Vol.3 成長と変化
インタビュー内容
―成長と変化―
【齋藤】
2001年に社長になられてからも一部上場等大きなご業績を残しつつあるわけですが、業務の多様化というようなことで言うとどのようなことがありますか。
【村井】
多様化と言いますか、我々の業務というのは、基本的には先ほど申し上げた金融機関さんのような堅いお客様にしっかりと安全を提供するというこういう仕事なものですから、これは中核でしっかりと進めていかなくてはいけない。そのお客様自体からいろんなニーズが出てきます。
一番いい例が、例えばATMにつきましてもATMは基本的には全部銀行さんがやっていたものが段々いろんな問題があって、障害対応から始まって、それを警備会社がやらないかと。警備業の中核の業務の周辺業務がずっと広がっていってお客様のサービスにつながるという、そういうものをどんどん広げていこうではないかというのがちょうど第二の創業でそういう形にいったということです。株式の上場はなぜやったのかというと、会社を作ってから金融機関さんを中心に仕事をしていましたので急激に膨れ上がりまして、いろんな内部的なもの、内部の規則や制度や仕組みやシステム、それがアンバランスだったんです。
【齋藤】
それを御旗にして社内改革をやっていくと。
【村井】
このままですと上場できないよと。上場の審査で落ちてしまう。これはちょっと直さないけいないと、その過程でいろんなものを直していった。周辺部分をどんどん増やしていったのが第二の創業という形で言い出したということです。
【齋藤】
さっきのお話のATMなんかも、日本のATMというのは世界に冠たるATMで本当にほとんど町に100台あれば100台とも稼働している。ニューヨークなんかに行くと4分の1や3分の1が動かないとかそういうことがありますが、あまりきれいではありませんし。最近お始めになったのは、いろんな小売店なんかでそこでキャッシュを入れるとそれが銀行に入っていなくてもそれを御社が読み取って、それと同額のものを銀行に御社が立て替えて入れてそれで翌日現金を取りに来てやるなど、ものすごくそこのところは派生的なビジネスといいますか、多様化していますね。
【村井】
これは昔は銀行の行員さんが夜に小売店などを回って集めていまして、これは物騒だし、人件費も掛かるというのでそのうち夜間金庫になりましたね。
【齋藤】
入れていましたね。袋にいれて。
【村井】
夜間金庫も、夜間金庫に持っていくまで金を運ばなくてはいけない。当該小売店のところに四角い金庫みたいなボックスを置いておいて、その中に入れていただければ次の朝には同額の金額をお客様の口座に振り込むということでより利便性が高まると。これは完全に警備業ではなくなってしまいます。というのが膨れ上がってきたというのが今の状況で、今、年間、当社が扱っているキャッシュが230兆円を扱っていまして。
【齋藤】
大銀行より多いですね。
【村井】
キャッシュベースで行きますと多分(多いですが)。銀行さんはバーチャルで扱いますでしょう。当社は現金で扱いますから、その過程においては当然その現金の精査や勘定することを結構やりますので、そこで問題が起こると大変、銀行さんに迷惑が掛かるのでそれはどんどん高度化するといいますか、かなりレベルを高めていったというような状況です。
【齋藤】
一つのコアとして金融機関との信頼関係なり取引というのがあって、それと機械警備の部分で一般法人にどんどん広げて行かれたということですけども、いろいろ先発のライバルがあって、競争上のご苦労などもいろいろあったんですか。
【村井】
私どもは金融機関さんを中心にお仕事をさせていただきましたので、ライバルの方はそちらの一般法人の方をどんどん先にやっておられたんです。これはだいぶ苦労しましたが、今はおかげさまでそちらの方は一応伸びてきたという、こういう状況です。
【齋藤】
これはクチコミで伝わったりすることも多いですね。
【村井】
かなりありますね。毎回砕けたようなコマーシャルをしているのは実はそのためです。
【齋藤】
だいぶこの5~6年でイメージが変わりましたね。
【村井】
最初にレスリングの吉田沙保里氏を出します。この女の子なんじゃ(誰じゃ)という感じですね。吉田沙保里と書いてあると、それが飛んだりはねたりしていると。新聞を見ますと世界選手権優勝者吉田沙保里と。あのALSOKのあれかと。そのうちバージョンアップして目からビーム出すなどいろいろしますと、またあれやっていると。今度はオリンピックで優勝で何連覇とか。こういう形で知名度がずっと上がるという、そういう戦略でやってきまして。これはなんとかいい方向にいったかなと思っています。
