【ナレーター】
2001年に産声を上げたグローバルフィギュアメーカー「株式会社グッドスマイルカンパニー」。
『ねんどろいど』『スケールフィギュア』『figma』など、さまざまなバリエーションの商品を企画・製造・販売し、キャラクターフィギュアの代名詞といえる人気商品を数多く世に送り出す。
近年では、コラボレーション企画、カフェの運営も展開しており、日本のポップカルチャーを多くの国に発信するべく、挑戦を続けている。
フィギュアという市場をグローバルに発展させた経営者の軌跡と想いに迫る。
【ナレーター】
国内外で多くのファンを獲得している「グッドスマイルカンパニー」。その理由のひとつに、安藝は商品のバリエーションにあると言い切る。
【安藝】
月に少なくとも30〜40、多いと50以上のキャラクターの製品を世に送り出すことは、当社の特徴的な部分です。
多様なニーズに対してできる限りフォローしながら、作品と一緒にフィギュアやマーチャンダイジングをしっかり世界に届けられる準備・実行するパワーをもっている点が、当社と他のブランドとの大きな違いだと思っています。
漫画やインディーズゲーム、多くの予算をかけた映画など、大量の作品が特に日本のカルチャー、サブカルチャーから生まれてきています。その豊かなバリエーションが、日本のサブカルチャーのファンが生まれる理由のひとつです。
「これがあるのなら俺はこっちだ」といった市場の隙間を埋め合う状況が、日本のコンテンツが世界でウケている理由の、大きな部分だと思っています。
【ナレーター】
グッドスマイルカンパニーは、2001年、安藝が大手玩具メーカーの子会社に在籍していたときに携わっていた芸能事業を引き継ぐ形で生まれた。どのような経緯で、フィギュア事業へ参入したのか。
【安藝】
当時は食玩ブームのおかげもあり、精密なおもちゃとは少し違う、造形を売りにした「フィギュア」を収集する楽しみが、世の中に広がった時代でした。
とはいえブームでもあったため、少し沈静化すると、「何かフィギュアっていいよね」といった空気だけが残りました。
その後はマニアックなキャラクターや怪獣など、色が塗ってない状態で複製した、「ガレージキット」と呼ばれるマーケットが出てきました。
そして、そのガレージキットを完成品として売る時代に、当社もフィギュア事業に参入しました。
【ナレーター】
当時のフィギュア市場は小さく、流通網もなかった。しかし安藝は、そんな状況に大きな可能性を感じていたという。
【安藝】
非常に腕のいい人たちがつくっているものをみせてもらう限りにおいては、「これはすごくみんな本当は喜んでもらえる」「すごく美しいもの」みたいなのを感じていました。これは大きなマーケットになる可能性があると思っていましたね。
「流通の改革」と「生産精度の向上」に関しては、お客様が望んでいるものの精度で、そのままお届けできる状況にする両面を、数年間かけて当社の方法論として、マーケットのプレイヤーたちと一緒につくっていきました。
【ナレーター】
流通整備の他、商品製造技術を高め続けたグッドスマイルカンパニーは、フィギュア市場の拡大に貢献。より質の高い商品を市場に多く流通させるために、安藝が重要だと語るのが技術だ。
【安藝】
技術の向上をどう担保するかの議論でいうと「制作」が重要ですね。
制作は非常に属人的な作業で、誰か上手い人の背中をみて技術力は育ちます。
しかしもっとたくさんつくる、もっとよいものを早くつくるといったところでいうと、それだけでは足りません。
レバレッジをきかせるためには、技術の昇華だけでなく、分かりやすく技術を共有すべき部分も重要だと思っています。
そこで当社は現場の彫刻家同士やマネジメントする人たちなどで、何年もかけて技術を分解し、普遍的な文章に書き起こして共有しています。
現場の人たちが、もっと早く上手くなるにはどうしたらいいかを日々考え、実際に仕組み・システム化しており、それが非常に役立っていますね。
その人材育成の仕組みのおかげもあって、当社では1〜2年ほど経つと、一定のフィギュア製造マンになれます。
たとえば「彫刻家になりたい」という人たちが、我々の会社に素人の状態で来た際にも、2〜3年ぐらいで、ほとんどの人が準一流ぐらいに成長します。これは本当にすごいことだと思いますね。
製造のクリエイティブな過程のなかでも、いろいろな議論が生まれるのですが、さまざまな技術検証をすることで、ノウハウを細かく溜めていっています。
専門性の高い技術は当社にしかないため、他の企業からもらうことができません。内部開発で一生懸命、人を育てる仕組みがつくられていることは、当社のとても強い強みだと思います。