
インタビュー内容
【ナレーター】
顔、名前から個性や才能まで、会社が把握すべき人材情報を可視化するサービスを開発・提供する「株式会社カオナビ」。
タレントマネジメントシステム「カオナビ」は、最適な人材配置や抜擢につながる戦略的なタレントマネジメントの実現を支援しており、現在、プライム上場企業を始め4000社以上に導入されている。
近年では、人事業務のDXを推進する労務管理システムや、正しい経営判断を支援する予実管理システムをリリースするなど、多様な働き方ができる社会の実現に向け、挑戦を続けている。
「世の中にないプロダクトをつくる」という思いのもと、立ち上がったカオナビの軌跡と、創業者が思い描く未来像に迫る。
【ナレーター】
自社の強みについて、佐藤は3つの要素を挙げる。
【佐藤】
まずこのタレントマネジメントという領域の大前提として、「正解がない」っていうことがポイントなんです。何をもってタレントマネジメントができているかっていうのは、その会社の置かれた環境とか、従業員とか組織の状態において違うと。だから、使いこなすことが非常に難しいシステムであるっていうのが、通常のシステムと違うところですね。
エンジニアの力を借りずに、人事の方が簡単に自社の人事制度やエンゲージメントの方法に合わせて、データベースをカスタマイズできることが大事なので、僕らはそのデータベースの柔軟性をひとつ売りにしてきました。
会社の従業員全員が使うものなので、ユーザビリティが高いとか、UXが高いということは当然必要で、そこは磨いてきました。
そして最後に、正解がなく、使い方が難しいシステムだからこそ、カスタマーサクセス、つまり「どう使うのか」っていうことを支援する、「カオナビキャンパス」という大学のようなものを開いて、12年やってきました。そこで、ユーザーの皆様に使い勝手を良くするノウハウをお伝えしています。この3つがおそらくカオナビが支持されてる理由だろうと思いますね。
【ナレーター】
佐藤のファーストキャリアはコンサルティング会社だった。営業、人材開発責任者としてキャリアを重ねた佐藤は、創業者である社長の側で、企業をつくり成長させていく過程を見て、かねてから関心のあった起業を考えるようになる。
そんな中で出会ったのが、後の共同創業者となる柳橋だった。
【佐藤】
会社をつくるには仲間が必要なので、優秀な人間にはどんどん会いたかった。そこで、人事をやっていると、いろんなヘッドハンターさんと仲良くなるので、面白そうな人がいたら会わせてくれと頼んで、自腹で会う機会をつくるのを毎週やっていたんです。
その時に紹介されたのが、先に独立してた柳橋という共同創業者でタレントマネジメントというか、人の配置とか評価とか、人材開発にまつわるところをシステム化しようという思いは一緒で。出会ったその日に一緒にやろうと意気投合したことを今でも覚えています。それが起業のきっかけですね。
【ナレーター】
2008年の創業以来、柳橋が代表取締役社長を務めていたが、2022年には佐藤が就任した。社長交代の裏側について、こう振り返る。
【佐藤】
正直に言うと、社長になったって感覚は今でもあんまりなくて。そもそも二人で原宿のアパートで始めた会社なんで。最初はなぜ柳橋が社長だったかっていうと、世の中にないプロダクトをつくろうって思った時に、頑固でエンジニアリングがわかる人間がやった方がいいだろうというのが二人の結論だったんです。
僕が当時社長をやっていたら、お客さんからいっぱいお金もらえるんなら、いろんな仕事を取ってきちゃう。そうするとプロダクトはできなくなるんですよね。僕がそういう仕事をとってくると、柳橋は「そんなの1億でもいらないから断ってこい」って。でも今思うと彼の方が正しいですよね。柳橋が采配を振るってくれたからこそ、カオナビという一つのプロダクトができたっていうことなんです。
一方で、ここ昨今は、一つのプロダクトを生み出すチームというよりも、もういろんなファンクションがあって、いろんな権限委譲がされていて、ステークホルダーもいろんなところにいて、こういったものを調整するとか、モチベートするとか、エンゲージメントするとか、つなぐとか、アカウンタビリティを発揮するみたいなことが経営者の能力として必要になってきている。
そうなると、バトンタッチしようかってことで交代しました。
僕も柳橋も社長というのはただの役割に過ぎないと思っていて。だからこそ、その時々の役割に最適な人間がやるべきだと思うのです。そういう価値観の中で当社は経営していますっていうことは、当社に興味や関心を持ってくださる方には伝えたいところです。
【ナレーター】
現在、人材管理市場において、国内トップシェアを獲得しているカオナビ。それが実現できた背景として、「やりたいと思う意志の強さ」があると、佐藤は言い切る。
【佐藤】
こういうことがやりたいって思ってると、いろんなものが目に入るし、発信してるといろんな人が声をかけてくれますよね。だから、こういうことをやりたいと思って発信するっていう行為は、その意思の強さに比例するから、その意思の強さこそ大事でしょうと。本当にやりたいと思っていれば、そんなに簡単に諦めないだろうなと思います。
