株式会社きちりホールディングス 居酒屋『きちり』が有名。厳しい業界で成長を続ける外食チェーン 株式会社きちりホールディングス 代表取締役社長CEO 兼 COO 平川 昌紀　 (2013年1月取材)

プライベート

【平川】

色々とたくさんあったのですけどね。みんなに誕生日のプレゼントをしてもらったことかな。創業の頃、僕は成長に対しての意識がものすごく高かったんですよ。ものすごく会社を早く大きくしたいという思いがあったので、毎回毎回結構ギリギリのチャレンジというか、お店の数であったりとかお店の規模であったりとかしてたんですね。

創業期の話なので小さい会社で弱小企業でしたから。１つ失敗すると本当にいつ潰れてもおかしくないくらいの速度で店舗展開していたのですが、社員数で２０人くらいいたのですが、結婚して子供ができはじめたりとかで５年選手がでてきて一緒に頑張ってくれて、ウチの会社に賭けてるのが見えたりとか、ますますプレッシャーがかかって、部下たちのやる失敗が許せなくなってくるんですよ。叱りつけるんですよね。怒りを表してしまって。僕のことをみんなが恐がりはじめている時期があって。反対にそういった状況なので自分たちの仲間である社員のみんなと一対一で話すことが自分も怖くなってくるんですよね。

【平川】

自分的にも社長であることのプレッシャーであったりとか、精神的にあまり良くなくて体の調子が良くなかったんですけど、ある年の僕の誕生日、７月の１６日なのですが、その時僕は夜中まで仕事していて店が終わり、社長室にいて、そこに入ってくる人間というのは一部の人間で、しかも遠慮しながら入ってくるんですが、誕生日の前日の夜ですね。誕生日になるかならないかの日に、創業期から一緒にやってた一人の社員が入ってきて、その時ウチの本社はお店のビルの４階にあって、その下がお店になっていたんですけど、「社長１階のお店の方にちょっと下りてきてもらえませんか？」というお願いをしにきたんですよ。

【平川】

僕も忙しかったし誕生日のことなんてあんまり自分の頭の中になくて、何でそんな事を言うのかなと思って、「うるさい、今忙しいから下りられないよ、出て行ってくれ」と素っ気なく追い返すんですね。いつもは絶対入ってこないのに彼女が二度目に入ってくる。もう一回、「下りてきて下さい」と。何かおかしいなと思って、何かトラブル起こってるのかなと思って店に下りていくんですよ。ウチのお店というのは１階の入り口を入ると即お店が見えるのではなくて、ちょっとこうコーナーを曲がってパッと広がるような作りになっていたんですが、そこを下りていってお店に入ったら、その時にいた全社員が全員で「社長ハッピーバースデーおめでとうございます！」と言っていて、サプライズパーティーをみんなで企画してやってくれたんです。自分たちで手料理を作ってくれてケーキも手作りで作ってくれて。何よりうれしかったのが、１日その日だけだったら出来ないような歌とか踊りとか出し物をみんなでやってくれて。

僕は僕なりに厳しい、ものすごく怖い社長だと自分の中で思っていたし、嫌われていると思っていたから結構うれしくて感情もたかぶって、普段あまり飲まないくらいのお酒も飲んで酔っ払って潰れてしまったのですが、もう家に送って帰ってくれということで家に着くはずの車が到着したのが関西国際空港だったんですよ。起きて「どういうことなの？」と言ったら、１４年来付き合っていた妻ですね、その時は彼女だったのですが、空港に待っていて。少ない給料の中で、皆でお金を出し合い、「社長、グアム旅行をみんなで用意しました。会社のことも仕事も忘れてプロポーズして結婚の約束してきて下さい」とプレゼントしてくれたんですよ。

【平川】

厳しくやって怒られてものすごく責められたりもしていたのですが、僕がなぜそうしているかということを理解してくれていたんだというのと、嫌われていると思いながら自分の中でプレッシャーを感じていたのですが、すごく僕のことを信頼してくれていてそういう中でやれていることがすごくうれしくて、それでそのことをきっかけに、僕は理念というものをしっかり会社の中に持とうと思って「大好きがいっぱい」にプラス短い文章があるのですが、それを書き上げたんです。あの時に会社の雰囲気というかあり方というのが決まってきた。

それは創業の頃はね、本当に誰よりも社員たちと一緒にいた。厨房の中で寝たことある。僕らにとっては誇りだし、その時のメンバーと酒を飲んだらそんな話ばかりなのだけど、無駄に長い時間の中で話していることは、すごく自分の中で今のやっていることの一つになっていたりとか、不合理だからこそ生まれるアイデアがあったりするんですよね。そこは懐かしいかな。