貝印株式会社 ~「失敗は進化のもと」世界に名を馳せる刃物メーカー、海外戦略の全貌~

Vol.4 『旬』の成功とその裏側

貝印株式会社 代表取締役社長 遠藤 宏治 (2015年10月取材)

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―旬の成功とその裏側―

【遠藤】

欧米では今、『旬』という包丁が一つのブランドになっていまして、これはいわゆるデザインが非常に和風のテイストになっています。今まで欧米では、包丁というと、どちらかというとドイツの包丁が主流だったのですけれども、2000年くらいからの和食ブームや侍ブーム、日本の物づくりだとか、日本のデザインの良さというのが海外でも受け入れられる流れがあったということで、それにうまく乗りました。デザインが良く、ハンドルのデザインが和包丁のような栗型、Dのようになっているとか、あるいはダマスカス鋼 でできているとか。それから単価も、それまで一丁当たりの値段が非常に安いものだったのが、『旬』が出た頃には大体一丁100ドルくらいするようになりました。ですから、お客さんも良いものを使って非常に気に入っているし、流通の部分でも安い物を提供するより利益が上がり、我々にとってもまさにWin-Winであったと。またストーリーにつきましても、いわゆる日本のストーリー、和食のストーリー、そういった要素が欧米で受け入れられましたし、そういったことから『旬』が成功して、今では累計500万丁販売数を超えたという状況になっております。

ヒット商品というのは、意外なものが結構多くて。『旬』自身もどちらかというと、ひょうたんからこまのようなもので、2000年頃にアメリカ市場、ヨーロッパ市場を開拓しなくてはいけないということで、違う商品を見本市に出していたんですよね。ところが、それもさっぱり受け入れられなくて、あちこちの見本市で私もブースを出し、展示して何か商談ができないかという考えだったのですけれど、本当に閑古鳥が鳴いていて、なかなかお客さんに来ていただけなかった。それはやっぱり、今の話のDUPSが足りてなかったというふうに思いますね。それで、『旬』がたまたま時流に乗ったもので、じわじわと火が付いて伸びていったということなのです。ですから、最初から狙っていたというわけではなく、色々なことをやって試行錯誤しながら、その中には実物もあったというわけです。包丁に限らず、さまざまな事業をやっていますが、そういった例が多いですね。最初から狙って考えていたとおりになったというのは本当に稀な例で、色々やっていて、その中から成功事例が出てくるという形が多いですね。

私がよく言っているのは、「失敗は進化の元」。失敗は成功の元というのは、よく言われますけれど、失敗したら必ず成功するしかないので、「失敗は進化の元」と。ですから、失敗してうまくいかなかったものでも、何か得られるものがあるのですね。我々も色々な所と共同で色々なものを開発し、色々なことを今までやってきましたし、今でもやっていますけれども、それらが全て成功しているわけではないのですね。でも、それらの失敗から必ず得るものもあるし、次につながるものは絶対あるのですよね。やっぱりそういったものを持ちながら、また次へ次へとチャレンジしていくことが進化の元になる。そういう考え方でやっているということですね。

これも私が昔からよく言っていることですが、新しいことをやれ、チャレンジをしろと。どこの企業でも、どこの会社でもそうだと思いますけれど、当然それには失敗が付きものですから、失敗をどう担保するのか、失敗をどう次に生かせるかということを社内に周知させていかないと、やり始めて失敗したらどうなるのだろうということで、誰でもそうですが、新しいものにチャレンジする際にちゅうちょしますよね。そういったためらいがあると、なかなか新しいことにチャレンジできないので、失敗しても構わないという意識を持つこと。そういうチャレンジはなかなか難しいように思いますから、失敗しても構わないと。我々の場合は1万アイテムもあるわけで、たとえ1つのプロジェクトを失敗しても、会社の屋台船が揺らぐような失敗にはなりません。私自身が判断を誤ると、会社の失敗、屋台船が揺らぐような失敗になる可能性はありますけども、一般の社員の場合はそういうことはないので、なかなか難しいですけれども、新しいものを奨励する雰囲気をできるだけ作るような心掛けをやっているわけです。

社長プロフィール

President's profile
氏名 遠藤 宏治
役職 代表取締役社長
生年月日 1955/10/21

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