だから、こういう未来をつくりたいとか、こういうことをやってみたいとかっていう意志の強さが、初期段階においては最も原動力になるんだろうなっていうのは思いますよね。
【ナレーター】
働き方の多様化が進み、企業と個人の関係が変わり始めている。今後の雇用のあり方について、佐藤は「相互選択関係」をキーワードに挙げ、次のように語る。
【佐藤】
今までの企業と働く人の関係は相互拘束関係だったわけですね。企業は個人が離職しないように縛る。定年まで働ければ、退職金を多大に払うっていう終身雇用制で、相互に拘束する関係だった。
これが「相互拘束」から「相互選択」関係の時代に、ここ10年、20年は移ってきていて、企業は働く個人にとって、そこで働くことで自分が成長できるのか。その報酬が自分の貢献に見合った額をもらえるのか。何らかの働く動機を形成しないと選ばれない時代になっています。
一方で、個人にとっても、企業が多様な雇用形態を選べるわけですから、ずっと正社員でいられる保障もないし、業務委託で優秀な人に発注することもあるだろうから、企業に選んでもらえる人材じゃないといけない。
だから、企業も個人に選ばれることで競争力の源泉が保たれる時代になる一方で、個人も学び続けて、選ばれ続けないといけない。大変な時代になってきていると思います。ただ、自分で自分を経営しているという感覚がある個人にとっては、働く場所や時間も自由に選べるし、複数の会社で働いてもいいし、自由なキャリアが描ける時代が来ているってことだと思いますね。
【ナレーター】
今後は、自社のタレントマネジメントシステムを、日本全国で、そしてアジア全域でのプラットフォームにしていきたいと語る佐藤。見据える展望とは。
【佐藤】
企業と個人を結ぶコミュニケーションのプラットフォームがカオナビなんですね。個人が何を考えているか、どういうキャリアを望んでいるか、どういうスキルを持ってるかは企業がもっと把握しないといけない。
一方で、個人も企業にどういうことを求められているのか、その中で自分はどうキャリア形成をしていけるのかってことを把握しないといけない。今機能をたくさん拡充してますけど、将来的には日本全体、ないしはアジア全体でタレントマネジメントされるようなシステムにしていくということが最終的なパーパスですよね。
日本全体やアジア全体でのタレントマネジメントプラットフォームになっていくためには、働く人のありとあらゆるデータを集めないといけない。そうなった時に、タレントマネジメントだけでは不十分で、HRテックのすべての領域のデータを集めたいと思っているので、ロウムメイトっていう新規事業も始めました。
個人のデータをいろんな方面から集め、解像度を高めて、個人が最適に働く場所はどこか、どういう人とどういうステージで働くべきか。そのための事業は自社はもちろん、M&Aをしたり、提携したりしながら、拡張していきたいと思っています。
【ナレーター】
求める人材像について、基本的には「ない」と言い切る佐藤。その真意に迫った。
【佐藤】
WILLが大事だっていう価値観を持っている会社なので、「キミが何をやりたいですか?」「キミはこの会社をどう利用したいですか?」っていう問いの方が大きいです。
相互拘束関係の時代から相互選択関係の時代に移ったということは、うちの社員もそうならないといけないので、自立的にこの会社で何がしたいとか、キャリアを築きたいって思っている人と一緒に働きたいっていうのが一つ答えになるかなと思いますね。
―大事にしている言葉―
【佐藤】
「自ら機会をつくり出し、機会によって自らを変えよ」って言葉です。これは就職活動の時に習って、ずっと覚えてますね。そして僕自身もそれを心がけてきて生きてきました。
自分自身が何か新しい経験をすることによって、もっと成長したいとか、自分の人生の幸せは自分でつかんでいきなさいって意味のある言葉なので、これが僕自身の人生でもあります。そのプロセスが起業だっただけで、当社の経営の真髄もそこに紐づいています。
自ら機会をつくってください。自分が何をやりたいか。そしてそれは会社のためでもあるけど、あなたの成長のためにもなる、そんな世の中にできればと思います。

経営者プロフィール

氏名 | 佐藤 寛之 |
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役職 | 代表取締役社長 Co-CEO |
出身地 | 東京都 |
会社概要
社名 | 株式会社カオナビ |
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本社所在地 | 東京都渋谷区渋谷2-24-12 渋谷スクランブルスクエア 38F |
設立 | 2008 |
業種分類 | 情報通信業 |
代表者名 |
佐藤 寛之
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従業員数 | 347名 |
WEBサイト | https://corp.kaonavi.jp/ |
事業概要 | タレントマネジメントシステム「カオナビ」、労務管理システム「ロウムメイト」、 予実管理システム「ヨジツティクス」の開発・販売・サポート |