株式会社テラスカイ 2,000件以上のクラウドシステムの導入支援・開発事業を展開する成長ベンチャー 株式会社テラスカイ 代表取締役社長 佐藤 秀哉　 (2015年6月取材)

－日本IBMから学んだこと－

【聞き手】

入社されて最初にやることになったお仕事は、どんなものだったのでしょうか？

【佐藤】

それは少しエピソードがありましてね。今は色々な会社がそうだと思うのですが、IBMは当時、その新入社員を受け入れる部署が面接を受けるという伝統といいますか、そういう制度だったんですね。私は面接を当時、今は無くなりましたけど、中央林間駅にありました大和研究所という、工場と研究所がくっついているような事業所があったのですけれども、そこで面接を受けました。

私は田舎者で、東京に憧れて東京の大学に来たのですが、就職活動で行ってみたら、当時の中央林間って今でこそ発展していますが、パチンコ屋と喫茶店が1店舗ずつぐらいしかないところで、そこからまた歩いて10分、15分くらい歩いてやっと事業所だったんですよ。正直、こんなところに就職したくないなと思いました。

当時SE(システムエンジニア)という言葉が流行り始めていまして、お客様のところに行って、お客様の問題解決をシステム化で解決するということをやる職種として花形だったものですから、私はここ(中央林間)には通いたくないと。ちょうどプリンター事業部か何かでプリンターを研究するというところに配属されそうだったのですね。それで、ちょっとここには来たくないなということで、現場に出たいと、お客様と接する仕事がしたいというふうに言いました。

ここ(中央林間)で働きたくなかったというのが本心ですけれども、現場に出たいと言えば都心の事業所に行けると思いました。現場でお客様に接する仕事をしたいと強く要望を出しましたら、SEでなく営業に配属になりまして、それ以来IBMに13年位いましたが、ずっと営業畑でした。理系出身の営業の社員は比較的少なくて、変わり種になってしまいましたね。

【聞き手】

IBMにいらっしゃって、一番自分の中で経験や、仕事のスタイルに生きているという部分はどんなところですか？

【佐藤】

IBMの物事の考え方というのが非常に今でも役立っているといいますか、そこは非常に参考になっているというところがいくつかあります。昔、日本IBMの会社のポリシーといいますか、スローガンがいくつかありまして、その1つに「社会と共にIBM」というキャッチフレーズみたいなのがあったのです。これなどは非常によくできているフレーズで、コンピューターというのは戦争があったり、不景気だったりすると売れないんですね。社会が豊かになって発展している時に一番売れるんですね。

ですから、過去私が就職してからも湾岸戦争などありましたが、そういうタイミング、それからバブルが弾けて景気が良くない時はコンピューターは売れないんですね。社会の発展があって初めて私たちの発展があるという、そういうポリシーに基づいて社会と共にIBM、これは非常によく分かるんですね。

ですので、自分たちの幸せだけでなくて、お客様、それから社会全体が発展するにはどうしたらいいかをみんなで考えようというのが、社風としてあったと思うんですね。そういうのは、まだまだ小さい会社ですけれども、こういう会社を経営している時にやはり考えなくてはいけないポイントだと思います。IT業界にいるものですから、そういうふうに思っています。

【聞き手】

そういったものの考え方が1つの選択であったり、経営の指標になっていたりするわけですね。

【佐藤】

そうですね。後は、私がIBMに入社した時にエーカーズ(ジョン・エーカーズ)という有名な会長がいたんですね。それからエーカーズが調子が悪くなりまして、『巨像も踊る』という本を書いたガースナー(ルイス・ガースナー)という有名な方が後任のCEOとして来られましたけれども、アメリカの会社ですから、彼を選ぶときに次のCEOを決める選考委員が外部に設置されて、候補者の中から選考するわけですね。

その時の大きな選考の基準が項目として7つあるんですが、バランスという項目が一番上なんですね。バランス感覚がある人間を経営者にしたいという、IBMの強い思いがそこに表れていると思うんですけども、これは本当に私も感銘を受けるといいますか、同感できるポイントでした。

やはり色々な判断をする時に自分の強い想いとか、偏った考え方とか、好き嫌いとかで判断しがちなのですがそうではなくて、ちゃんと色々な意見を聞いたり、状況を判断してバランスを取って判断するのが重要だと思っていまして。このCEOの選定のプロセスに関しても非常にIBMらしい、エクセレントカンパニーというのはこういう会社なのかと、当時は素晴らしい会社に在籍して良かったなと思っています。