【ナレーター】
光応用技術を使った検査・計測装置を研究開発・製造・販売する「レーザーテック株式会社」。
「世の中にないものをつくり、世の中のためになるものをつくる」という経営理念のもと、世界シェア100%の製品や、世界初となる検査装置の開発を手がけるなど、業界のトップランナーとして高い技術力と開発力を誇る。
近年では、半導体の微細化を可能にするEUV(イーユーブイ)マスクの検査装置や、省エネルギーに優れることで需要が高まっているSiC(エスアイシー)ウエハーの検査装置など、新たな分野の開拓も推進。
付加価値の高いオンリーワン製品やソリューションを世界中に提供し続ける企業を目指し、その歩みを着実に進めている。
快進撃を続けるものづくり企業と、それをけん引する経営者の軌跡に迫る。
【ナレーター】
世界が認める高い技術力と商品開発力を持つレーザーテック。それらを裏付ける自社の強みについて、岡林は次のように語る。
【岡林】
お客様といろいろなディスカッションができることは、当社の大きな強みだと思っています。
お客様を訪問して要求をうかがっても、その背景になにがあるか理解できなければ、実際にお客様が欲するソリューションは提供できません。
お客様の背景までしっかりと理解した上で、「こういうものがいいのではないでしょうか」と逆提案ができるということも、当社の大きな強みだと思います。
お客様の声に基づいて、お客様が欲するものを開発し、それを世の中に出していく会社ですので、お客様との接点や信頼関係を構築して維持していくということに、重きを置いています。
仮に知らない分野であっても、そこに関して探求していき、お客様の課題を解決するソリューションを開発し、世の中に新しい価値を届けていくという文化ですね。そうやって我々の強みを活かしながら、ソリューションを提供しています。
私が入社した時点で、もともとそういうDNAを持っている会社でしたので、私はそのDNAの強みを活かせるようなビジネスに舵を切ったということですね。
【ナレーター】
岡林の原点は大学卒業後に入社した企業にある。
アプリケーションエンジニア職に従事していた岡林は、指導を受けた上司のもと技術の面白さに目覚め、会社を退職し早稲田大学大学院に進学。
修士課程修了後、老舗メーカーを経て、2001年にレーザーテックの門を叩いた。当時の自社の印象について、こう振り返る。
【岡林】
会社の規模に比べ、非常に高度で複雑な製品を開発・提供しているということに驚きました。
また、私が以前在籍していた会社ですと、技術の人間はどちらかというとオフィスにずっと座っていて、お客様を訪問するのが億劫という感じだったのですが、当社の技術の人間は、それをいとわない。
どんどん訪問して、お客様といろいろな話し合いを行っていることにも驚きました。
以前在籍していた会社で私がマーケティングを担当していたときは、マーケティングの人間がお客様と技術をつなぐ役割を担っていました。
しかし当社は、営業と技術が一体となってお客様を訪問し、将来のお客様のニーズなどをヒアリングできる。これは当社の大きな強みだと感じました。
【ナレーター】
入社後、岡林は営業職に従事。営業本部長、副社長などを経て、2009年に代表に就任した。
当時はリーマン・ショックの影響で赤字を計上しており、苦境に立っていたという。その中で、岡林がまず取り組んだのは方針の転換だった。
【岡林】
当社の強さが発揮できて、世の中にも貢献できる。そのような仕事をしていくことが、最も従業員の努力が無駄にならず、世の中に尽くせるのではないかと考え、新たな方針を掲げました。
個人も会社も同じで、それぞれに個性があって強みや弱みがあります。
赤字脱却のためには、当社の強みを活かせるビジネスにリソースをつぎ込み、そこで努力すべきではないかと思い、選択と集中をしてきました。
そうした新たなビジネスの規模が、売り上げの約半分あったので、そういう意味での怖さというものはありました。
実際に、当社は年度末が6月30日なのですが、5月まではまだ赤字でした。6月30日の夜にヨーロッパの営業職の従業員から、やっと検収があがったという電話をもらったんです。
当社の場合は検収=売上なので、それが計上されるまでは赤字でした。この検収をもって、最終日に黒字になったときは、本当に嬉しかったですね。