株式会社キングジム 累計販売数5億冊超の『キングファイル』や『テプラ』、『ポメラ』など独自商品を開発 株式会社キングジム 代表取締役社長 宮本 彰　 (2013年9月取材)

事業

【宮本】

あれ（ショットノートの）はね、正直言って話を聞いた時は売れると思わなかったのですが。そんなことをわざわざやるのかなと思ったのですが、色々と担当開発者から話を聞いてなるほどと思ったのは、例えば私の学生時代は当時からあまり勉強していなくて、人のノートのコピーを一生懸命取っていた派なんだけれども、結構お金も掛かるし大変なんですね。今の学生さんはどうもコピーなんていちいち取らずにスマホで写真を撮ってしまうらしいと。ノートを写真に撮っておけば、コピーと同じだということで見られる。なるほどなと思ったんですよね。

われわれはもともと文具メーカーでどこまで当社でやるべきかはいつも悩みどころなんですよ。電子機器の本命的なアイディアも色々あるんだけれど、そんな大がかりなものをわれわれがやる力もないし、ましてや本命商品にいくと、大手企業さんにはかなわないですからね。そこでキングジムらしい生き方、文具的でそれなりのマーケットでという「心地良いスキマ産業」があるはずだと。

【宮本】

ショットノートなんかはその典型ですけれど。アナログの要素。売るものはノートなんです。アプリは無料ですから。ということはアプリでは儲からない。ノートを売るためにアプリを使うという発想は今までなかったわけだが、それをいち早くやることができた。それはショットノートですけど、ポメラというヒット商品もこれは完全なデジタルものですが、市場がそれなりでスキマ産業だというところがちょうどおいしいところで、大企業さんが参入するほどでないマーケットなところがかえっていいなと思っています。

【宮本】

そういう（電子書籍のような）有望な事業をやりたいのですが、本命はできないのでそこでスキマを考えたんです。
Wook（ウック）はひと言でいうと、電子書籍事業のスキマ狙いなんですよ。特殊なものを徹底的にやりましょうみたいな。そういう生き方があってもいいのではないかなと。
例えば本屋さんが、今は大型店でなんでも揃いますというのが基本ではないですか。でも特殊な本屋さんはあります。これしかありませんという。それはそれで十分生き残っていける本屋さんというのはあり得るので、そういう生き方が当社には向いているかもしれないと思って、今始めています。

【宮本】

（女性向け商品開発の）理由は２つあって、１つはオフィス向けの商品であっても実際使うのは女性だということが多いんです。文房具の場合は。それを決裁権はなぜか男性が持っているから、今までと変わらないものを同じようなつまらない単純なデザインのものばかり買っているのが普通だが、やはり世の中使う人のニーズに合わせて進化していくべきではないですか。女性が欲しいものはまた違うんですよね。

だからそういう意味では、デザイン的に優れたものとか、女性として使いやすいものというのが色々あってもいいだろうという方向に変わっているのが１つ。もう１つは個人用品です。個人用品は、やはりもう女性の購買力が圧倒的に強いですね。男性はまだまだ厳しいです。特に景気が悪くなってからの男性用品は厳しい状況なんだけれども、女性はまだまだ購買力があるというふうに思っていまして、女性向けも個人向けもかなり力を入れている状況です。

【宮本】

全般的にいうと課題はやはりファイル、テプラに次ぐ第３の柱と言えるようなものはまだできていない。第３の枝ぐらいはできていますけどね、ショットノート、ポメラがまだ柱までいかない。だからこの柱を作るというのが基本的な最大の課題だと思いますね。どちらにしろ開発型企業なので、とにかく開発で世の中にないものを作って成長していくというのが全体的な考え方なのですが。

海外戦略。もう少し充実していきたいなと。今まで生産については、特にファイルの生産はだいたいアジア、東南アジアで作っています。ベトナム、マレーシア、インドネシアに工場があって今ほとんどそこで作っているわけですけど、販売についてはわずかしかやっていないですね。中国を中心にやっている程度です。これを世界に大きく飛躍していきたいというふうに、これはファイルに関しても電子文具に関しても両方なんですけど、今それにかなり力を入れています。