貝印株式会社 ~「失敗は進化のもと」世界に名を馳せる刃物メーカー、海外戦略の全貌~

Vol.3 危機からの脱却/商品開発のDUPS

貝印株式会社 代表取締役社長 遠藤 宏治 (2015年10月取材)

[もっとみる]

―危機からの脱却/商品開発のDUPS―

【遠藤】

ちょうど平成3年以降、もうバブルははじけていましたから、その後、色々と不況の時代、日本全体が不況の時代に入っていました。NHKさんに『プロジェクトX』という番組がありましたが、私どもはその前に「Xプロジェクト 」として、社内の色々な改革や新規事業に、それぞれ「X1」だとか「X2」だとか「X3」というふうに名前を付けて、さまざまなプロジェクトをやっていたのですね。

その中の一つに、海外進出と、海外への工場移転、海外に工場を建設してグローバル化を進めていこうというものもあったわけです。それがちょうど円高だとか色々なものと相まって、俗に言うブーメラン現象ですよね、我々が海外で作ってから、円高を利用して日本へ持って来ると、要は結果として安いものになるわけですから、我々も価格破壊の波に乗って、それが自分の所に返ってくるということで、かなり上がり率が下がったり、商品単価が下がったりと利益を圧迫する。それから色々なもので、新しい新規事業もやっていかないといけないということで、在庫が増える。すると資金繰りが悪化するということですね。1990年の半ばから後半にかけては、そういった意味合いで粗利率が下がる、思うようになかなか利益は上がらない、在庫は増えるという大変厳しい時代がありました。

我々貝印グループ全体としては、約1万アイテムの商品を扱っているわけですね。大きな商品群としてはカミソリがあり、美粧用品、いわゆるビューティーケアですね、おしゃれや色々な美容に関する化粧品はやっていませんが、それに関連する道具から包丁を中心とした家庭用品、それからメスだとかそういった物の医療用品、これが私どもの4大カテゴリーで、それぞれ商品がたくさんあるわけです。それで貝印らしさとは何なのかと、商品としてどういうものが貝印らしい、貝印がやる意味は何なのかということを、それぞれの商品群について深掘りしていったことが、粗利的にも回復したり、色々な事業の面でもお客さんに貝印らしい商品をアピールすることで、着実にご愛用いただけるというふうにつながっていったのではないかなと思います。

私どものコアの技術というのは、刃物を作る力、刃物を企画開発して製品化していくということなのですよね。今のカミソリは刃物そのものですけれど、美粧用品でいうと、私どものコアというのは爪切りやハサミですね。家庭用品や包丁、あるいは医療用品だと色々なメスなどが中心にあるわけですけれど、刃物だけではお客さんになかなかアピールできませんから、今でもそうですけども、刃物を中心として、総合的な提案を突き詰めて考えていったことで業績が回復していったのではないかなと思います。

私どもにとっては商品が核ですから、それ自身、つまりどういう物を作っていくかということが大切です。私もよく言っているのは、「DUPS」。DUPSの最初のDは、デザインなのですね。やっぱりデザインが良い物でないと、なかなかお客様に受け入れてもらえないので、デザインをもっともっとブラッシュアップしましょう、考えましょうということが一番最初の要素です。2番目のUというのはユニークさで、貝印らしさということを申し上げましたけども、やっぱり我々が出す以上、貝印らしいものは何なのか、そのためにユニークなものを出していかないといけないということで、これはイノベーションにもつながると思いますが、ユニークなものを出していくという2番目の要素がU。3番目のPというのは、パテントですね。我々自身のユニークさを保護するために、特許とかパテントはどうしても必要なものですから、これはきちんと持たないといけない。最後のSは、昔はセーフ、セーフティ。安全で安心なものを作っていかないといけないというのは、今では当たり前のことですから、今はストーリーというふうに置き換えていまして、物語性だとか、さまざまなものが我々の出す商品にはやっぱり含まれている。我々の商品には、ただ単品のその機能や商品だけでなく、その周辺の物語、つまりストーリーみたいなものが入っているという、そういう開発視点や企画視点で物づくりをし、開発していくというのが貝印らしい商品につながっていったのではないかな。あくまで刃物を、刃物の技術を核にして、そういったDUPSという視点で物づくりをしていくという形でやってきました。

社長プロフィール

President's profile
氏名 遠藤 宏治
役職 代表取締役社長
生年月日 1955/10/21

応援メッセージ
この社長に直接提案