株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングス エニックス創業者の光と影から紐解く、事業成功のヒント 株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングス 名誉会長 福嶋 康博  (2021年7月取材)

インタビュー内容

【ナレーター】
『ドラゴンクエスト』『ファイナルファンタジー』シリーズなどを世に送り出し、ゲーム事業を軸に日本のエンタテインメントを世界へと広げる、株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングス。

同社の名誉会長を務める福嶋 康博氏は、自ら創業した株式会社エニックスで1982年からゲームソフトの企画販売を開始。数多くのヒットタイトルを世に送り出し、ゲーム業界に新風を巻き起こした。しかし、この成功までにはいくつかの失敗があったという。
(2003年、株式会社エニックスと株式会社スクウェアの合併により株式会社スクウェア・エニックスが誕生。その後に持株会社体制となり、商号を現在の株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングスに変更。)

挫折を乗り越えて成功を掴んだ事業家の軌跡と、挑戦を結実させる秘訣に迫る。

【ナレーター】
大学では建築学を専攻するも、事業家への道を選択した福嶋。

当時よく通っていたという東京都にある『中野ブロードウェイ』の内部は、業種毎に店舗がまとまっておらず不便と感じていた中で思いついたのがブロードウェイの月刊情報雑誌だった。

【福嶋】
読み物というより、どちらかというと情報誌ですね。中野ブロードウェイを中心に毎月5万部を配る、このような発想で中野ブロードウェイへ営業に行ったんです。

「こういうのを出したらどうですか」という案内図のようなものをつくり、営業へ行ったところ気に入ってもらえました。

事業として成立するかどうかよりも、これをつくれば喜んでもらえるのではないかなという感覚でしたね。

【ナレーター】
『中野ブロードウェイ』の店舗を経営する経営者達との交渉も成功し、事業は着々と進んだが、思わぬ形で終焉を迎えることとなる。

【福嶋】
会長から「お前の会社の社長はどんな人なの?」と聞かれたんです。「なんでですか?」と聞き返したら、「お前の会社は登記されていないの?」と。

僕は「登記ってなんですか?」と聞いたら「会社は普通登記しているよね?社長はどんな人?」と聞かれ、「いや、僕は1人でやっているんです」といったんです。

会社設立には登記が必要だという事実を知り、事業家の知人に相談すると、「お前はまだ子どもだからやめなさい」といわれてしまいました。

もしその知人に「やりなさい」といわれていたら、登記をして事業を続けていたかもしれません。しかしやめなさいといわれ、そこで(事業は)終わりました。

【ナレーター】
その後、ビジネスの種を見つけるため渡米。その理由と当時のエピソードに迫った。

【福嶋】
当時のアメリカは日本の未来だと。アメリカに行けば、日本が今後どうなるか、タイムマシンに乗ったようにわかるのではないかと思いました。しかし最終的には、行っている間は無理だなと思いました。なぜなら、英語が喋れないから(笑)。

アメリカで最初に行ったところは日本人街のそばで、日本人がたくさんいるような場所でした。こんな環境にいてもしょうがないと思い、地図を広げて次の行き先を決めました。そこがバージニア州のリッチモンドという街です。そこには日本人はいないのではないかと思い、決めました。

新聞社に行き、ハウスキーパーの仕事をする旨とホテルの電話番号を新聞に掲載したら、多くの問い合わせが来ました。1日3時間、掃除などをしていました。

ハウスキーパーの仕事で一番良かったのは、家の中を見られること。たとえば調味料の種類が多かったり、冷蔵庫が大きかったり、お風呂は各部屋についていたりして、やはりアメリカはすごいなと思いました。

【ナレーター】
アメリカでの経験から、ほかの世界も見て回りたいという想いに駆られた福嶋は、インドやマレーシア、インドネシアなどを訪れた後に帰国。結婚を機に住まいを探したことで生まれたのが、公団住宅の情報誌事業だった。

【福嶋】
公共住宅、公団や公社などの家賃が非常に安かったんですね。

しかし入居するためにはどうすれば良いかわからず、公団に問い合わせたら、「募集日の前日に新聞に情報が掲載されるので、それを見てください」と。「それで募集がわかりますから、申し込んで入居してください」と答えがありました。とても不便だと感じました。

新聞に載るまでは、みんな情報がわかりません。ですので、情報誌みたいなものを出したら面白いんじゃないかなと思い、公団に行って「情報誌を出したいんです」と提案しました。するとOKしてくれたんです。

そして情報誌を出したところ、公団申込者の約3割が情報誌を取ってくれましたね。

【ナレーター】
自身の不満が潜在的なニーズとつながっていたこともあり、事業立ち上げから数年で急成長。しかし福嶋はこの事業を長期で続けるのは難しいと判断。

終業後、社員から有志を募って『未来会議』という新規事業を生み出すための会議を実施した。当時行なっていたことについて、福嶋は次のように語る。

【福嶋】
掲載許可数は日本一でした。日本一でしたが、日本は小さいですから。売り上げは約3億、利益は8000万ぐらい出ましたが、それ以上にはなかなかならない。

これをずっとやっていてもしょうがないと思い、新たな事業をやろうと終業後に社員の有志が集まりました。

これからどのような時代になっていくか、人間のニーズや本能はどのようなものか。どのような本能を持っているのか出し合っていって、こういう事業があるのではないかと議論をはじめましたね。

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経営者プロフィール

氏名 福嶋 康博
役職 名誉会長
生年月日 1947年8月18日
出身地 北海道
略歴
◯1975年9月
株式会社営団社募集サービスセンター設立、代表取締役社長
◯1982年8月
株式会社エニックス 代表取締役社長
◯1989年4月
株式会社エニックス、コニカエニックス株式会社、エニックスプロダクツ株式会社を株式会社営団社募集サービスセンターに吸収合併し、商号を株式会社エニックスに変更、代表取締役社長
◯2000年10月
代表取締役会長兼最高経営責任者
◯2003年4月
株式会社スクウェア・エニックス 代表取締役会長
◯2004年6月
相談役名誉会長
◯2005年6月
名誉会長
◯2008年10月
株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングス 名誉会長(現任)

会社概要

社名 株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングス
本社所在地 東京都新宿区新宿6丁目27番30号 新宿イーストサイドスクエア
設立 1975
業種分類 情報・通信業
名誉会長 福嶋 康博
従業員数 4,712名(連結、2023年3月31日現在)
WEBサイト https://www.hd.square-enix.com/jpn/
事業概要 株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングスは、多彩なコンテンツ/サービス事業を展開しているスクウェア・エニックス・グループを統括する純粋持株会社です。スクウェア・エニックス、タイトー、アイドスなどの国際的ブランドのもと上質なエンタテインメント・コンテンツ/サービスを提供しています。
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