貝印株式会社 ~「失敗は進化のもと」世界に名を馳せる刃物メーカー、海外戦略の全貌~

Vol.2 社長就任とその後の改革

貝印株式会社 代表取締役社長 遠藤 宏治 (2015年10月取材)

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―社長就任とその後の改革―

【遠藤】

(MBA修了後は)すぐに私どもの会社に入るということではなくて、文具関係をおやりになっているコクヨに出向しました。私どもの貝印グループはコクヨにハサミやカッターナイフなど、いわゆる文具関係も納めておりますので、そういうご縁もありまして。それからコクヨさん自身も、メーカーと販売ということもやっておられます。私どものハサミやカッターナイフのように、自社の製品ばかりではなく、色々な協力関係の所から製品を仕入れてコクヨのブランドで販売するという、業態的には多少似ているところがあるということもあり、私の父が「すぐ(貝印に)入るのもあれだけれど、1、2年ほど他業種の所で外飯を食ってこい」ということで、コクヨに2年ほど行っておりました。

本来ならばストレートで会社に入るところですが、やっぱりよその空気だとか、違う会社で経験を積むほうがいいと。元々ずっと継ぐということは自分でも分かっていましたし、そのままストレートに入ってしまうと、やはり自分は特別だという意識を持ってしまったのかも知れません。コクヨに入ってみると、多少、貝印の社長の息子だという周りの目は何となくありましたけど、実際は一般社員と一緒ですから、2年間一般の社員がどういう気持ちで仕事に取り組んでいるのか、人はどういうものなのか、上司をどういうふうに見ているのか、それから得意先に行ってどういう対応をしたらいいのかなど、本当に普通の社員の気持ちになって、そういったことが分かった2年間だったと思います。

父が病気がちだったとはいえ、これほど早く亡くなるとは思っていませんでしたし、自分自身もこれだけ早く後を継ぐとは思っていませんでしたので、戸惑いはもちろんありました。33歳 で社長になりましたので、周りの役員は皆、年上なのですよね。父は亡くなってしまいましたけれど、我々が色々とお付き合いする人、色々な所で会う人は父と同じような年代で、皆さん年上なので、そういった意味合いでは色々と指導していただけたり、相談させてもらえる人が周りにいたりしたというのは、逆に言うとありがたかったと思います。それから自分自身としても、皆年上ですから、謙虚になって色々な話を聞かなければいけない、そういった気持ちになれたのも、今から振り返ってみると良かったのかなという気がします。父が残してくれた最大の資産は、人でしたね。そういった意味合いで、番頭さんや私どもの重役人だとか、私が若くして社長になった時の人たちというのは本当に真摯で、私を支えてもらったという感じがします。

26歳 の時に貝印グループに戻ってきたと言いましょうか、キャリアをスタートしたのですが、一番初めに父から私がアサインされたものは、工場の仕入れ調達関係、いわゆる資材です。資材プラス生産管理ということで、それを2年間ほどやりました。父が亡くなったのが、私が33歳の時ですから、26歳で戻って来て7年間で社長になったという、結果としてはそういうことなのですけれども、その間に父が病弱だったものですから、頻繁に入退院を繰り返していまして、その度に色々と貝印グループの中ではエポックメイキングな出来事がありました。新しい工場を作ったとか、CI をやったとか、そういった時によく父が入院していたものですから、その代役を私がやっていまして、その26歳から33歳の間にも、それなりに社長業の助走段階や準備段階のようなものは経てきたような気がします。

やはり33歳で跡を継ぎましたから、病院でたまに父と2人になる時には、性急にやってもなかなか人は動かないし、今までの流れもあるわけだからというような話を聞かされました。それで3年間くらいは、全体の流れを見極めるために必要な期間だと私も思っていました。平成元年に父が亡くなりまして、平成3年までは社内の状況をはじめ、そういったものをよく見極める、私どもの会社の中でどういう人材がいて、また社外ではどういう環境なのかなどを自分でじっくりと見極めた3年間ということで、それなりに良かったのではないかなと思います。

平成3年に、かなりお金は掛かりましたけれど、いわゆるコンサルタントに総合診断のような形で依頼して、我々貝印グループの全体の問題点や課題とどういうふうに取り組んでいったらいいのか、また人材の棚卸というのか、試算というのか、その社員がどういう能力の人かを総合的に見ていくことをやったのです。私自身にとっても3年間の見極めの期間で、ある程度は理解していましたけれど、これは私の口で色々言うよりも、やはり外部コンサルタントの評価として社内に公表して浸透させていった方がいいという思いもあって、依頼しました。その考え方と私の考え方がかなり一致していたものですから、診断結果をまとめて色々な改革に着手していったわけですね。

社長プロフィール

President's profile
氏名 遠藤 宏治
役職 代表取締役社長
生年月日 1955/10/21

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