Vol.2 仕事への考え方
-仕事への考え方-
【聞き手】
「モノ」を売るのではなくて、「コト」を売るに当たっての信念というわけですね。それが御社の成長の要因なのだと思います。
【島村】
やっぱりそうでしょうね。「コト」を売るというか、ソフト主導型でしょうか。平井の駅前にライトミュージックの店をオープンした時も、そこを理解できない人からは「あんな場所で出店しても、すぐにつぶれる」と言われたものです。
【聞き手】
相当にバッシングを受けたそうですね。
【島村】
ええ。1、2年でつぶれると言われました。それがYAMAHAさんの耳に入って、あちらもライトミュージックに進出したから、うちでイベントをやりなさいと言ってくれました。そこで、YAMAHAさんの協力で、プロのミュージシャンのイベントをうちのスタジオで月に2回ぐらい開催したんですが、そのイベントの告知によって、お客さんが来店してくれるようになったんです。最初の1年は確かに厳しかったですが、2年目ぐらいから軌道に乗って、3年目からちゃんと収益が上がるようになって、売り上げも伸びました。このイベント開催を通じて、音楽の世界というのは基本的に、すなわち音楽そのものが中心で、そのために必要な道具として、楽器を買うのだと痛感しました。
最初に音楽教室をやった時もそうでしたが、我々の経営理念としては、音楽を楽しむ人を1人でも増やすというのが基本です。私自身、金もうけが目的という感覚は全くありませんでした。自分がやりたいことをやっていく、そのためにこの仕事を始めたのだと思って。他にも、例えば銀行さんは我が社がある程度の規模になった時、株式を公開しませんかと提案されたことがあります。でも、私は金をもうけるためにこの仕事をしているわけではないので、公開する気はないと答えました。
お客様のために仕事をする。お客様に喜んでいただく。この仕事をやっていると、生徒さんの父兄から「うちの子供が音楽を習って、音楽を好きになりました。ありがとうございます」と言われることが多いんですね。小売業をやっていた時は、私がお客様にありがとうございますと言っていたのですから。ところがこの仕事を始めたらそれが逆になった。商売をしている側がありがとうと言われるんですから、こんな素敵な商売はないと思いましたよ。
【聞き手】
でも同時の業界からするとだいぶ破天荒というか、業界の革命児だったと思いますが。
【島村】
そういうわけで、私はお客様を見て仕事をしています。メーカーを見て、ではありません。だから、確かに島村はイノベーターだとか、生意気だとか、そういう反発はありました。一番大きかったのは、地方に出店した時です。猛烈な反発を食らいました。
【聞き手】
業界自体が内向きというか、暗黙の了解の世界なのでしょうか?
【島村】
自分たちの地盤を守り合うという業界ですね。どこが規制していたというわけじゃないんですが。また、メーカーもそれを維持したい。そこで、我が社が地方にパルコに出店した時は大変なことが起きました。
【聞き手】
商品が入って来ないなど、色々あったと伺っています。そうやって、業界の中で闘ってこられた歴史があるわけですね。
【島村】
私はある意味で、自分がやっていることを妨害する、反対する人があると、逆に元気になるんです。そこを超えてやろうという感じで。
【聞き手】
それが奮起の原動力になるのですね。
【島村】
私は創業者です。最初から上司もいませんから、自分で考えたこと、好きなことをどんどんやります。お客様に喜んでいただく仕事をするという信念がありますから、第三者とか、取引先から言われたことは気にしませんでしたね。業界がどんどん変わってきて、お客様も変化しました。その中でわかったのは、お客様に評価されることが一番大事だという事実です。メーカーを見るのではなく、お客様の方を見て仕事をするというのは、文具店の時代から変わりありません。
経営者プロフィール
氏名 | 島村 元紹 |
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役職 | 創業者・元代表取締役会長 |
会社概要
社名 | 島村楽器株式会社 |
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本社所在地 | 東京都江戸川区平井6-37-3 |
設立 | 1962 |
業種分類 | 小売業 |
代表者名 |
島村 元紹
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従業員数 | 2,378名(2024年2月) |
WEBサイト | https://www.shimamura.co.jp/ |
事業概要 | 1.国内外各種楽器・音楽書籍・音楽雑貨の販売 2.各種音楽教室、ミュージックサロンの運営 3.練習スタジオの運営 4.音楽関連イベントの企画・製作、運営 5.商品開発 6.技術サービス 7.音響工事の設計、施工 8.各種楽器、及び付属品のレンタル・リース 9.音楽教育システムの開発及び運営指導 |