材を使って新しい移動の手段をつくれないかということでトライしました。そちらの技術を用いて今回移動を拡張できないかということでトライしたものが『MOBILARIA β』です。

こちらの履物なんですけれども、下に板バネと呼ばれるカーボン素材の板が付いています。走っている時にこのバネがたわんで、エネルギーを蓄えて蹴り出す時に反発してくれます。

その力によって、本来出している足に使っていたエネルギーの一部を代替してくれるので、結果として楽に走れるというようなものになっています。

当社はこちらのカーボン素材プラス、バイオメカニクスということで、体の動きというものも一緒に研究しております。その目線から、どうやったらより楽に走れるかということも考察を重ねて、開発を進めています。

【ナレーター】
全産業のインフラを支える。その先に水野が見据えるのは、スポーツメーカーの枠を超えた巨大な姿だ。

【水野】
当社は、基本的には今までずっとBtoCというところでやってきましたけれども、部材や素材、部品、もちろん製品でもいいんですけれども、そういうものを取り扱うBtoB企業というのは、存外に結構、ビジネスが大きいんですよね。

いろいろな会社を見て、「この会社あまり聞いたことがないな」と思って調べてみたら、「1兆円企業か」みたいな。実は素晴らしい会社というのはたくさんあるんですよね。そういうものも目指していきたいと思っているんです。

【ナレーター】
ビジネスにおいて水野が最も重視しているのが「信用」と「信頼」だ。これらの言葉は精神論ではなく「ミスが起きた後のリカバリー」という極めて実利的なものだと、水野は解釈する。

【水野】
やはり期待を裏切らない、そういう製品を開発して、皆さんに提供することは絶対的なものだと。

企業ですから、不良品が出たり、間違ったものが出たりすることもゼロではありません。その時は速やかに潔く、「こういう間違いでした」と言って、ちゃんと回収します。

「それに関しては、こういう徹底をします」ということをしっかり伝えて、信用と信頼を修復するという活動がないと、どんどん失っていきます。そういうことがあればしっかりフォローするということを、心がけていますね。

【ナレーター】
挑戦に際し、最初に最悪のケースを考えることが、後の成長につながる一歩だと水野は語る。

【水野】
いろいろな不都合なことが起こっても、最初に「最悪のケースはこうだ」ということを考えるんですよね。結果としてそれより良かったりマシだったら良かったと。「これぐらいで済んでよかった」と考えたら、あまり落ち込む必要はないんじゃないかなと。

「得意淡然・失意泰然」という言葉が私、好きなんですよ。得意淡然というのは、みんな「やったね」とガッツポーズするなど、得意になって有頂天になる。けれども、そういう時は淡然と淡々と、「いやいや、まあこんなもんだろう」と。

問題は失意、ピンチの時ですよね。失意の時って、みんな落ち込んでうなだれて、下を向くものなんですけれども、そういう時こそ泰然とする。「大丈夫」という、そういう気持ちをもってコトに当たるというのが理想だなと。なかなかできていないから言うんですけれどもね。

【ナレーター】
「より良いスポーツ品とスポーツの振興を通じて社会に貢献する」という経営理念のもと、水野が実現したい企業像とは。

【水野】
スポーツ品に限らないんですけれども、それに関連したことに関して、少しでもより良いものを提供する。その結果としてスポーツが盛んになり、そして、社会的に貢献できる。

社会的に貢献するということは、やはりいろいろな社会課題を解決するために我々が役に立つということが必要なのではないかなと。全部は無理だとしても、少しでも解決することに役立って、社会がより良くなっていくという、これが非常に当社にとっては大事なのではないかなと。

いつも「ミズノってどういう会社にしたいですか?」って聞かれると、私は「なくなったら困る会社になりたい」と言っているんですよね。「やっぱり(ミズノが)ないとあかんで」という、そういう会社にしたいなと思っています。

【ナレーター】
世界の社会課題を解決する。その実現のため、ミズノはこれからも歩み続ける。


経営者プロフィール

氏名 水野 明人
役職 代表取締役社長
生年月日 1949年8月25日
出身地 兵庫県
略歴
74年米国イリノイウエスレイアン大学経営学部卒業、76年関西学院大学商学部卒業。75年ミズノ入社。84年取締役経理本部副部長、86年常務取締役。90年専務取締役、94年取締役副社長、98年代表取締役副社長を経て、2006年ミズノ4代目社長に就任。

会社概要

社名 ミズノ株式会社
本社所在地 大阪府大阪市住之江区南港北1‐12‐35
設立 1906
業種分類 卸売業
代表者名 水野 明人
従業員数 3,649名(連結、25年3月31日時点)
WEBサイト https://corp.mizuno.com/jp
事業概要 スポーツ品の製造及び販売、スポーツ施設の運営、各種スクール事業を展開
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