株式会社帝国ホテル 開業120年超。日本の「おもてなし」の象徴といわれる『帝国ホテル』の強さの根源とは 株式会社帝国ホテル 代表取締役社長 社長執行役員 定保 英弥  (2015年5月取材)

Vol.2 困難を乗り越えたエピソード

インタビュー内容

-困難を乗り越えたエピソード-

【定保】

1991年から1995年まで現地でアシスタントを雇って、2人でアメリカの西海岸を営業していました。アメリカに行きたいという希望があって、運よく行けたのですが、バブルの崩壊で調子が悪くなって、日本に対してのバッシングがひどくなった時ですよね。ロサンゼルスのダウンタウンにある、そんなに大きな事務所ではないのですが、電話が鳴らない日もありました。そういう苦しい時も過ごしたという記憶がありますが、やりがいはすごくありました。 

アメリカの西海岸というのは、帝国ホテルからしますと、アメリカからはニューヨーク州、カリフォルニア州、イリノイ州というのが当時でいう州別で、アメリカ人のビジネスマン観光客が来る土地でした。ですから、カリフォルニアの南はロサンゼルス、もう少し南ですとサンディエゴ、サンフランシスコとお客さんが多かったです。ですから、出張に出ては、1日100キロ、200キロを車でずっと走ってお客様のところを回っておりました。

都内の大手主要ホテルはほとんど同じように駐在員がいました。ですから、皆さんでよく日本を売ろうと言っていました。ちょっとカッコイイ言い方ですけれど、自分のホテルだけを営業するのではなく、まずは日本に行ってもらおうと。日本はいいところですよ、という宣伝を旅行代理店の人を呼んで皆さんと一緒にやっていました。日本に行くならぜひ東京に寄ってください、東京に寄る際はぜひ帝国ホテルに泊まってくださいという、そういう活動をしていましたね。ですから、そういう意味ではマーケットは大きかったですから非常にやりがいがあったことは覚えています。

当時は日本だけでなく、ビヨンドジャパンで、日本を超えて中国ですとか、インドネシアとかそういうところに行く外国人の方が多かったですね。ですから、結構一生懸命、日本航空さんだとか全日空さんだとかと日本を売り込んだ記憶があります。後に、これは大変だったなと思ったのは営業課長になった時ですね。ちょうどセプテンバーナインイレブン(9.11)、米国同時多発テロが起きました。今でもそうですけれど、アメリカからいらっしゃるお客様が当時も一番多くて、全体の2割くらいがアメリカ人の方でした。そのため、同時多発テロが起きた直後はもう2割のお客様が一気に来られなくなりました。その時に担当地域の営業課長だったので、これは困ったなと。

【聞き手】

いってみればどうしようもない状況ですよね。

【定保】

どうしようもなかったですね。これはもう値段を下げようが何をしようがそういう問題ではないですから、逆にアメリカからいらっしゃらないお客様でなく、日本国内で泊まっていただけるお客様を観光客含め増やそうと。これは一生懸命営業をやりましてね。当時そんなに大きなチームじゃなかったのですが、10人15人位のチームだったでしょうか。国内の旅行代理店、色々なお客様にとにかくファックスで連絡をしたり、営業活動もしたり、郵送物も送ったり、結果、おかげ様でアメリカからいらっしゃらない分のマイナスもカバーできました。大変嬉しかったですね。

【聞き手】

本当に皆さんの努力の賜物。

【定保】

チームワークといいますかね。おかげさまで125年間、同じ地でずっとやっていますので、総合力はすごいと思いますね。

【聞き手】

働いていらっしゃる方のプライドといいますか、私たちの代で、歴史のある帝国ホテルを傷つけるわけにいかないという皆さんのプライドですよね。中でもこの20年ぐらいは本当に大変なことが多かったのではないかなと。常務になられた時も、ちょうどリーマン・ショックがあった時期でしたよね。

【定保】

そうですね。やはり外国からいらっしゃるお客様の数が減り、ブレーキがかかり、また、SARSが起きて、最近では東日本大震災が残念ながら発生しました。これもまた我々の業界としましては、年間平均稼働率が8割からいい時は8割5分くらいだったのですが、直後は一気に3割台まで落ちましたね。

【聞き手】

そんなに落ちたのですか。

【定保】

落ちました。本当にロビーに誰もいないという日がありました。考えられなかったです。

【聞き手】

バブル崩壊の時やリーマン・ショックの時は、もちろん企業の会合が減ったりパーティーが減ったり色々なことがあったと思いますが、やはり震災の時は色々な風評もあって、特に海外の方は原発の関係で日本が全体的に危ないのではないかという印象がありましたよね。

【定保】

おっしゃる通りですね。ただおかげ様で、思ったより早く回復をしたものですから、うれしかったです。私どもホテルの場合は、よくいらしてらっしゃるリピーターといいますか顧客の方に『インペリアルクラブ』という会員組織がありまして。この方々が、宿泊の売り上げの4割近くを占めるぐらい、多くの方がお泊りいただいているのですが、その方々はリーマン・ショックや震災後などでも、決して減ることなく、来ていただけました。

これはご支援いただいているお客様のおかげだと思いますし、なんとかそれを乗り切って来られたのが1,800人、大阪や上高地を入れますと2,400人、グループ全体を入れますと、3,000人近く従業員がいるのですけれど、全員がそういう意識を常に持って、頑張ってやってもらっているということが、総合力に繋がり、マイナスを最小限に食い止めることができた理由だと思いますね。本当に今のこの立場としてはありがたいと思います。本当に感謝をしたいと思いますね。


経営者プロフィール

氏名 定保 英弥
役職 代表取締役社長 社長執行役員

会社概要

社名 株式会社帝国ホテル
本社所在地 東京都千代田区内幸町1丁目1番1号
設立 1887
業種分類 サービス業
代表者名 定保 英弥
従業員数 1680名 (2023年3月31日現在)
WEBサイト http://www.imperialhotel.co.jp/
事業概要 ホテル事業(宿泊、レストラン、宴会)、不動産賃貸事業
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