実は綜合警備と名乗っている会社で、当社と全く関係ない会社が50数社あるんです、日本中に。これはブランドとして売りだす時にはちょっとまずいんじゃないかと。他の会社と紛らわしくなくブランドとしてきちんと出そうと。いろいろ考えまして、広告代理店にいろいろお願いしまして。今の『ALWAYS-SECURITY-OK』というのは後からつけたので、実は『ALLSOK』なんです。Lを取るとALSOKになるでしょう。ブランド名はあくまでもこれでいって、本名は綜合警備。それでずっとやっているという、こういうことなんです。
【齋藤】
非常に定着しましたね。
【村井】
テレビコマーシャルと一緒にやりながら、やっとなんとかある程度ご認識いただけるようになったかなというこういう感じです。
【齋藤】
国内の方はそういうことで着々と毎期、件数も金額も上がっているようですが、海外展開でいえば東アジア中心にやられていますが、ここは基本的にはどういうお考えでやられているんですか。
【村井】
基本的には海外に展開して事業をするというのは最終目的としてあります。その前にいきなりそこにいくといってもかなり難しいと。警備業の場合は法律、それから文化社会的なものがありまして、かなり障壁が高いんです。それを一つひとつクリアしないといけないので、その辺は時間が掛かるので、今は現地に行った日系企業に対するセキュリティのお手伝いをしていくという考え方でどんどん進めまして、タイ・ベトナム・中国・インド・インドネシア・マレーシアにも現地法人を作りまして、その他シンガポールと韓国にも現地事務所を作りまして、その他のところも含めましてミャンマーやフィリピンなども視野に入れながら、日本企業のたくさんいるところにお手伝いに行くと。
【齋藤】
統括会社かなんかはお作りなんですか。
【村井】
統括会社はタイにあります。タイに一番最初に出まして、インフラなんかも比較的揃っていますので、そこに海外事業部長を置きまして彼がそこで統括しています。
【齋藤】
それぞれの国の法制なんかがあるので、そういうものを分かっている現地の警備会社を御社が買収して、そこに日本のノウハウを展開するとこういう手法もありますか。
【村井】
それも有り得ます。それも今考えてM&Aも考えています。もう一つ現実にやっているのは、自分のところで警備会社を作らない場合は我々がどちらかというと日本企業に対して営業をやって、そして実際のオペレーション、実際の運用部分を提携した現地の警備会社にやっていくという、そういう形もやっています。最終的には全部自分のところで自前できるのが一番いいのですが、ちょっと時間が掛かりそうです。
【齋藤】
これは日本企業の進出している数から言えば中国が圧倒的に多いですが、ここはいろんな問題があるから、いろいろ手は打ってちょっと様子を見られるような。
【村井】
中国の場合は警備会社を作ってもいいんです。作りましても、そこの役員の何分の一かは検定を取ってないといけないんです。中国における警備の検定を取ってなくてはいけないんです。それはもちろん中国語の試験ですから、日本人はまず受からないようになっています。そこで会社を作ると大変なんです。中国の方に来ていただいて、検定試験取った方に来ていただいて、役員に据えるというぐらいはできます。
【齋藤】
日本の製造業なんかも向こうで採用して、優秀な人を日本の工場に持ってきて、日本語を勉強させて戻すというのはずいぶん多いですからね。
【村井】
そういうことですね。警備業に関する法律ができたのはついこの間なんです。中国の場合。それに対応するために、今まさにお話しのような形も長期的に見ながらやっていかなくてはいけないと思っています。

経営者プロフィール

氏名 | 村井 温 |
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役職 | 元代表取締役会長 最高経営責任者(CEO) |
生年月日 | 1943年2月12日 |
会社概要
社名 | 綜合警備保障株式会社 |
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本社所在地 | 東京都港区元赤坂1-6-6 |
設立 | 1965 |
業種分類 | サービス業 |
代表者名 |
村井 温
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従業員数 | 39039 名 |
WEBサイト | https://www.alsok.co.jp/ |
事業概要 | 警備サービス業界大手。金融機関向けに強みがあり、現金警備輸送はコンビニエンスストア等へ展開。 |