Vol.4 “常識”からの脱却と海外進出の成功
―“常識”からの脱却と海外進出の成功―
【聞き手】
海外進出を始められたのはいつ頃でしょうか?
【椛澤】
ちょうど2000年に介護事業に参入し、そこで人材が今後不足するということを実感し、では今出来ることは何かというと、「足らない手はロボットで」というのは飛躍がありますから、やはり人間であり、それは生理的・文化的、色々な意味で共通性のあるアジア(の人)が合うのではないだろうかということで、アジアに人を求めることを前提に目を向けました。
【聞き手】
それがいつ頃でしょうか
【椛澤】
会社を設立したのが2003年ですね。
【聞き手】
最初に海外進出のターゲットにされたのはどちらでしたか?
【椛澤】
最初に出向いたのがタイです。そこで人の縁ができたので、(タイに)まず杭を打ちました。
【聞き手】
タイにはいわゆる人材確保のために行かれたのでしょうか?
【椛澤】
そうですね。1つはFTAという、Free Trade Agreement という自由貿易協定がありまして、それを日泰が結ぶだろうという機運が非常に高まったということもあります。そうなれば、教育した人材を連れてこれます。今、ベトナムやインドネシア、フィリピンでも行っています。タイはまだできていませんが、当時最も(そうした機運が)高まったのがタイだったのです。そこで人材を養成して日本に連れてこようというのが始まりでした。それともう1つは、日本の高齢者に、年金の範囲内で1年中寒い時期がないタイで過ごしてもらおうと、高齢者が自立型であっても将来要介護になれば、それを含めて迎え入れようということもありました。ただ、どちらとしても基軸は日本です。日本に来ていただく、日本の高齢者を連れていこうということで、現地の方々は対象外だったのです。
【聞き手】
それが変わったきっかけというのは何だったのでしょうか?
【椛澤】
これが2010年ごろですが、そのターニングポイントは大きいですね。結局、介護といういのは1つ、経済成長があることが前提です。経済が成長すると女性が高学歴化します。そうすると、まず社会進出をします。社会進出することによって核家族が生まれます。核家族が生まれると、経済的には豊かでも人手が足りなくなります。そして高齢者は必ず生まれます。ではどうするかといえば、自分では面倒がみられないので、よそに任せるという構図ができあがってくるのが、経済成長から生まれる高齢化の対策です。2010年ごろには、それが非常に顕著に現れていた中国を筆頭に、アジアが成長していきました。そこに介護の芽を感じるわけです。そこで切り替えました。これはもう現地の人のための介護提供にするべきだというのが2010年です。そこでタイで訪問介護を始めました。そして、我々がタイに進出しているという当社のスタンスをどこかで見ていたのでしょう、中国からもそうした話が持ち上がりました。そこで中国の場合は、最初から現地の人のための(介護事業を始めました)。日本人が行くということは考えていませんでした。現地の人のためにというわけです。
【聞き手】
世界的に高齢化の問題があるわけですが、そこに対してビジネスを展開していかれるということですね。
【椛澤】
これはニッチでも、後発でもありません。今まで我々がささやかに歩んで来たのは、ニッチという隙間を狙ってやってきました。それから、介護でも自分たちのサービスは活きると思いますが、後発であり、大手資本の制約があります。ところが海外にはそれがありません。もちろん、何もない荒野に行くわけですから、リスクも大きいですし、潰れて雲散霧消してしまうリスクももちろんありますが、それが絡んだ場合、過去の実績は関係ありません。日本の因習と言いますか、一言でいうと日本は特殊ですから、日本の常識は世界の非常識だと思わないとなりません。ですから、例えば「誠実」や「真面目」、「頑張る」という言葉は日本のいい言葉です。タイは「マイペンライ」、「大丈夫、大丈夫」と言う国民性があります。それから中国は「関係あれば関係なし」や「上に政策があれば下に対策あり」のように、生きていくためにずる賢いことでも何でもやるということは、日本から見れば不誠実だということだとしても、彼らの中では常識です。モラル感が異なるのです。それを日本から「いけないことだ」と言ったとしても負けてしまうだけです。変なことをやれということではなく、そういうことをわからないままやるとストレスが溜まります。例えば、時間に遅れて1時間も待たされると、「ふざけているな。なめているんじゃないか」となりますが、向こうは「車が混んでいて、ごめんなさい」で、特に罪悪感がないのです。自分がそういうことをしろというわけではなく、相手を許容しないとやっていけないという世界を徐々に学んでいくわけです。それは1つ大きな、海外で(ビジネスを)していく上での部分だと思います。もちろん、サービスが良いとか、ビジネスの方法が良いといった、様々な条件がそろった上で、ベースにあるのがその国々の(常識)をどう許容しながらやるかということです。
経営者プロフィール
氏名 | 椛澤 一 |
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役職 | 代表取締役 社長執行役員 |
会社概要
社名 | 株式会社リエイ |
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本社所在地 | 千葉県浦安市入船1-5-2 NBF新浦安タワー14・15階 |
設立 | 1980 |
業種分類 | サービス業 |
代表者名 |
椛澤 一
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従業員数 | 4,275名 |
WEBサイト | http://www.riei.co.jp/ |
事業概要 | 企業・法人福利厚生サービス事業介護総合サービス事業海外事業(ヘルスケア・給食) |