【ナレーター】
AIやIoTを活用した次世代型保育施設「スマート保育園・幼稚園・こども園®」をコンセプトに、保育業界全体のDX化を推進するユニファ株式会社。
インターネットでの保育施設の写真販売から事業をスタートし、以降『ルクミー』シリーズとして午睡センサーや体温計、連絡帳アプリなど、保育園・幼稚園・こども園向け総合ICT・研修サービスへと成長。
全国の保育施設で導入されており、2021年4月時点で累計導入数は11000件を超えている。
また、同サービスは、2017年、全世界から1万社以上が参加したピッチコンテスト『スタートアップ・ワールドカップ』で優勝を果たしており、世界も注目するビジネスモデルとして、その存在感を際立たせている。
子ども達の声なき声の可視化に挑戦する創業者の軌跡と、見据える未来とは。
【ナレーター】
2021年11月時点で累計資金調達は約88億円に上り、着実に成長を続けているユニファ。その要因について土岐は次のように語る。
【土岐】
自分たちのエゴではなく、とことんお客様と向き合うことの中にテクノロジーに気をつけながら使ってきたことだと思います。
私自身もエプロンをしめて保育の現場に入ってみて、先生が写真を撮るタイミングや撮ったあとの作業、販売するときの様子などを観察しました。つぶさに見ると「こんなに大変なんだ」と思いましたね。
子どもたちの写真の撮ることは先生にしかできません。しかし、撮ったあとはほとんどAIなどでシステム化できると気づいたのです。そこで、自動アップロードや顔認識での写真の選別などを業界でいち早く取り入れました。
また、体動センサーや体温計などにIoTを取り入れています。少し難易度の高いテクノロジー生産を中国で行い、設計はアメリカの会社で行なっています。
お客様のためだとするならば、グローバルで全部やるわけなんですね。最後までやり切った瞬間には、たとえば売上や利益、我々のファンにくださるなどの結果で表れます。そこの部分を軸として、走り続けてきました。
【ナレーター】
ユニファの原点は、土岐の幼少期の原体験にあるという。当時を振り返った土岐が得た気づきとは。
【土岐】
幼少期に見守られた、愛されたという記憶が今思うと大事だったと思います。
幼少期に大切にされた記憶が自分自身を信じる力に変わっていくんです。とくに、幼少期のそういった思い出というのが、人間の根本的な部分の幹をつくっていくんだろうなと感じました。
【ナレーター】
学生時代に所属していた英会話サークルで社会問題についてディベートした経験から、経営者を志すようになった土岐。
大学卒業後は大手総合商社に就職し、経営者になるための力を蓄える。当時直面した困難について聞くと、意外な答えが返ってきた。
【土岐】
一番つらかったのは。妻との関係かもしれません。
私自身も全力で仕事をしてきたキャリアがありましたし、妻は妻で、トヨタ自動車で人事としてキャリアを積んでいました。
キャリア志向の強い2人が出会い、結婚して子どもが生まれた時に、どちらが仕事をセーブして育児をするかというのは、自分だけの幸せを優先してしまうと非常に難しい問題でした。
仮に妻が仕事をセーブすることになれば、私にとって大事な妻のキャリアはどうなるのか。はじめて私自身が、他人との間での幸せの総和のようなものを、どうやったら両立できるのか。どうやったら極大化できるのか考えるタイミングになりました。
自分のキャリアを犠牲にすることで、家族の幸せが増えるとは理解できていましたが、その決断をするのが非常に難しく苦しかったですね。
【ナレーター】
その後、妻との話し合いの末、自身のキャリアを中断し、東京から妻が勤める企業がある愛知へと移住。その地で誕生したのがユニファの事業だった。
【土岐】
移住してから3、4年が経ち、家族の状況も落ち着いてきた中で、もう一度自分の仕事やキャリアと向き合いたいと思いました。そこで、さまざまなテーマをまた探し始めました。
その際、私自身が何か得意なものよりも、他人と少し違う部分というところに着目しました。私は家族のためにキャリアを中断したという経験があったことから、家族というものをテーマにできれば必然性があり、自分らしく頑張れるかなと思いました。
自分の子どもが保育園に通っていたことや、姉が保育士だったことなど、様々なきっかけを経て、家族と保育園をつないでいく“スマート保育園構想”の原型みたいなものに出会いました。
そして、このユニファを創業したということですね。